2017/12/14

「通し狂言 隅田春妓女容性」(2017/12/13)

国立劇場12月歌舞伎公演

「今様三番三(いまようさんばそう)」
大薩摩連中
長唄囃子連中
源氏の白旗を奪った平家の姫君(中村雀右衛門)が、源氏の武士たちを「布晒(ぬのさらし)」の舞で追い払うという舞踊。
「布晒」というには新体操のリボン運動と同様で、2枚の長い布を両手で地面に先が落ちぬよう巧みに振り回す。重い衣装にカツラ姿で、しかも舞踊として美しく踊る所が見ものだ。

並木五瓶=作
国立劇場文芸研究会=補綴
「通し狂言 隅田春妓女容性(すだのはるげいしゃかたぎ)」 ―御存梅の由兵衛(ごぞんじうめのよしべえ)― 三幕九場
序幕  柳島妙見堂の場
     同  橋本座敷の場
     同     入口塀外の場
二幕目 蔵前米屋店先の場
      同     塀外の場
      同     奥座敷の場
      本所大川端の場
大詰   梅堀由兵衛内の場
      同  仕返しの場
<  主な配役  >
中村吉右衛門=梅の由兵衛
尾上菊之助=女房・小梅/弟・長吉
中村雀右衛門=芸者・額の小三
中村錦之助=金谷金五郎
中村歌六=源兵衛堀の源兵衛
中村又五郎=土手のとび六
中村歌昇=延紙長五郎
中村種 助=芸者・小糸
中村米吉=米屋娘・お君
中村吉之丞=医者三里久庵
大谷桂三=曽根伴五郎
ほか
1796年(寛政8)1月江戸桐座で、3世沢村宗十郎の由兵衛、3世瀬川菊之丞の小梅と長吉などにより初演。
元禄時代の大坂で、梅渋の吉兵衛という悪漢が丁稚長吉を殺して金を盗んだ事件を元に、主役を侠客として脚色した「梅の由兵衛物」もの。
メインストーリーは若旦那の金谷金五郎のため金策に苦しむ由兵衛が、女房小梅の弟長吉が姉に頼まれてこしらえたとも知らず、大川端で長吉を殺して金を奪う、という筋(すじ)を骨子として、小梅に横恋慕する源兵衛堀の源兵衛との達引を描く。
これにサイドストーリーとして、お家の家宝である「菅家手向山の色紙」の盗難事件をめぐって忠臣と逆臣との争いが、金五郎が恋い焦がれる芸者小三の身請け話と、それを邪魔する曽根伴五郎との諍いに絡んでゆく。

「日に千両 散る山吹は 江戸の花」
「日に三箱 鼻のうえした 臍のした」
江戸の町には、日に千両の金が動いた場所が3か所ある。吉原、魚河岸、そして芝居(歌舞伎)だ。
吉原が男の遊び場だったのに対し、芝居は「女こども」という言葉通り女性が多く、落語でもお馴染みのように定吉のような小僧が主人の目を盗んでこっそりと一幕ものを観るようなこともあったようだ。
歌舞伎というと何か難しいと感えられている向きもあるようだが、決してそんな事はない。そんな難しいものを当時の江戸の人が好んで観るわけがないのだ。
入場料が高いと思われているようだが、この日の料金は5500円。一階席の端のブロックではあったが前から5列目の通路側で、舞台はよく見えた。
近ごろの落語会の料金と相対比較しても、決して高いとは思えない。

この狂言では凄惨な殺しの場面や、誤って女房の弟を手に掛か手しまった主人公と女房の愁嘆場、女たちの夫や恋する男への一途な思いといった見せ場も、芝居の各所に出て来る笑いの場面があるから生きてくる。
何より由兵衛を演じた吉右衛門の颯爽した侠気が見ものだ。とても気分良さそうに演じているのが客席にも伝わってくる。
菊之助は、大川端の場面で姉の名を叫びながら殺害されてゆく長吉の無念さ演じ、姉の小梅との二役では早変わりで客席を沸かせる。
雀右衛門が元は武家の妻という芸者役で風格を見せ、若手の米吉の娘姿が可憐。

公演は26日まで。

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2017/12/12

「断罪」(2017/12/11)

劇団青年座 第230回公演「断罪」
日時:2017年12月11日(月)14時
会場:青年座劇場
 
作=中津留章仁
演出=伊藤大
<  キャスト  >
蓮見亮介 =大家仁志
岸本亜弓 =安藤瞳
山浦順子 =津田真澄
大久保充 =逢笠恵祐
西島至 =前田聖太
千田茜 =田上唯
蓮見彩 =當銀祥恵
玉城恵令奈 =市橋恵
荒木悟 =石母田史朗
佐久間猛 =山本龍二

ストーリー。
舞台は、ある芸能事務所のオフィス。いわゆる大手ではなく中小の芸能事務所だ。元は俳優部が主体だったが、今ではモデル部が稼ぎ頭になり、その部長である荒木が社の常務になり社内を取り仕切っている。
この事務所に所属する大物俳優が生放送で政府を批判する発言を行い、TVのレギュラーやCMを降ろされ、事務所を去った。そのため俳優部は大減収となり、荒木は部長の佐久間やマネージャーの蓮見の責任を厳しく追及する。
蓮見は荒木が激しく反発するが、止むを得ず部下には所属タレントへの一層厳しい締め付けを指示する。
部下の岸本は事務所の方針に対し「人権侵害」にあたると蓮見に訴えるが、取り合ってはもらえなかった。
タレントを商品としてではなく一人の人間として見て欲しいと願う岸本は、自分の正義を貫くため社内の実態を告発する文書を外部に発表する。
しかしこの文書は社内の告発にとどまらず、芸能事務所全体に共通する問題でもあったので、大手事務所やクライアントからの怒りをかってしまう。
このままでは事務所の存続すら危うくなると荒木は憤り、岸本に退職を迫るが、これに岸本や上司の蓮見が反発し、部員全体を巻き込んだ論争となる。
タレントは人間か商品か、タレントはメディアで政治的発言をしてはいけないのか、何でも大手事務所の言いなりにならなくてはいけないのか、
論争の中で浮かび上がる部員たちの本音と建前から、彼らの生活実体が浮かび上がってくる。
一時は売上至上主義でタレントは商品と割り切る荒木の方針が勝利するかに見えたが・・・・・・。

今のTV業界は大手芸能プロ数社が握っていると言っても過言ではない。NHK紅白、レコード大賞、バラエティ、ワイドショー、ドラマ、CM、いずれをとっても、大手プロダクションの息のかかったタレントが主要ポストを占めている。
そして逆らえば干される。
劇中で、ワイドショーのコメンテーターに必ず政府側のタレントを入れるというセリフがあったが、事実だろう。それが連中のいう政治的中立だそうだ。
仕事を貰うために女性タレントたちが有力者に身体を提供する「枕営業」についても語られていた。
こんな腐った状況を放置しておけば、やがてTV自体が見放されてゆき、そうなれば芸能プロも全部無くなるという予言は、あり得ることだ。
「沈黙は迎合している事と同じだ」
「お前の戦争反対は感情だが、俺は理性で反対している」
これも蓮見のセリフだ。

今日的テーマに鋭く切り込んだ2時間の舞台は、終始緊張感に包まれていて、見ごたえがあった。
芸能プロの内情から出発し、やがて日本全体の普遍的な問題に及んでいくという脚本はよく練られている。
脇の出演者にセリフのミスがあったのは残念だったが、大家仁志、安藤瞳、津田真澄の好演が光る。

公演は17日まで。

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2017/12/10

「大手町落語会~師走特別公演~」(2017/12/9)

第46回「大手町落語会~師走特別公演~」
日時:2017年12月9日(土)13時
会場:日経ホール
<  番組  >
前座・橘家門朗『雑排』
神田松之亟『谷風の人情相撲』
春風亭一之輔『茶の湯』
柳家さん喬『鼠穴』
~仲入り~
滝川鯉昇『千早ふる』
柳家権太楼『一人酒盛り』

年末恒例の大手町落語会。仲入りがさん喬、トリが権太楼という豪華版。
番組案内のチラシで主催者が今の大相撲騒動について書いていたせいか、相撲ネタが2本出ていた。

松之亟『谷風の人情相撲』
落語ではお馴染みの『佐野山』
前日の会でも感じたが、マクラが長すぎる欠点がある。落語じゃないんだから、講談はもっとあっさりと本題に入った方が良い。
短縮版だったが、程よくまとまっていた。
「八百長」とは言わず「人情相撲」。これから力士も「八百長だ!」と指弾されたら、「いいえ、人情相撲です」と答えればいい。

一之輔『茶の湯』
この人の『茶の湯』は二ツ目時代からを入れてもう10回近く聴いたことになる。
ご存知ない方に言っておきますが、一之輔も最初はちゃんと演ってましたよ。当初から隠居の孫店の3軒長屋での引っ越し騒動については省略したり簡略化したりしていたが、それ以外は普通の『茶の湯』だった。
それが次第に変形して、通り掛かりの人も拉致監禁して強制的に茶を飲ませる、そのリーダーが定吉という今の様な形になった。
ここまで戯画化してしまうと、もはや本来のネタの面白さは吹っ飛んでしまっている。
気になるのは、一之輔もあまり楽しそうに演じていないことだ。

さん喬『鼠穴』
仲入りにしては長講のネタを掛けた。
さん喬の欠点は、小説なら「書き過ぎ」である。筋の細部を自分なりの解釈で描き過ぎるのだ。
例えば、訪ねてきた竹次郎に兄が元手を渡した後で、帰り際にいったん竹次郎を呼び止める場面を置いている。
あるいは、商売に成功した竹次郎が兄に再会に向かう所で、土産代りに1両持って出ようとするのを番頭が「店の暖簾がございます」と言って3両持たせるシーンだ。
こういう所が余計だと思う。
落語は想像の芸である。噺家の喋りを聴きながらあ、客は頭の中で色々な事を想像してゆく。
そこをあまり細かく描き過ぎると、客としては想像したり解釈したりする余地が狭められてしまう。
冗長に感じてしまうのも、その辺りに原因があると思う。

鯉昇『千早ふる』
高座に上がると、会場は一気に鯉昇ワールドとなる。ちょっと落語協会を皮肉るご愛嬌も。
「ナイル川、ガンジス川、チグリスユーフラテス川、竜田川。これみんな外国人力士の名前だ」と言って、隠居は竜田川をモンゴル出身の相撲取りに仕立てる。
千早も神代も、南千住のクラブのホステスという。
荒唐無稽の様でいて、この噺の本来の面白さはそのまま生きている。
そこが一之輔の『茶の湯』との違いだ。

権太楼『一人酒盛り』
だからアタシは芸協の後に出るのが嫌なんですと、鯉昇にイヤ味。
噺家の酒癖をマクラに振って本題へ。但し、仲入りのさん喬が長すぎて、用意していたネタではなかった模様。
相変わらずの権太楼の世界で、決して悪い出来ではなかったが、呼ばれて来たのに酒にありつけず熊にいいように使われる留さんが、途中でブツブツ不満を言うのはどうだろうか。
熊さんが一方的にしゃべる中で、相手の留さんの苛立ちや怒りが自然に観客に伝わるというのが本来の形ではあるまいか。
そうする事によって、最後に留さんが怒りを爆発させ捨てゼリフを吐いて立ち去る場面が、より効果的になるのだと思う。

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2017/12/09

神田松之丞with遊雀(2017/12/8)

「松之丞、遊雀師の胸を借りる」
日時:2017年12月8日(金)19時
会場:深川江戸資料館 小劇場
<  番組  >
前座と二人の対談に次いで
神田松之丞『宮本武蔵』
三遊亭遊雀『文七元結』
~仲入り~
神田松之丞『小猿七之助』

講談に人気が出てきたようだ。火をつけたのは神田松之丞と言って良いだろう。
大衆芸能の盛衰は女性客が握っている。その女性客のハートを射止めたのが松之丞だ。
男前だし声が良くって愛嬌がある。こっちから見れば気障が和服を着ているように映るが、あの風情が女性たちには堪らないんだろう。
戦前から戦中にかけて忠君愛国をテーマにした講談が持てはやされたが、その反動が戦後にきた。GHQの方針で仇討ものが禁止されたこともあり、戦後は人気を失った。
それでも戦後直ぐには戦前の名人上手が健在だったのと、貞山の『四谷怪談』に人気が集まっていたので、しばらくはその地位を保っていたが、そうした講釈師が亡くなっていくと、長い低迷期に入ってしまった。
新たなファンを開拓していければ、若手の女流に上手い人が出て来ているので、講談の人気が定着していく可能性があるだろう。

この日の松之亟の講談と、ゲストの遊雀の落語のネタの共通点は「身投げ」。
落語の方は身投げを助け、講談の方は身投げを殺す。
対照的な二席である。

松之丞『宮本武蔵』
最初から最後まで大声で読み続け、張り扇を叩きまくるというスタイルだが、これが受けたんだから世の中面白い。

遊雀『文七元結』
マクラ抜きの長講は50分を超える熱演。
・本所達磨横町、左官の長兵衛宅
・吉原・佐野槌の女将の座敷
・吾妻橋、橋上
・日本橋横山町三丁目の鼈甲問屋、近江屋卯兵衛宅
・再び本所達磨横町、左官の長兵衛宅
の五場を、それぞれ間然とすることなく演じきった技量は大したものだ。
見せ場の吾妻橋、橋上でもヤリトリはでは、長兵衛はとにかく文七の命を助けたい一心で50両の金を投げつけて逃げてゆく演じ方で、長兵衛の真っ直ぐな心、江戸っ子の心意気を感じさせた。
感情が盛り上がってきた所でフッと抜いて笑いを誘う間が絶妙。
芸協に遊雀あり、である。

松之丞『小猿七之助』
5代目神田伯龍が得意としていた演目で、これにほれ込んだ談志が落語にし、弟子にお談春に受け継がれている。
懇談の世界では6代目以後に継承者が無かったとのこで、松之亟によると5代目の速記や録音を元に再現したとのこと。
ストーリーは。
すばしこい身のこいなしから小猿の異名をとる船頭の七之助。一人船頭に一人芸者はご法度の屋根船に、芸者・お滝の頼みで大川を遡っていた。
永代橋に差し掛かるとドカンボコンの身投げ。
船に助け上げればさる坂問屋の手代。集金の30両をいかさま博打で取られてしまい、主人への申し訳のために身を投げたと。
そこで七之助が、そのいかさまの胴元は誰かかと訊けば、深川相川町の網打ちの「七蔵」だと。
その七蔵こそ、七之助の父親だ。このまま放置しておけば、父親がお縄になる。
そう考えた七之助は。この手代を再び川の中に落としてしまう。
だが、狭い船中のこと、きっとお滝に見られたに違いないと思った七之助はいきなり船をぐるりと回し、中州に船をつけてお滝を引きずり出し匕首で殺害しようとするが・・・。
ネタ下ろしの地域寄席では受けて、国立演芸場では蹴られたとのことだったが、この日の観客の反応は良かった。
この人の読み、世話物向きかも知れない。

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2017/12/07

小満ん夜会with小朝(2017/12/6)

「小満ん夜会」
日時:2017年12月6日(水)18:45
会場:月島社会教育会館
<  番組  >
前座・春風亭一猿『一目上り』
柳家小満ん『大神宮の女郎買い』
春風亭小朝『好色成道』
~仲入り~
柳家小満ん『三井の大黒』

会場の月島社会教育会館は初。地下鉄の月島駅の10番出口の直ぐ横にある。今回のゲストは小朝だが、小朝目当ての客は少なかったようだ。

小満ん『大神宮の女郎買い』
かつて浅草雷門脇に、磯辺大神宮があった。
近くにあった茶店では、連日のように吉原通いの連中が女郎買いの噂話。
大神宮がこれを聞き、女郎買いというのはよほど面白いものに違いないと、行ってみたくてたまらなくなった。
一人で行くのも何だからと、通りかかった門跡さま(阿弥陀如来)を誘って吉原へ向かう。
適当な見世に上がり、芸者幇間を揚げてどんちゃん騒ぎ。宜しい所でお引け。
明くる朝、若い衆が勘定書きを持って、いかにも旦那然としている門跡さまの前に差し出す。
「恐れ入りますが、昨夜のお勤め(=勘定)を願いたいので」
「お勤め」というので門跡さま、合掌してから「では、やりますよ。ナムアミダブ・・・」
「これはどうも、ではお払いを願います」
「お祓(はら)いなら、大神宮さまへ行きなさい」でサゲ。
神仏習合だった江戸期の物語で、当時の浅草や吉原の風景が描かれていた。
初めて聴いたが、初代圓遊の作で、これまた初代小せんが得意としていたようだ。
現在は小満んぐらいしか演じ手がいないのだろうか。
小満んの粋な語りがよく似合っていた。

小朝『好色成道』
いつもの軽口のマクラかrた入る。通常の寄席や独演会とは客席の反応が違う。
相変わらず他愛ない内容だったが、
・神社の参拝の作法で二礼二拍とか言われているが、江戸期まではてんでんばらばらだったのを、明治になって今の様に定めた。だから古来からの伝統ではない。
・皇族の女性の名前に「子」を付けるのは、始めを表す「一」と終わりを表す「了」の組合せ、つまり嫁いだら最後まで添い遂げるという意味からだ。
といおう蘊蓄が参考になったか。
こういう会なので、珍しい噺をと言って本題へ。
ネタの『好色成道』は菊池寛の小説を小朝が落語にしたもの。
「色ヲ好ミテ道ヲ成ス」という意味なのだろうか。
怠慢な生活を送ってきた比叡山の若い学僧が、嵯峨に参詣した帰りに道に迷い泊めて貰った宿の主が凄い美女。
出家の身であることも忘れて女と契りたくなってしまい、寝所に忍ぶと「勉強して法華経を暗唱出来るようになれば、望みを叶えてあげる」と言われる。
学僧はそれから一心不乱の法華経を学び、暗唱出来るようになって再び彼女の元を訪れる。
すると今度は、「契りを結ぶからには出世して僧都になって下さい。そうすれば願いを叶えてあげる」と言われ、これまた一生懸命に学問に励み僧都になって、三度彼女の元を訪れる。
そうすると女は、法華経の中の色々な用語の意味を質問してくる。
「方便即真実」とは何かとか、そうした問いに必死に答えるうちに、相手の女と契ろうとする気が失せてくる。
そこで僧侶はようやく気付くのだ。
これは仏が自分を導いてくれていたんだと。
一羽の鶯が庭でで鳴き、「ホウ、ホケキョ」でサゲ。
好きな女性とメイクラブしたいばかりに、男が懸命に励みに励み、やがて学を成して出世するという普遍的なストーリーと言える。
お堅い話を小朝らしく軽快に語り、楽しませてくれた。

小満ん『三井の大黒』
物語は毎度お馴染みだが、小満んの高座を聴いて思ったのは、このネタのキモは江戸っ子の、特に棟梁の政五郎の、江戸っ子としての「粋」と「意気」が表現出来るかどうかにあるということ。
「意気」はともかく「粋」の表現となると、やはり現役では小満んという事になろう。
3代目三木助を彷彿とさせるような、素晴らしい高座だった。

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2017/12/05

四の日昼席(2017/12/4)

「四の日昼席」
日時:2017/12/04(月)13時
会場:スタジオフォー
<  番組  >
桂やまと『夢の酒』
古今亭文菊『金明竹』
隅田川馬石『干物箱』
~仲入り~
初音家左橋『締込み』
古今亭駒次『アンニョン・サンヒョク』

地域寄席って、どの位あるんだろう。アタシが行ったことがあるだけで20は超えているが、都内だけでもその10倍はあるのだろう。もっとかな?
客の人数も様々で、10名程度から多い所では100名を超すケースもあった。20-50名といった人数が平均的だったと思う。
参加者のほとんどが常連さんでお互い顔見知りなので、あまり少人数の会に行くと、「あの人誰?」状態になってしまう。「どちらから?」とか「この会、なんで知りました?」という質問を受けたり、終わると「いかがでしたか?」と感想を訊かれたリする。そういう会には二度と行かない。

「四の日昼席」は今回が二度目で、毎月4日に定期的に開催しているようだ。
会場のスタジオフォーは、他にも若手中心の落語会を定期開催している。
出演者もレギュラー制をとっているようで、前回も確か同じメンバーだった様に記憶している。駒次だけが二つ目で他は真打ばかりだが、その駒次も来秋には真打に昇進する。
前座を置かず、この日の様にサラクチでいきなり真打が出てくるのが特長だ。
客席はほど良い笑いに包まれ、とても良い雰囲気だった。

やまと『夢の酒』
久々だ。前に来た時はこの人だけ出ていなかった。
鼓が得意の様で、今行われている立花家橘之助襲名興行での鼓は、やまとが担当しているとのこと。そのため、連日寄席に出ているようだ。
マクラ先代小さんに上手くなったと褒められた夢を見たと言っていたが、確かに上手くなった。
一つ一つの語りや仕草が丁寧で分かり易い。夢に嫉妬する若旦那の女房のリアクションも良く出来ていた。
それに、この人の顔がいい。いかにも噺家向きである。

文菊『金明竹』
本題の前に、店番の与太郎の所に傘、猫、主人を借りに来るという『骨皮』を入れていた。本来は別々のネタだったが、3代目金馬からこの型にしたようだ。
見せ場は道具七品の口上で、これに対する店主の女房の当惑ぶりだ。道具屋の女房だけに分からないとも言えず、戻ってきた主人に珍妙な説明をすることになる。
文菊らしい丁寧な高座で、女房の表情変化が巧み。

馬石『干物箱』
マクラでたっぷりと福岡マラソンの解説。ランナーの走り分けをアクションで示したが、この人がやると何となくユーモラスだ。
金の為とはいえ、女に会いに行く若旦那の身代わりをせねばならない善公は辛い。二階で気が緩んだ善公が、若旦那と花魁との出会いを妄想する所を見せ場に楽しく演じて見せた。

左橋『締込み』
会の中心はこの人で、終演後は出口で観客一人一人に挨拶していた。
風呂敷包みを見ただけで女房の浮気を疑うんだから、この亭主はよほどの焼き餅焼きなのか、はたまたお福がよほど艶っぽいのか。
お決まりの「ウンか出刃か、ウン出刃か」から始まっての痴話喧嘩。止めに入る泥棒と亭主との珍妙なやりとりから、珍しく最後のサゲまでを演じた。
この人が演じると、泥棒まで品良く見えてくる。

駒次『アンニョン・サンヒョク』
韓流ドラマがテーマなので、関心のない当方にとってはチンプンカンプンだったが、ストーリの荒唐無稽さは理解できた。
タイトルの中のサンヒョクは人気ドラマの役名でもあり、人気韓流スターの名前でもあるので、どちらを指しているかは不明だ。
ネタはとにかく面白かった。
この人の新作しか聴いたことがないが、語り口からすれば古典でも十分に行けると思うが。

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2017/12/02

「公益法人」と聞いて呆れる大相撲

「相撲が国技だって、オレ呆れけぇっちゃたよ。確かに国技館でやってるから国技なんだろうが。
もし大相撲が国技って言うんだったらだな、本場所と本場所の間には力士たちが全国の学校だの会社だのを回ってだよ、(相撲の)指導だの何だのしてるんなら、そりゃ国技だと認めてやってもいいよ。
けど、奴らがそんなことしてるのを聞いたことがねぇ。
たまに来るのは、祝儀が欲しい時だけだ。」
以上は、立川談志が演じた『相撲風景』という落語のマクラ部分だ。

子どもの頃、母親は「相撲取りは男芸者」と言っていた。
地方巡業ともなれば、その地元の興行師が巡業を仕切っていたが、多くはヤクザだった。
もしかすると、今でも実態は変わらないかも知れない。
相撲取りの贔屓、いわゆるタニマチだが、そのスジの人もいるだろう。
力士や親方と暴力団との関係がたびたび噂されるのも、そうした土壌があるからだ。

私は小学生の時から大相撲が大好きで、ラジオの実況放送は欠かさず聴いていた。親にねだって相撲雑誌も買っていた。
今でも、大相撲のTV中継は在宅している限り必ず観ているし、本場所も何度か観戦している。
だから、相撲ファンと言っていいだろう。

相撲協会といっても実態は部屋の親方、一門の連合体だ。
協会の理事は、それぞれの一門からの代表者で構成されている。だから一門の利益代表でもあるわけだ。協会の役員が相撲茶屋の利権に絡んでいるとの噂が絶えない。
力士が引退して親方になるためには、親方株を取得せねばならないが、億単位の金が動くとされている。

大相撲を純粋なスポーツと思ったら大間違いだ。
審判役である行司は各相撲部屋に所属しているが、そんなスポーツは他にない。
他に勝負審判が土俵下で眼を光らせているではないかという反論もあろうが、これとて部屋の親方衆が勤めている。
プロ野球でいえば、各球団の監督が試合の審判をしているようなもので、到底純粋なスポーツとは言えない。
大相撲はショーでもある。
ショーというと否定的に取る人もいるだろうが、どのショーだって演者はみな真剣に取り組んでいる。
力士たちだって、少なくとも本場所は真剣勝負している。

私はそうした「いかがわしさ」を含めて大相撲が大好きなのだ。
だから、昨今の暴力事件だの横綱の引退騒動だのを冷ややかに見ている。
まあ、あの程度のことはあるでしょう。
あんまり相撲にクリーンなものを求めてはいけない。
「公益法人」なんてガラじゃないのだ。さっさと「公益」を返上した方がいい。

大相撲に不満があるとすれば、マス席の値段が高すぎること。それも要りもしないお土産だの飲み物だのが勝手に付けられ、高くなっている。
そんな余計なものを取り払って、一人1万円程度にすれば、もっと多くの人が観戦できると思う。

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2017/11/30

人形町らくだ亭(2017/11/29)

第75回「人形町らくだ亭」
日時:2017年11月29日(水)18時50分
会場:日本橋劇場
<  番組  >
前座・金原亭小駒『たらちね』
金原亭馬治『壺算』
柳家小満ん『御用』
蜃気楼龍玉『首提灯』
~仲入り~
五街道雲助『品川心中』
(全てネタ出し)

国会の委員会中継をTVで見たが、与党議員たちの八百長質問にウンザリ。
そりゃそうだろう。与党で決めた事を政府案として国会に提出してるんだから。
何のことはない、自分たちで作った法案に自分たちで質問してるんだから、世話はない。

今回の顔づけは、小満んを除けばみな先代馬生の弟子あるいは孫弟子となった。

馬治『壺算』
このネタに出て来る兄いは、買い物上手ではなく、ペテン師なのだ。ペテン師は相手の錯覚を利用して金を誤魔化すのが手口だ。相手に熟考させる暇を与えず、自分の主張だけをひたすら繰り返す。
だから演者に求められるのは、兄いのセリフをポンポンとテンポの良く語ることにある。
馬治の高座ではそこが足りないと思った。
あれでは相手の店員に気付かれてしまうだろう。

小満ん『御用』
初めて聴くネタだ。
調べてみると、前の師匠だった先代文楽から教わった噺を、小満んが改作したもののようだ。
今では「お酉様」というのをあまり聞けなくなったが、以前はこの言葉を聞くと年末になったなと思ったものだ。
それに因んだネタということで、いかにも小満んらしいチョイス。
ある男、一の酉の日のお参りに行った帰り、50両の小判の入った財布を拾う。
男は有頂天になり飲み打つ買うの道楽三昧で、気が付けば無一文。
家に帰ると、酒屋の御用聞きに「この辺りで偽金が出回っている」と聞かされ、大変な事態に陥った事を知る。
やがて岡っ引きが「御用!」と言って男の家に踏み込むが、その声を聞いた男の女房が、「酒屋の小僧さんかい?」でサゲ。
御用聞きの御用と、捕り手の御用を掛けたもの。
逆『芝浜』だが、こちらの方が落語らしい。
小満んの高座は、文字通り自家薬籠中の洒落た語りで魅せていた。

龍玉『首提灯』
ネタ下ろしだそうだ。
面長の顔と語りの確かさで、初演とは思えぬ完成度だった。
ただ、好みとしては江戸っ子をもうちょっと明るく描いて欲しい。

雲助『品川心中』
志ん生、先代馬生と受け継がれた雲助の鉄板ネタ。
何度聴いても面白いのは、雲助のテンポの良い語りと、人物描写の確かさだ。
特に女郎のお染と、貸し本屋の金蔵との会話が秀逸。
何を演らしても上手かった圓生もこのネタは合わなかったし、意外に志ん朝も良くなかった。
それだけ難しい噺なんだろう。

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2017/11/27

国立名人会(2017/11/26)

第413回「国立名人会」
日時:2017年11月26日(日)13時
会場:国立演芸場
<  番組  >
前座・立川談州『子ほめ』
柳家小せん『紋三郎稲荷』
立川生志『反対俥』
柳家小里ん『一人酒盛』
     -仲入り-
三遊亭笑遊『愛宕山』
ボンボンブラザース『曲芸』
笑福亭鶴光『竹の水仙』

11月の国立名人会だが、数日前に急に行こうと思い立ち空席を調べたらけっこう良い席が一つ空いていたので予約。きっとキャンセル分だったんだろう。こういう事もあるのだ。

談州『子ほめ』
これでダンスと読むそうだ。
権太楼がかつて「受けようとする前座なんて、立川流に任せます」と言ってたが、立川の若手っていうのは何か一ひねりして自分の才能を披歴することに拘っているのではと思ってしまう。
談志だって、若い頃は真っ直ぐに演じていた。

小せん『紋三郎稲荷』
扇辰が十八番としているネタで、ストーリーは同様。違いは稲荷に間違えられた侍が宿に向く途中で食事処に立ち寄り、稲荷ずしを食べる場面を加えていたこお。駕籠屋により稲荷であることを印象付けるのと、宿で夕食に稲荷ずしを勧められた時に、先ほど食べたばかりだからと言って別のメニューを注文する所で活かされていた。
小せんの落ち着いた語りはネタに合っている。

生志『反対俥』
生志もマクラで触れていたが、今回の大相撲騒動っていうのは、どこがそれほどの大問題なのか理解できない。
まだ幼い頃にアタシの母親が「相撲の兄弟子っていう字は、無理ヘンにげんこつって書くんだ」と言っていたが、昔からそういう世界なのだ。
相撲には技として張り手が認められており、時には張り手一発で相手を倒すこともある。恐らく暴力に対する垣根は、我々の世界とは比べ物にならないくらい低いと想像する。
今回たまたま表沙汰になったが、類似の出来頃は日常茶飯事なのだろう。要は、どうでもいい話なのだ。
だいたい、大相撲を純粋なスポーツと見る方がおかしい。
生志は得意ネタでクスグリを詰め込み客席を沸かしていた。

小里ん『一人酒盛』
佇まいから語り口まで、ますます師匠の先代小さんに似てきた。
この噺は難しいと思う。全体の8割は酒を飲む男の一人芝居だが、そこに出て来ない相手の姿も表現しなくてはならない。演者に力量が要るネタだ。
良い酒だから一緒に飲もうと誘う男は、決して悪気は無いのだ。ただ相手の事を全く頭に入れていない。自分の事しか関心がない、そういう人物だ。
私たちの周囲にも大勢いる。
満員電車でスマホを操作するヤツ、混雑している中を辺り構わずキャリーバッグを引いているヤツ、みな同類だ。私たちの周囲に「いるいる」人間を切り取って見せる所に、このネタの面白さがある。
ひたすら自分勝手な男を、小里んはどっしりとした風格のある高座で演じて見せた。

笑遊『愛宕山』
久々だ。
年配に見えたが、アタシより7つも年下だ。まだ若い若い。
幇間の一八が息を切らしながら愛宕山を登るシーンや、谷底から竹を使って飛んで戻るシーンを見せ場にしていた。
ただ、一八が芸者衆が腰を振りながら山を登る姿を見て鼻血を出すというギャグは頂けない。
あと、土器(かわらけ)投げの場面で、土器を的に当てるとしていたが、ここは通常通りに的に通すとした方が自然なのでは。

ボンボンブラザース『曲芸』
後から鶴光が、曲芸では日本一と言っていたが、その通り。
そろそろ後進の育成が必要になるかと。

鶴光『竹の水仙』
東京でもお馴染みだが、上方落ごは宿は大津。おそらく甚五郎が京から江戸へ向かう途中だったのか。
竹を買う大名は、細川越中守で参勤交代の途中という。
竹の水仙の値は、当初は2百両だったが、使いの侍が無礼を働いたので3百両になる。
サゲは、甚五郎が去ったあとの宿の夫妻が「人は見かけによらないものだ」として、「この前のお坊さんも、もしかしたら弘法大師かもしれない」。
鶴光らしくギャグを多く入れた、楽しい『竹の水仙』だった。

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2017/11/24

『蒲田行進曲』 '(2017/11/23)

“STRAYDOG”番外公演『蒲田行進曲』
日時:2017年11月23日(祝)14時マチネ
会場:明石スタジオ

作:つかこうへい
演出:森岡利行
<  キャスト  >
階戸瑠李:小夏
流コウキ:銀四郎 
外村海:安次
大江裕斗:監督  
中野克馬:マコト 
新井心也:橘
佐藤仁:若旦那
山田奈保 亀田彩香 高島芽衣 宮下涼太:アンサンブル

ストーリー
東映京都撮影所は、大作「新撰組」の撮影に沸いていた。
最大の見せ場は、土方歳三に斬られた役者が大階段から転がり落ちる「階段落ち」シーンで、名もない大部屋俳優にとって一世一代の晴れ舞台。但し、良くて重体、悪くすれば死に至る。
この撮影で土方歳三役でその主役を張るのは銀四郎で、彼には自分を「銀ちゃん」と呼んで慕うヤスという大部屋役者がついていた。
銀四郎の恋人である盛りに過ぎた女優・小夏が妊娠したと聞かされ、彼は出世のために小夏をヤスに押し付けたのだ。
二人は結婚して、妻の腹の中にいるのが銀四郎の子だと知りながら、夫となったヤスは大部屋として危険な役をこなしてお産の費用を出そうとする。結婚してからも銀ちゃんに惚れ込んでいた小夏の心は、子供の父親として頑張るヤスへと次第に移って行く。
やがて映画の撮影が進み、ヤスは銀四郎に斬られて階段から落ちる役は自分しかないと思い立ち、「階段落ち」を演じる。
祈る様な気持ちで待つ小夏・・・・。

映画が大ヒットしたので、観た方も多いと思う。
蒲田行進曲というタイトルにも拘わらず、物語は松竹蒲田撮影所ではなく東映京都撮影所だ。
つかこうへいの作による舞台も大当たりして今や伝説的な扱いになっている。
舞台を見損なってしまったので、今回いい機会と思いこの公演に出かけた次第。
感想は、ウ~~ンだ。
台本がそうなのか、演出なのかは分からないが、役者たちがやたら大声で怒鳴るセリフが続く。
そのためか、主役級の男の役者たちの声が嗄れてしまっていた。そこを無理して更に大声を出そうとするから余計に声が嗄れたり裏返ったりする。
これではセリフを通して役の感情が伝わらない。
小夏を演じた女優も殺陣のシーンは動きが綺麗で良かったが、いかんせん若過ぎる。30歳を過ぎた落ち目の女優の哀れさを表現するには無理がある。
若い役者さんたちが一生懸命に演じているという熱意だけは伝わってきた。

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