2008/05/17

失政が招いた中国大地震の被害拡大

4sensho2006年10月に中国四川省をツアーで訪れた際に、バスでほぼ中央付近を南北に縦断しました。その時の車窓から見た印象を、当時の旅行記で次のように書いています。
「北の岷山に源を発する岷江は、四川省のほぼ中央付近を南北に縦断するように流れています。
今回の私達のツアーは、この岷江に沿ってバスで移動します。
(中略)
バスの車窓から見る風景は、岷江の急流と両側の切り立った山、その間に挟まれた僅かな土地で生活する人々です。
土地が狭いから農業をするのは難しいのでしょう、成都より北部は牛や山羊の放牧が目に付きます。そして猫の額ほどの土地に畑を作り、恐らくは自家用の野菜を栽培しているのでしょう。
見るからに貧しい家が多く、この地方で生計をたてる大変さが想像されます。
中国の農村部は総じて貧しいのですが、その中にも格差があります。
以前訪問した雲南省の農村は、全体として豊かな印象を受けました。
最も貧しいと感じたのは、北京から西安に向かう列車の車窓から見た農村です。平らな土地が少ないのでしょうか、小さな段々畑が目立ちました。横穴式住居も数多く見られ、ショックを受けた記憶があります。」

5月12日午後2時28分に中国南西部・四川省を震源とする大規模な地震が発生しました。地震の規模を示すマグニチュード(M)は7.8で、内陸部としては最大級の規模です。実態が明らかになるにつれ被害は日を追って増しており、今のところ犠牲者の数は数万人に達するとみられていますが、最終的には更に拡大する可能性があるでしょう。
また5月初めに起きたミャンマーのサイクロン被害は、犠牲者の数が8万人に迫る大惨事になりました。
いずれもかつて旅行した地であり、被害の大きさには胸が痛みます。
僅かですが両方の被害に対して寄付を行いました。

震源に近い地域で建物の大半が倒壊したということで、中国の建築基準がどうの、耐震性がどうのという議論があるようですが、私の見た印象からすれば、それ以前の問題です。
農家の多くは老朽化し、建っているのがやっとという建物が目に付きました。加えて中国の家は石造りなので、大きな地震がくればひとたまりもありません(反面火災被害は起き難い)。

私たちがバスで通った道路は四川省の中でも主要な幹線道路でしたが、それでも片側は岩が迫り、もう片側は大きな川ですから、随所に崖崩れが起き易い地形です。
日本を始め海外からの救助隊が現地に向かっていますが、道路が寸断されている中を、瓦礫を取り除きながらの救援活動は困難を極めるものと思われます。

災害は天災だが被害は人災という言葉がありますが、今回の大地震の被害につぃても、低所得者層ほど大きいという傾向になるでしょう。現地の住民の声として「政府の建物は壊れないのに、なぜ学校が壊れたのか。」という指摘がありましたが、その通りです。
中国の教育現場では、中央政府からの補助金が僅か2%(2006年当時)しかなく、義務教育といっても名ばかりです。農村に行けば片道2時間かけて通学する小学生も珍しくなく、更には学校に通えない子どもも大勢います。校舎が崩壊し、沢山の生徒が生き埋めになるという悲惨な結果を招いたのも、政治の責任です。
沿岸都市部の経済発展だけが最優先され、教育や住宅、医療などといった庶民の生活に必需の分野をなおざりにしてきたツケが今回ってきています。

サイクロン被害にみまわれているミャンマーもまた、失政による人災です。ミャンマーは資源が豊富で、温暖な気候は農業にも適しています。本来は豊かな国になる筈ですが、長期にわたる軍事政権が国民の生活をメチャメチャにしています。仏教の僧侶が尊敬を集めているお国柄なので、その僧侶を弾圧する政権はやがて大きなしっぺ返しを食うでしょう。

庶民を無視した政治は、最後は必ず国を滅ぼします。
我が国も、もって「他山の石」とすべきです。

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2008/05/02

ブッシュと金正日の「手打ち」が近い?

Bush14月初め頃から。北朝鮮が核施設の廃棄と、同時にシリアに核兵器開発の技術を供与したことを「自白」して、その見返りにアメリカは北朝鮮をテロ支援国家のリストから外し、経済制裁も解き晴れて経済支援を受けられるようになるというウワサが流れていたが、どうやらその方向に向かいつつあるようだ。
この件で米国のブッシュ大統領は4月29日の記者会見で、北朝鮮によるシリアの核施設建設への協力を明らかにした理由として、中東への核拡散を防ぎ、イランにウラン濃縮活動の停止を迫るのが目的だったと語っている。
つまり、北朝鮮の核技術が、シリア経由でイランに流されたというシナリオを描きたいのだ。これにより、
(1)イスラエルのシリアへの空爆を正当化し
(2)イランの核開発を停止させるという口実で、イランへの先制攻撃を準備する
という戦略であろう。

肥大化した軍需産業を抱えるアメリカは、常にどこかで戦争をしないといけない。戦争はアメリカにとり、最大の公共事業であるといえる。ちょうど日本で、常に道路を造り続けなくてはいけないのと同じ理由だ。
泥沼に陥ったイラク戦争を早く収拾に向かわせ、イランへの攻撃に備えるという点では、共和党と民主党との基本的政策に違いはない。
現に民主党の大統領候補であるヒラリー・クリントンは先日、「私が大統領になったら、イランがイスラエルに核攻撃した場合、米国がイランを攻撃して全滅(totally obliterate)させる」と語った。「核攻撃」を「核開発」に置き換えれば、いつでもイランへの先制攻撃が正当化されるわけだ。ブッシュがイラク戦争なら、ヒラリーは(もし大統領になればの話だが)イラン戦争に手を染めるのだろうか。
米国の軍需産業は、共和・民主どちらの陣営にも巨額の選挙資金を出しており、従ってどの候補が勝とうと、スポンサーの意向には逆らえない仕組みになっている。

イランはアメリカと事を構える気は全くない。資源大国であるイランは米国と紛争を起こしても、何もよい事がないからだ。金持ちケンカせずだ。
反米感情はあるが、それはイランーイラク戦争の時、アメリカがフセイン大統領に味方し、イラクに大規模の軍事支援を行った。その結果、イラクからイランに飛ばされたミサイルの殆んどが、米国製だったからだ。

「次」に備えるために、アメリカとしては対北朝鮮外交で早く結論を出したいだろうし、北朝鮮側は早く経済支援を受けたい。アメリカが金正日体制の維持さえ約束すれば、北は米国の提案をのむ可能性が高い。両者の思惑が一致すれば、「手打ち」が現実味を帯びてくる。
どうする、日本の外交。

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2008/04/30

My「独演会の落語家」BEST10

「ホリイのずんずん調査」の向こうを張って(張れないか)、私が選んだ「独演会での落語家」のBEST10を選んで見た。
選考基準は次の通り。
(1)現役の噺家に限る。例えば三遊亭圓楽は現役を引退しているので、除外した。
(2)評価は満足度(実績/期待値)、つまり期待に応えるパフォーマンスを示しているかが判定基準となっている。この結果、例えば立川談志、柳家小三治や春風亭小朝は、期待値に対する満足度が低く、選外となった。
(3)同じ人の独演会を3回以上観ていることを条件とした。桂米朝などは高い評価になる筈だが、観る機会が少な過ぎて対象外となった。

1位の志の輔だが、期待を裏切られたことは一度も無い。芸人だって日によって体調が悪い時もあるだろうし、気分が乗らない時だってあるだろう。そういう悪い時には悪いなりに、サービス精神でカバーするのが志の輔の価値である。欠点はチケットが取れないこと。ネットの前売りだと、発売開始時間に30秒遅れても完売ということもある。
2位の三枝もやはりサービス精神が旺盛な噺家だ。芸に色気がある。上方の落語家としては喋りがゆっくりで口調が明快なので聴きやすい。自作のネタも粒揃いで、いつも観客席を沸かせてくれる。
3位は談春で、やや出来不出来のバラツキがあるものの、壷にはまると感動させられる。余計なゲストを入れず、一人だけの会であるのも魅力の一つだ。この人は典型的な独演会タイプの芸人で、複数の人が出演する落語会などでは、人が変わったように低調な高座になる。多分、性格が我がままなのだろう。
4位の喬太郎は、現役の中では最も多い回数を観たことになる。古典に限れば高い満足度になるが、新作にハズレが多い。盲人が主人公のネタでは、他者に抜きん出ている。
5位の文珍、サービス精神の塊りみたいな芸人で、古典、新作を問わず高いレベルの高座を見せる。欠点は女性に色気が無いことで、「包丁」のようなネタでは惨憺たる結果になる。
6位は志らくで、古典をスピーディーな展開で(談春の半分以下の時間で)聴かせてくれる。コンテンポラリーなマクラも毎回楽しみである。ただシネマ落語は今一つ感心できない。
7位の市馬は、常にコンスタントなレベルを保ち、ガッカリすることが無い。反面、唸るほどの名演にもお目にかかったことがなく、その点が不満である。
8位の権太楼は、常に安定した芸を見せてくれる。年齢的にはベテランの域に達しているが、芸が若々しいのも魅力だ。「居残り」は、現役ではこの人が一番ではないだろうか。
9位のたい平だが、同期に真打になった喬太郎と比べ、どうしても物足りなさを感じてしまう。期待値が高い分だけランクが低くなってしまった。
10位は迷ったが、進境著しい三三を入れた。若手の中では飛びぬけて上手い。古典落語の王道を歩んでおり、様子が良いのも得をしている。

この他、古今亭菊之丞が安定した高座を見せ、当代の金原亭馬生は客筋が良く、ようやく真打に昇進した立川生志の独演会も魅力がある。
回数を観ていないので対象から外したが、三遊亭遊雀、春風亭昇太、滝川鯉昇の独演会も充実していた。

こうして見ていくと、独演会で高いパフォーマンスを見せる年齢というのは、30代後半から50歳くらいまでがピークのようである。
さて、あなたが選ぶBEST10だったら、どうなるだろうか。

順位  
1  立川志の輔
2  桂三枝
3  立川談春
4  柳家喬太郎
5  桂文珍
6  立川志らく
7  柳亭市馬
8  柳家権太楼
9  林家たい平
10  柳家三三

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2008/04/28

カード社会は「国民監視社会」だ

自動販売機でたばこを購入するために必要となる成人識別ICカード「taspo(タスポ)」が、いよいよこの5月から順次全国的に稼働する。
taspoカードは下記のようなデザインになっていて、本人の写真も表示される。して見ると、やがて対面販売でもこのカードの提示が義務づけるつもりなのだろう。
Taspo_card

Taspo

なんとも窮屈な世の中になり始めたものだ。
日本がいつの間にか年間3万人という自殺大国になってしまったり、75歳以上の年寄りは早く死ねという制度を作ったり、そういう問題は放置しておきながら、こういう事だけは迅速なのだからイヤになる。

これで味をしめると、これから次々に成人(又は18歳以上)識別カードが制度化されるんだろうね。
アルコール:「nomeru」カード
映画:「modaeru」カード
AV&DVD:「nukeru」カード
パチンコ:「moukaru」カード
風俗:「mikosuri-han」カード
なんて色々なカードが氾濫し、外出する時は、常に何十種類ものカードを持ち歩かなくてはいけなくなるだろう。

「お飲み物、なんにいたしましょう?」
「そうだな、今日はやたら暑かったから、取り敢えずビールといこう。」
「それでは”nomeru”カードを拝見します。」
「なんだ、そりゃ?」
「お客様が成人かどうかの確認ですが。」
「バカ言え。オレは今年70だぞ。見りゃあ分るだろうが。」
「でも規則でございますから。どれどれ、あのー、写真とご本人とは似ていませんが。」
「写真は30年前のものだ。オレのものに間違いはないんだから、早く確認してこいよ。」
「ハイ、カードをお返しします。」
「あれ、ビールはどうした?」
「実はただ今、全国酒販組合のシステムトラブルで、お客様の確認ができません。取り敢えずウーロン茶かオレンジジュースならお出しできますが。」
「ダメだ、こりゃ。」

カード社会というのは実は「監視社会」でもあり、本当はこれが一番恐い。カードを使うたびに、アナタが何月何日何時何分何秒に、どこで、何を買ったかが全て記録されてしまう。ポイントを餌にして、スーパーやデパートが買い物カードを発行しているが、アナタの買い物の動向が全て把握されてしまう。クレジットカードも同じだ。
電車のプリペイドカードや航空機のマイレージカードにより、アナタの移動の軌跡は全て記録されてしまう。
駅や商店街、幹線道路などに付けられている監視カメラで、あなたの姿は日々記録されている。
個人情報保護などと言っておきながら、実は全ての個人情報が丸裸にされている社会でもある。カード社会によって、アナタの動きはリアルタイムで記録され続けているのだ。

私は、以前は銀行のカードしか持たないことにしていた。別に悪い事を企むつもりは毛頭ないが、どこかの誰かから、日々私の行動を記録されるのがイヤだったからだ。クレジットカードも作らない主義だったが、米国に旅行に行くときに、クレジットカードが無いとホテルの予約が取れないと言われ、やむなく取得した。その他のカードは今も一切作らない。
「国民総背番号制度」などというと、直ぐにプライバシーが持ち出されるが、そういう人々が各種カードを平気で使っているのが、不思議でならない。

安易なカードの導入は、やがて国民監視社会に道を開きかねない。何でもかんでも認証カードが要求される社会なんて、息苦しくてショウガナイ。

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2008/04/27

逮捕者の氏名は公表しないのか

聖火リレーの不快なお祭り騒ぎも昨日で終わったが、この報道で一つだけ気になったことがある。長野県警は聖火リレーで6名を逮捕したと発表しているが、新聞各紙を見る限りでは逮捕者の住所、氏名が一切公表されていない。これはどうした事だろう。警察が発表していないのか、マスコミが自主規制しているのか、いずれにしろ不可解だ(私が調べた範囲であり、もし氏名が公表されていたなら、ご教示願います)。
逮捕はいずれも現行犯であり、逮捕理由は暴行、威力業務妨害などで一部は映像でも公開されているのである。

逮捕者の氏名公表については議論のあるところで、容疑段階では公表すべきでないという主張も理解できる。現にそうした方針を貫いている報道機関もある。
普段ならデモなどで逮捕されれば直ちに氏名が公表されるし、集合住宅の郵便受けにビラを入れただけで、逮捕されれば氏名が発表される世の中なのだ。
草加市でプランターからパンジーを引き抜いた容疑者の氏名が公表されているのに、聖火リレーの事件では公表しないというなら、報道の公平を欠くのではなかろうか。
容疑者は犯行理由として「チベット問題の解決を訴えたかった」と言っているそうだが、本当なのだろうか。
早急に氏名を公表することを望みたい。

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2008/04/26

紅旗聖炎非吾事

Bougohukuオリンピック競技は種目によっては関心がありますが、専らTV観戦です。昔アジア大会の陸上競技を観に行ったことがありますが、今なんの競技をしていて、誰が何に出ているかサッパリ分らず、一度で懲りました。
聖火リレーとやらが毎回行われているようですが、全く興味がありません、聖火を持って走る人を見て、何が面白いんでしょうね。まあ、人間スキズキですから。

その聖火リレー、今回は特別に注目を浴びているようですが、TV各局のニュースで聖火が今羽田に到着したの、今車に乗って長野に向けっているだのを、上空から中継までしているのは正気の沙汰ではありません。もっと報道すべき重要なことが他にあるだろうと、ついついTVに向かって説教をしています。
「紅旗聖炎吾ガ事ニ非ズ」。

日本在住のチベット人などによる抗議のデモンストレーシンが行われるようですが、これは当然の事ですので、規制すべきではありません。
しかし騒ぎに便乗して目立とうという「にわかチベット屋」の妨害活動は、毅然として排除すれば良い。厳重な警備体制がしかれるようですが、この区別だけはしっかりとして欲しいところです。

長野市には、「硫化水素をまく」などとリレーの妨害を予告するメールが市に寄せられているそうですが、撒いて貰いましょうよ。本当に硫化水素を撒くのなら、それだけは見に行きたいものです。何しろ気体ですから、撒くのは難しいですよ。防護服でも着ていないと、撒いた本人が真っ先に死亡しますしね。
こんな口先だけの愉快犯の連中は、チベットの人からすれば迷惑でしかないでしょう。

その硫化水素による自殺が流行しているのは、困った問題です。何でも「楽に死ねる」ということで、ネットを通じて広まったようですが、軽い中毒を起こした経験から言わせてもらえば決して「楽」ではないので、絶対にやめて欲しい。周辺の人を巻き添えにするなど、他人に甚大な被害を与えることにもなります。
学生のころ実験で硫化水素を使ったことがあります。ガスを吸い込まないように、ドラフトチャンバーの中に手を入れて操作するのですが、どうしても微量のガス漏れがおこります。
わずかに吸っても、焼け付くような気道の痛みがおき、次いで頭痛、めまい、吐き気に襲われます。一緒に実験していた同級生は立っていられなくなって、しばらく横になったまま休んでいました。
私の方は軽くてそこまで行かなかったのですが、あのイヤな思いは二度としたくありません。
「楽」ではないことを分って貰えたら、必ず思いとどまってくださいね。

「不易硫化」だけは、絶対に避けねばなりません。

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2008/04/24

「喬太郎・白鳥」WAZAOGIろっく・おん

Hakucho4月23日は内幸町ホールの、“「柳家喬太郎・三遊亭白鳥」WAZAOGIろっく・おん”に出向く。「ミックス寄席」が行っている公開レコーディングであり、OKならCDとして発売される。普通は、寄席や独演会で録音し選択してCD化するのだが、こういう風な「今から録音しますよ」というやり方とどちらが良いかは、意見の別れるところだろう。私なら前者を採る。

今回、小屋に入り着席した時から何となく居心地が悪かった。客層がどうこうではないし、はっきりとした理由があるわけではない。
そのせいかどうか、喬太郎の一席目で、当初の「彫師マリリン」を途中で中断し、「派出所ビーナス」を最初から演じ直した、本人も言っていたが、とても珍しいことで、私は初めての経験である。喬太郎としては、どこかシックリこなかったのだろう。
二席目でも喬太郎は、最前列で身体を前後にゆすって笑う客がいたのが気になったらしく、「どうされました?気が違ったんですか?」と訊いていた。
居心地の悪さは、私だけでは無かったのかも知れない。

休憩を挟んで、喬太郎と白鳥が2席ずつ、いずれも新作である。

・三遊亭白鳥「ナースコール」
病院の看護婦と、老人の患者とのやりとりを描いたネタだが、私には面白さが理解できなかった。新作落語の場合、どこかにリアリティが必要であり、ウンウンそうだよなと思わせることが大事だと思う、白鳥のネタには、それが無い。そこが同じ病院を舞台にしても、文珍の「老婆の休日」とは雲泥の差があるのだ。
・柳家喬太郎「派出所ビーナス」
ネタを途中で変えたことについて、寄席で「宮戸川」上下の口演でエネルギーを使い果たしたとエクスキューズしていたが、確かにマクラがいつもの喬太郎のテンションと違うなという印象を受けた。
しかし本題に入るとさすがで、池袋駅前交番を舞台にして、旅館の女将や秋葉系の女の子が警官になるというストーリーを楽しく聴かせてくれた。

・柳家喬太郎「夜の慣用句」
得意のサラリーマンもので、課長と部下が飲み屋やキャバクラに行き、課長が行く先々で「キミの座右の銘は何かね?」と訊くというストーリーだ。
課長の喋りや仕草が、こういう男って確かにいるよなと思わせる所がさすがである。飲むと部下に威張り、説教し、やたら教訓を垂れるという、企業の管理職の悪いクセを良く衝いている。
・三遊亭白鳥「死神」
古典落語のネタを、白鳥がアレンジして演じたもの。病院の医師が医療ミスを理由に、医師免許を剥奪され悲観しているときに死神にとりつかれるという設定にしている。スジとしては工夫されていて、意表をつかれるのだが、白鳥は人物描写が下手だ。だから平板になってしまい、クスグリが少なくなると途端にダレテくる。もう少し話芸の基本を修行しないと、ネタの面白さが発揮できない。

居心地の悪さは終演まで続き、どうもスッキリしない会となった。

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2008/04/23

あまりに稚拙な弁護方針「光市母子裁判」

Bengodan4月22日行われた、今から9年前に会社員本村洋さんの妻(当時23歳)と娘(同生後11カ月)の2人が殺害され、当時18歳だった元少年が殺人や強姦(ごうかん)致死などの罪に問われた光市母子殺人事件の差し戻し控訴審で、広島高裁は原判決(無期懲役)を破棄し、被告の元少年に対して死刑を言い渡した。

この裁判は99%死刑判決が予想されていた中で、弁護団がどのような弁護活動をするかが、最大の焦点だった。
最高裁の差し戻し判決では、事件の事実認定をした上で、「被告人の罪責は誠に重大であって,特に酌量すべき事情がない限り,死刑の選択をするほかないものといわざるを得ない。」と結論づけている。
弁護団が死刑判決を回避しようとするならば、情状酌量を訴えるしか方法がなかった。つまり、被告自らが起こした罪と向き合い、真剣に反省し、更生する可能性を示唆しない限り、死刑判決は避けられなかった。

しかし弁護団の方針はこれとは異なったものとなった。被告の主張に沿って、犯行は計画性のない傷害致死事件であり、死刑にはあたらないと主張した。
その主張というのが、
・弥生さんに優しくしてもらいたいという甘えの気持ちから抱きついてしまった。
・騒ぐ弥生さんを黙らせようと口を押さえたつもりの右手がたまたま喉にいった。
・弥生さんに生き返ってほしいという思いから姦淫した。
・夕夏ちゃんを泣きやますために、首に紐で蝶々結びしようとしただけ。
という内容のものだった。
これらの主張は誰が考えても荒唐無稽であり、自己弁護の言い逃れと裁判所が受け止めたのは当然だ。

こうした被告の主張が、裁判官の心証を著しく悪くさせたのは想像に難くない。
弁護方針はあまりに稚拙であり、果たして弁護団が被告の死刑を真剣に回避しようとしていたのか、疑問を感じるほどである。
どうせ死刑になるのだから、最後に被告の言い分をそのまま言わせておこうという戦術だったのだろうか。
どうも弁護人たちの意図が良く分らない。

この裁判の弁護団に対して、厳しい批判が加えられたが、その中には被告の弁護を行うこと自体を問題視するかのような言動があったのは、極めて危険である。そうした主張は、我が国の司法制度を否定するものだ。
特に、橋下徹・現大阪府知事が、TVでこの事件の弁護人の懲戒処分の署名を扇動したのは悪質であり、彼が弁護士の資格を有するのかを疑わせる行為だったといえる。
こうした人々の一方的主張は、実はこの事件の被告人と心情的に共通しているではなかろうか。

今回の判決が、少年事件についての「永山基準」から一歩踏み出し、厳罰化の方向に向かったのは間違いない。
しかし、昨今の「死刑になりたくて人を殺す」事件が多発している状況下では、厳罰化が凶悪犯罪の抑制になりえないではないかと思われる。
被告の元少年は近い将来死刑が確定するであろうが、憂鬱な気分が晴れないのはそのためか。

【永山基準】
1968−69年の連続4人射殺事件の永山則夫元死刑囚(事件当時19歳、97年8月執行)第1次上告審判決(83年7月)で、最高裁が無期懲役の2審判決を破棄した際に示した死刑の適用基準。(1)犯罪の性質(2)動機(3)態様、特に殺害方法の執拗(しつよう)さや残虐さ(4)結果の重大さ、特に殺害被害者数(5)遺族の被害感情(6)社会的影響(7)犯人の年齢(8)前科(9)犯行後の情状−を考慮し、刑事責任が極めて重大で、罪と罰の均衡や犯罪予防の観点からやむを得ない場合には、死刑の選択も許されるとした。

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2008/04/22

思い出の落語家10「ご存知」柳家三亀松

Mikimatsuたまにはイロっぽい所をということで、今回は初代柳家三亀松を。ジャンルからいうと音曲師ということになるが、三味線漫談、粋曲、粋談と多彩な芸の分類に困って、しまいには「ご存知・柳家三亀松」とチラシに書かれた、伝説的な色物の芸人である。
1901年生まれの三亀松の全盛期は戦前になるらしいが、戦後も大看板として寄席に出ていて、色物の芸人には珍しく度々トリをとっていた。私は小学校3~4年にかけて信濃町に住んでいた関係から、親に連れられ新宿末広亭に通っていたので、三亀松の高座を数回観ている。

なにせお色気が過剰で、戦前の検閲で31枚のレコードが発禁になった人なので、芸が子ども向きとはいえない。ウットリするような良い声で都々逸を唄っているときは、子ども心にも思わず聴き惚れていたが、漫談になると途端に女の鼻声で「イヤァ~ン、バカァ~ン」や「うっふん、イジワルゥ」「ヤッッテ」(音声は想像してください)と始まるので、なかなか刺激的だった。
その都々逸も、
♪緋緬(ひぢりめん) 肩から滑って のぞいた乳房 にっこり笑って 消す灯り♪
というような文句なので、9歳の子どもがどこまで理解できたか、心許ない。
三亀松の方だって、最前列の中央にチョコンと子どもが座ってられたのでは、さぞかしやりにくかったろう。
なかには、
♪金も出来たし 着物も出来た そろそろあなたと 別れよう♪
なんて、素っ気無い文句もあった。
よくまあこんな芸を子どもに見せていた、我が母親の神経はどうなっていたんだろう。

一度、代表作である「新婚熱海(箱根だったかも)の一夜」の一部を聴く機会があったが、この中で「いけませんわ、さっきのお風呂の中の、あのおイタは。」というセリフだけは、身体に電流が走った。あの時、私は目覚めたのだ! 以来ずっと目覚めっぱなしで、今日に至る。

芸にムラのある人で、やる気のある時は都々逸から「さのさ」、新内と次々に良い喉を披露するが、やる気のない時はサッパリで唄は二つ三つ、後は当時の時代劇映画スターだった阪東妻三郎や大河内傳次郎のモノマネでお茶を濁していた。

結婚して妻が妊娠し5ヵ月だった時に、お腹の赤ちゃんへの胎教として、妻を伴って人形町末広に出かけた。この時に柳家三亀松が出ていたが、顔はどす黒く、身体はやせ、目ばかり大きく見えるという状態だった。それでも喉は衰えず、当日は気分が良かったのか次々と都々逸を披露していた。
その三亀松の高座を初めて目にした妻は、あまりの男の色気にブルブルっと震えたそうだ。何のことはない、時を隔てて、夫婦揃って三亀松によって目覚めさせられたのである。
それからおよそ半年後の1968年1月に、三亀松は胃がんで亡くなった。享年66歳であった。
その2年後には、落語の殿堂と言われた人形町末広も閉館している。

音曲師で声が良かった芸人に、春風亭枝雀がいた。細長い首を鶴のように伸ばして唄うのが特徴だった。この人は元々落語家だったので、語りも面白かった。
それから遅れて、柳家紫朝が出てくる。この人も良い声で、新内流しの「蘭蝶」を得意としている。病を得てから高座に上がる機会が減ってしまったのは残念だ。
女流の芸人も、かつ江、鯉香、人形・お鯉など達者な芸人が揃っていた。

昔の寄席と比べて今の寄席は、落語家は今の方が充実しているように思う、だって昔は文楽、志ん生という名人がいたじゃないかという向きもあろうが、その人たちは当時からメッタに定席には出ていなかった。実力者の多くは名人会やホール落語会が中心で、出演者が限られるのに寄席の数が多かったから、質が落ちていたのだ。
今の方が明らかに劣っているのは、音曲など色物の芸人だと思う。

♪吾妻橋とは 吾が妻橋よ そばに渡しが ついている♪

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2008/04/21

小泉純一郎にまた騙されるか

Koizumi_graceland最新の世論調査で、福田政権の支持率が更に下がってきている。急落の原因として関係者からは、後期高齢者医療保険制度の実施により、老人の福田離れが加速したとの観測がなされている。これは福田康夫の責任ではないが、このままでは「早死医療制度」が、福田政権の息の根を止めることになりかねない。
この法律は、小泉政権下で野党の反対を押し切り強行採決で成立させたもので、文句があるなら小泉純一郎に言わねばなるまい。
処が、世論調査では、次期の総理は誰が適任かと訊くと、決まって小泉純一郎が第一位となる。

安倍政権の命脈を最終的に絶ったのは、消えた年金だった。安倍晋三の罪は年金調査を1年以内に行うという、出来もしない約束をしたことにあるが、年金問題そのものには責任は無かった。
厚生族の有力議員として厚生大臣もつとめ、総理を5年間続けた小泉元首相は、当然年金制度の乱脈ぶりを誰よりも正確に把握していた筈だ。しかし彼は在任中、この課題に一切手を付けなかった。理由は、簡単に解決できないことが分っていたし、表沙汰になれば必ず責任を追及されるのが分っていたからだ。

そこで考え出したのが、郵政民営化だった。米国政府の要求にも応えられるし、「改革」っぽいイメージにも合っていて、何より口当たりが良い。
小泉政治の影の部分の目くらましには、ピッタリのスローガンだった。
負のイメージになるような事柄は極力隠蔽するか先送りし、光が当たる部分だけを際立たせることにより、小泉政権は人気を維持してきた。
ちょうど東京都の石原知事が、新銀行東京の失態から都民の目をそらせるために、東京オリンピックの開催を持ち出したのと、同一の手法である。

世間であれだけ騒ぎになっているのに、未だにオレオレ詐欺の被害は後を絶たない。周囲から見ると、なんで騙されるのか不思議なくらいだが、騙す方もプロなのだ。
以前、当ブログで近所に住んでいた詐欺師のことを書いたが、金を持っていた周辺の住民の大半がこの男の詐欺に引っ掛かっていた。突然姿を消すまでは、誰もがその男を疑っていなかった。光の部分の演出が実に巧みなのだ。
詐欺師というのは、こうして次から次とカモを見つけては金を詐取し、一生それで暮していくのである。この近所の詐欺師もそうだったが、こういう人間に限って誰からも好かれ、評判も良かったのだから困る。
世の中、騙す人間がいるから騙されるのか、騙される人間がいるから騙すのか、あるいは相互が依存しているのか、解釈が分かれるところである。

小泉純一郎や石原慎太郎を詐欺師呼ばわりする気は、毛頭ない。
ただ、現象的には似ているなと感じただけだ。
(文中敬称略)

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