2019/10/16

「西のかい枝 東の兼好」(2019/10/15)

第30回「西のかい枝 東の兼好」
日時:2019年10月15日(火)19時
会場:横浜にぎわい座 芸能ホール
<  番組  >
前座・三遊亭じゃんけん『金明竹』
桂かい枝『豊竹屋』
三遊亭兼好『館林』
~仲入り~
三遊亭兼好『粗忽長屋』
桂かい枝『鼠穴』

先日の台風、被害も停電もなかったが、一時期TV、ネット、固定電話が不通となった。ラジオが無いもんだから情報から取り残された状態になった。どうやら共有部分の電源に不具合が生じたようで、エレベーターが停止、廊下や階段は真っ暗。長引けば水道も止まるところだったが、管理会社に連絡して2時間ほどで正常に戻った。
この程度で済んだから良かったが、家が流されたり壊れたり浸水が続いている方はさぞかし大変な思いをされているだろうと胸が痛む。

かい枝『豊竹屋』
東京でも演じられるが、このネタはやはり上方だ。音曲噺とは言えないが、義太夫の素養が演者に求められる。かい枝の高座は語りの上手さが活きていた。
なおタイトルの豊竹屋、主人公の豊竹屋節右衛門は、昔大阪の道頓堀に「竹本座」と「豊竹座」という二つの浄瑠璃の小屋があった事から命名したものだろう。
三味線弾きの名前が花梨胴八となっているのは、三味線の胴が花梨の木から作られているからだと思う。

兼好『館林』
江戸の末期になると町人も剣術を習っていたようだ。
剣術に凝った半さんが道場の先生に武者修業の旅に出たいと言い出す。先生は止めるが半さんは聞かない。仕方なく自分の武者修行時代に話を聞かせる。
上州の館林で賊が土蔵の中に入って刀を振り回していて、周囲が難渋していた。先生は一計を案じ、空き俵を土蔵の中へ放り込んだ。賊が慌てて俵に斬りつけている隙を見て飛び込んで、先生は相手の胸元めがけて首をぬっと出して賊を取り押さえた。
良いこと聞いたと半さんが町内酒屋の前を通りかかると、酔っぱらった浪人が金を払わず蔵の中で刀を振り回して暴れている。そこで半さんが俺が生け捕りにしてやると言い出す。周囲は止めるが、先ず空き俵を放り込んで、相手が俵に斬りかかっている所に飛び込んで生け捕りにすると息巻くが、それを浪人はみな聞いてしまった。半さんが俵を放り込んでも浪人は切ってこない。「おやおや、斬り下ろさないね、中で何してんだろ」と、首をぬっと土蔵の中に入れたとたんに、浪人がエイッと斬り下ろした。半さんの首はゴロゴロッと地面を転がった。
騒動を聞きつけた先生が近づくと、半さんの首が起きて「先生、嘘ばっかり」でサゲ。
このネタ、8代目文治が演じていたがその後しばらく途絶えていたが、近年になって喬太郎が復活させている。
何ともバカバカしいストーリーだが、兼好にはニン。

兼好『粗忽長屋』
いくつか独自の工夫が見られた。
・熊が死んだ気にならないというと、八が婆さんが亡くなった時も3日経ってから実感が湧いてきたと説得する。
・熊が遺体の背中を見て俺じゃないと言うと、八がお前は自分の背中を見たことがない、俺は普段から見てるから間違いないと説得する。
・逡巡していた熊が「煙草入れが俺と同じ」と言って本人だと確信すると、係の役員が証拠が出たんだからと相槌を打つ。
そうした工夫が可笑しさを増幅していた。

かい枝『鼠穴』
東京のネタをほぼそのまま上方に移したという演じ方。
東京の噺家も色々な人が演じていて、それぞれ若干の違いがあるが、ここでは圓生の演じ方を標準として比較する。
かい枝の高座では、弟の竹次郎が兄から3文しか貰えなかったことを、自分も立派に成功した10年後も恨みが消えなかった。だから兄に金を返した後、直ぐに立ち去ろうとする。兄はそれを大声で止めて、弟がもし3文を倍にしていたら元手を10両でも20両でも貸すつもりだったと告白する。それを聞かされた竹次郎も初めて兄の真意を知って感謝する。
後半の夢の部分は東京と同じ。
サゲは、東京では「夢は土蔵(五臓)の疲れだ」としているが、かい枝は兄弟手を取りあって繁盛したで締めた。
全体に人情噺としての色を濃くした演じ方で、かい枝の技量が十分に発揮されていた。

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2019/10/15

【台風19号】もはや「異常気象」とは言えない

台風19号による猛烈な雨の影響で、東北、関東など甚大な被害が出た。
10月14日時点での全国の被害状況は以下の通り。
死者:55名
行方不明者:16名
堤防の決壊:37河川52カ所
床上浸水:1975棟
床下浸水:1729棟
土砂災害:134件
断水:13万5千戸
水の深さで立ち入りが困難な場所もあり、被害の全容は見通せないため、被害はさらに拡がる可能性もある。

こうした大型台風や記録的大雨が発生すると、その度に「異常気象」が原因と言われてきたが、もはや「異常」ではなくこれが「通常」と見るべき段階に来ているのではなかろうか。
中国の西北部は「黄土」と呼ばれる広大な地域があり、不毛の地と言われてきた。春先にはこれが黄砂となって中国から朝鮮半島、日本まで飛んできて毎年被害が出ている。
ところが最近になって黄土の緑化が進んでいて、農作物の栽培まで行われ始めているという。
原因は、この地域の気温が高くなり降水量が増えてきたため、植物が育つようになったのだ。
その一方、同じ中国では東部の沿岸部では海面の上昇が起きており、中でも上海では特に大きく100㎜を超えているという。
地球温暖化は大きなテーマであり、世界をあげて取り組むべき課題であるが、ここまで来てしまったという現実は受け容れるしかあるまい。
その上で、今後の防災対策を講じるべきだろう。
もう「異常気象」という概念は捨て去ろう。

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2019/10/14

エースと4番の不在が最後まで響いた阪神タイガース

昨日、CSファイナルでの敗退が決まり阪神タイガースの今シーズンが終了した。
リーグ戦では最後に滑り込みで3位に入り、CSの1stステージで2位のDeNAを破ったが、最後に力つきた。
シーズン前の予想では今年はAクラスは難しいと思っていたので、よく健闘したと思う。
今年の阪神、一言でいえばとにかく打てない。得点数538は12チーム中で最下位。ホームランは94本でリーグ5位だが首位巨人の183本のおよそ半分だ。
おまけに失策数は3桁に達し、打てず守れずの1年だった。
それでも辛うじて3位に入れたのはリーグトップの防御率の投手陣、特に中継ぎや抑えの奮闘によるものだ。
1年振り返ってタイガースの一番の泣き所は、エースと不動の4番が不在だったこと。
ここ数年、投手の中心だったメッセンジャーが不本意な成績に終わり引退となってしまった。本来はエースの役割を果たすべき藤浪に至っては1軍未勝利で、しかも大半が2軍暮らしという有り様だ。
4番には大山がすわったが成績が振るわず、後半戦はスタメン落ちまであった。替って4番にすわったマルテも中途半端な成績に終わっている。
シーズン途中でメジャーから獲得したソラーテに至っては「あの人はどこ?」状態だ。
そんなこんなで最後まで4番が固定出来なかった。
来季こそ優勝をと言いたいところだが、今のチームの戦力を冷静にみれば夢と終わるだろう。
それは一口にいえば、選手層の薄さだ。
今秋に新たな侍Jが招集されたが、28名の代表選手の中でタイガースからはゼロだ。
つまり今の阪神には、球界を代表する様な選手は一人もいないということだ。
なぜタイガースには選手が育たないのか。素材が悪いのか(スカウトの能力)、育成が間違っているのか。
なぜ他球団のようなホームランを打てる外国人選手が獲得出来ないのか。
監督やコーチの首をすげ替えてみても、球団経営の根本的な問題にメスを入れない限り、タイガースは優勝を争うようなチームにはなり得ないことを肝に銘ずべきだ。

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2019/10/12

「露新軽口噺」(2019/10/11)

「露新軽口噺」
日時:10月 11日 (金)14時
会場:らくごカフェ
<  番組  >
『あいさつ』露の新治・露の新幸
露の新幸『手紙無筆(平の陰)』
露の新治『仔猫』
~仲入り~
露の新治『野ざらし』
露の新幸『狼講釈』

『あいさつ』で「露新軽口噺」は露の新治・露の新幸子弟の研鑽の会として開かれているもので、今回東京で初の開催となる。師匠から、本日は露の新幸の東京デビューで、入門5年目でネタの数も増え腕も上がっているとの紹介。いい師匠を持って幸せだ。
当初は、12日に福島の原発事故避難者へのボランティア公演を予定していたが、台風で中止となったとのこと。
客席は満員の入り。

新幸『手紙無筆(平の陰)』
『手紙無筆』、上方では『平の陰』というタイトルを使っているようだ。
筋は東京のものとほぼ同じだが、手紙を読み兄いが一つ読むごとに、
「早々、ではさようなら、もうおしまい」
「では今度こそ、いよいよ本当にさようなら、グッドバイ、おしまい」
を付け加えるのがアクセントとなっている。
入門5年目というと東京だと二ツ目になって2年目ぐらいに相当するが、二人のセリフのテンポもよく、しっかりと演じていた。

新治『仔猫』
新治が上方らしいネタということで選んだと。
大店におなべという下女がやってくる。器量は悪いが働きもので気が利くので周囲の評判は上々。
処が、店の者が次々とおなべの不審な行動を目撃する。心配になった店の主人と番頭がおなべの留守に持ち物を調べると、中に血まみれの猫の毛皮が。
直ぐに番頭がおなべに店をやめさせようとするが、おなべは身の上話しを始める。父が猟師でその祟りか、ある日看病していた猫の怪我をなめたら、その味が忘れられなくなった。それから猫を取って食べる病になってしまい、村にいられなくなって大阪に出てきたのだという。
それを聞いた番頭は、「おなべは、猫をかぶっていたのか」でサゲ。
滑稽噺から始まって途中で怪談噺風になり、地口のサゲという珍しいネタだ。
おなべの告白の場面では、一瞬寒気が走るような新治の高座だった。

新治『野ざらし』
上方では『骨釣り』のタイトルで演じられている。立川談志から月亭可朝に伝えられたを可朝が上方風にアレンジしたもの。新治は可朝から教わったとのこと。
筋は東京のものとほぼ同じで、後半の骨がお礼に来るのがお婆さん。
新治は楽しそうに演じていたが、出来れば上方の『骨釣り』の方を演じて欲しかったなぁ。

新幸『狼講釈』
師匠の十八番だ。トリは初めての経験とか。
山場の講釈(鉄砲、五目講釈)を淀みなく演じた。
師匠の洒脱な味には遠く及ばないが、これは今後の修行。

12日は別の落語会を予定していたが台風で延期になってしまった。
数十年の一度という大型台風、どうぞ皆様も身の安全にご留意を。

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2019/10/11

「人形町らくだ亭」(2019/10/10)

第86回「人形町らくだ亭」
日時:2019年10月10日(木)18時35分
会場:日本橋劇場
<   番組   >
前座・柳家ふくびき『寄合酒』
柳家さん喬『そば清』
古今亭志ん輔『駒長』
五街道雲助『干物箱』
~仲入り~
春風亭一朝の音曲演奏『助六』(長唄・三味線/桂小すみ)
柳家小満ん『らくだ(通し)』

第86回「人形町らくだ亭」は、月刊誌「サライ」創刊30周年記念公演ということでレギュラー5人が勢揃いという特別企画。
仲入り前はお馴染みのネタが、後半は一朝の笛演奏と小満ん『らくだ』という構成。

さん喬『そば清』
さん喬の鉄板ネタで、寄席の浅い出番でも掛けることが多い。蛇含草の効果を、梅干しは金属を溶かすがご飯は溶かさないという例で説明しているのはとても分かり易い。ネタは多くの演者が手掛けているが、さん喬にとどめを刺す。

志ん輔『駒長』
古今亭のお家芸であり、これまた志ん輔の十八番。
博打好きで借金だらけ、おまけに乱暴者の長兵衛。女房をエサにして借金取りにきた上方の損料屋の丈八を美人局で脅して金を巻き上げる算段をするが、女房は優しくて金持ちの丈八にさっさと鞍替え。置手紙を読んで唖然とする長兵衛の表情が良い。
落語には珍しい、現代感覚の女房だ。

雲助『干物箱』
羽織と5円に釣られて若旦那の身代わりになって2階に上がった貸本屋の善公、今ごろ若旦那は花魁といい思いをしているんだろうと想像し一人ではしゃぐ場面と、父親から色々訊きだされ次第に追い詰められてゆく場面が見所。
父親が2階に上がってきて進退窮まった善公が布団を被っていると、その姿を見た父親が「湯に行ったにしちゃ汚い足の裏だな。あれ、いつの間にかケツにひょっとこの入れ墨なんかしてやがって」というセリフが可笑しい。

一朝の音曲演奏『助六』(長唄・三味線/桂小すみ)
桂小すみ、芸協のお囃子から音曲師となり今年前座修行を終了した。達者な三味線といい喉を聞かせてくれた。一朝よりこちらがメインだったかな。

小満ん『らくだ(通し)』
通しと言うこともあってか、前半の屑屋が月番と八百屋に掛け合いに行く所のヤリトリはカットし結果だけを紹介。大家でのカンカンノウはそのまま演じた。
兄貴分が屑屋に無理強いして酒を飲ませる場面では、3杯目の途中から屑屋の口調が変わり、兄貴分と立場が逆転する。屑屋が元は道具屋の主だったと告白してからは、貫禄と洒脱さを見せる所が小満んらしい。
兄貴分に言いつけて近所から剃刀を借りてこさせ、らくだの頭を剃るが途中から面倒になり髪に火をつけて燃やしてしまう。
らくだの遺体を菜漬けの樽に押し込み落合の焼き場に向かう所で、焼き場に払う金が足りないのに気付く。兄貴分が途中の小石川の質屋の弱みを嗅ぎつけていて、それをネタに強請って2両の金を得る所は上方版に近い。
焼き場に着いて樽の中にラクダの死体が無いことに気付き、途中まで引き返し誤って酔って寝込んでいた願人坊主を樽に詰めてしまう。担ぎ出すと中から「痛い!」の声に兄貴分が「うるせえ!」と叱ると、屑屋が「おいおい、死人と喧嘩するなよ」のセリフが可笑しい。
屑屋がらくだへの恨み辛みを言ったり愚痴を言ったりする所はカットしており、後半で通常は影の薄い兄貴分が存在感を見せるなど、小満ん独自の演出が光った。

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2019/10/10

『どん底』(2019/10/9)

シリーズ「ことぜん」Vol.1『どん底』
日時:2019年10月9日(水)13時
上演時間:3時間(休憩含む)
会場:新国立劇場 小劇場 THE PIT
脚本:マクシム・ゴーリキー
翻訳:安達紀子
演出:五戸真理枝
<   キャスト   >
山野史人/ミハイル・イワーノヴィッチ・コストゥイリョフ(木賃宿の亭主)
高橋紀恵/ワシリーサ・カールポヴナ(その女房)
瀧内公美/ナターシャ(ワシリーサの妹)
原金太郎/メドヴェージェフ(ワシリーサとナターシャの叔父、巡査)
立川三貴/ルカ(巡礼者)
廣田高志/サーチン
釆澤靖起/ワーシカ・ペーペル(泥棒)
伊原農/アンドレイ・ミートリイチ・クレーシチ(錠前屋)
鈴木亜希子/アンナ(その妻)
クリスタル真希/ナースチャ(売春婦)
泉関奈津子/クワシニャー(肉饅頭売りの女)
小豆畑雅一/ブブノーフ(帽子屋)
堀文明/俳優
谷山知宏/男爵
永田涼/アリョーシカ(靴屋)
長本批呂士/クリヴォイ・ゾーブ(荷かつぎ人足)
福本鴻介/ダッタン人

20世紀初頭のロシア。社会の底辺に暮らす人々が集うサンクトペテルブルクの木賃宿。ペテン師、泥棒、病人、娼婦、彼らは希望の持てないままカードと酒に浸る。
そこへ巡礼のルカが現れ、宿の住人たちに説教を垂れる。虚実判然としないその説教に耳を傾ける者もいれば、冷笑する者もいる。
やがて宿の主人とその妻、妻の妹、妻の情夫で妹との結婚を夢見る泥棒との間で騒動が持ち上がり、泥棒が宿の亭主を殺害する事件が起きる。妻と泥棒は捕まり裁判にかけられ、怪我をした妹は病院に送られるが逃亡する。
誰一人幸福になることがなく、どん底にいる市民たちは、歌と酒だけを娯楽に日々の生活を送っていく。

夜でも昼でも 牢屋は暗い
いつでもオニめが あああ
えいやれ 窓からのぞく

のぞことままよ 塀は越されぬ
自由にこがれても あああ
えいやれ 鎖は切れぬ

ああ この重たい鉄の鎖よ
ああ あのオニめが あああ
えいやれ 休まぬ見張り

 

絶望しかない宿の住人たちだが、過去に殺人を犯し出獄してきたサーチンの言葉、
「人間はよりよき者のために生きてるのさ」
「人間、これこそが真実だ」
が胸に響く。
だから終幕で住人全員が合唱する上記の「どん底の歌」が人間賛歌の様に聞こえてくるのだ。
舞台装置を敢えて工事現場に仕立てた意図は、現在私たちが抱えている「どん底」に対する演出家の問いであろう。

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2019/10/08

「校長室」は廃止したら

多くの学校に「校長室」というのがあるが、あれは必要なんだろうか。生徒が数千人といった規模の学校ならともかく、小中学校に校長室は要らないだろう。
校長の最大の責務は円滑に学校を運営することだろうし、そのためには生徒や教職員の状況を正確に把握せなばなるまい。だから校長は職員室にいるべきだ。
教育現場で問題が起きたとき、しばしば校長が知らなかったという報道に接するが、それは校長室にいて教頭らから報告を受けているから、どうしても実態にバイアスがかかるのだ。
企業でも、ある規模以下では社長が事務室に在席しているケースが多い。大企業でも工場では、工場長が事務室にいる例が少なくない。
かつて私の取引先の企業が色々な問題を抱えていたが、社長交代に合わせて社長室を廃止し、社長が事務室に席を移した途端に社内の風通しが良くなり、業績も改善した。
校長は教育現場の責任者だ。校長室を出て職員室に移り、空いたスペースは応接室や会議室にすれば良い。

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2019/10/07

三田落語会「扇遊・吉坊」(2019/10/5)

第59回三田落語会・昼席「扇遊・吉坊」
日時:2019年10月5日(土)13時30分
会場:文化放送メディアプラスホール
<   番組   >
前座・金原亭乃ゝ香『牛ほめ』
入船亭扇遊『片棒』
桂吉坊『胴乱の幸助』
~仲入り~
桂吉坊『江戸荒物』
入船亭扇遊『小言幸兵衛』

三田落語会が会場を仏教伝道センターから文化放送に移してから、次回の前売りはチケットぴあでの扱いになっていたが、今回から元に戻して会場で購入できるようになった。仲入りで抽選で番号札を引き、終演後に番号に従ってチケット購入するという方式。これだと以前の様に長蛇の列を作る必要がなくなった。
昼席は東京のベテランと上方の若手という組み合わせ。

前座の金原亭乃ゝ香は夜席でも開口一番を務めていたが、昼夜通しのお客も多いなかでは前座は交代させた方が良い。

扇遊『片棒』
10月だっというのに気温が33℃に達したこの日の陽気は芸人泣かせだ。着物の選択に困るらしい。気候変動は落語家にも影響している。
扇遊は1席目は東京落語らしい演目を披露。ネタは聴かせ所の祭囃子の手捌きと口真似で沸かす。木遣りの一節も結構でした。

吉坊『胴乱の幸助』
落語の中には音曲の素養がないと出来ないネタがあるが、『胴乱の幸助』もその一つ。中盤で浄瑠璃『桂川連理柵(通称お半長)』の帯屋の段の冒頭部分を師匠が弟子に語って聞かせる場面があるので、ここは本物らしく義太夫が語れなくてはならない。腕に覚えがある吉坊は、ここを長めに語ってみせ拍手を浴びていた。
前半の男同士の偽喧嘩を幸助が仲裁する場面、中盤の「お半長」をめぐる幸助と義太夫の師匠や弟子とのヤリトリ、後半の京都の帯屋での番頭と幸助の会話、どれをとっても吉坊は完成度の高い高座を見せた。聴いていて幸助の人物像が目の前に浮かんでくる。
周囲で「上手かったね」「上手ねぇ」という声が聞こえたが、吉坊は初めてという人もいたようだ。
一時期、私の上司だった人が5か国語は辞書なしで読めるという才能の持ち主だったが、世間に疎い人だった。ある時TVを一緒の見ていたら、「てんちしんり、って誰?」と訊いてきた。画面には当時大流行りの「天地真理」の姿が。こういう人っているんだよね。

吉坊『江戸荒物』
東京落語に『金明竹』があるが、あれは上方の人には評判が良くないと。上方弁で口上を述べるのだ、東京の噺家だと上方弁とは異質なものと映るらしい。
このネタは『金明竹』をひっくり返した様な運びで、大阪の人間が江戸弁をしゃべるというもの。
東京産の瀬戸物が良く売れるというので、隠居に江戸弁を教えてもらった男が「東京荒物」の看板を掛けて商売を始めるが、教えて貰った江戸弁というのが「おう、阿魔、しばち(火鉢)にし(火)がねえじゃねえか。し(火)をもってきな。」などと怪しいもの。地元の客が来ても江戸弁は通じず、本物の江戸っ子が来ると江戸弁をまくしたてられて男の方が混乱し、タダで品物を売ってしまう始末。そこに田舎言葉丸出しの娘が縄を買いにくるが、店に縄が置いてない。そこで江戸弁で断ろうと、「縄はないます。ないます。」と言うと、娘は「あれ、今から縄のう(綯う)てたら間に合わんがのう。」 でサゲ。
こういう軽いネタを演じても吉坊は達者だ。

扇遊『小言幸兵衛』
珍しくサゲまで演じた。長屋の連中や豆腐屋、仕立て屋に対してあれほど小言を言ってた大家が、最後の鉄砲鍛冶の男には一方的に言われ通しになるというのが面白い。
扇遊らしいキッチリとした高座だったが、大事な所で言い間違えがあったのが残念。
少々お疲れに見えたが、気のせいかな。

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2019/10/06

喬太郎『真景累ヶ淵~宗悦殺し~』・他(2019/10/5)

第59回三田落語会・夜席「扇辰・喬太郎」
日時:2019年10月5日(土)18時
会場:文化放送メディアプラスホール
<   番組   >
前座・金原亭乃ゝ香『十徳』
柳家喬太郎『家見舞い』
入船亭扇辰『阿武松』
~仲入り~
入船亭扇辰『夢の酒』
柳家喬太郎『真景累ヶ淵~宗悦殺し~』

10月5日に行われた第59回三田落語会では昼夜両方の公演を鑑賞したが、夜席の感想を先に書く。
6日に恒例の「扇辰・喬太郎の会」が予定されていて、そちらでは毎回二人がネタ下ろしを口演することになっている。そのプレッシャーで頭が一杯で、二人とも心ここに非ずの心境だという。だからこちらの高座は「やっつけ仕事」だと宣言していた。
処が、過去の経験からいうと喬太郎はこういう日に限って熱演する事が多いので、どう「やっつける」のか楽しみだった。

喬太郎『家見舞い』
市販のCDにもこのネタは収められており、喬太郎の十八番の一つ。本来は二人の男が兄貴分の新築祝いに行き、お祝いに水甕を贈ることになるが金がない。瀬戸物屋で水甕を安く値切ろうとするが店員を怒らせて・・・という前段があるのだが、そこはカットし古道具屋の店先で肥甕を見つける所から噺に入った。
前半の古道具屋と男たちとの頓珍漢なヤリトリや、後半の甕の水を使った料理への男たちに反応を面白く聴かせていた。

扇辰『阿武松』
大相撲はスポーツじゃなくて興行だという扇辰の意見に賛成。ガチンコに拘っているから、今じゃ病人と怪我人だらけになっている。
いかにも扇辰らしい丁寧な高座だった。

扇辰『夢の酒』
こうした軽い洒落たネタというのは、軽く洒落て演じるのが正解だと思う。扇辰の所々に入る裏返ったような奇声はどうも感心しない。客をニヤリとさせる様なネタだと思うのだが。

喬太郎『真景累ヶ淵~宗悦殺し~』
根津七軒町にすむ按摩の皆川宗悦は、金貸し(江戸時代に盲人は金貸しを営むことが認められていた)で貯めた金で二人の娘を養っていた。
ある歳の暮れ、霙まじりの雪の中、小石川小日向服部坂に住む旗本の深見新左衛門宅に借金の取りたてに行く。なかなか返済しない新左衛門に対し、せめて利息分だけでも返してと迫る宗悦に、酒癖の悪い新左衛門は怒り脅すつもりで誤って宗悦を斬殺してしまう。死体は下男の三蔵に金をやり始末させて、そのまま下総の故郷に返してしまう。現場を見た新左衛門の妻は乱心し、按摩を呼んで針を打たせるが傷口が悪化し痛みで苦しむ日々が続く。そんななか総領息子の新五郎は家出する。、
翌歳の暮れの霙まじりの雪の夜、新左衛門は按摩を呼び肩の療治をさせるが、その按摩の顔がいつしか宗悦に。夢中で斬りかかると、相手は妻。乱心した新左衛門はやがて切腹、家は改易となる。

三遊亭圓朝作の「真景累ヶ淵」の発端で、これから宗悦と新左衛門をめぐる因縁話が複雑に絡まって物語が展開してゆく。
金銭の貸借をめぐる殺人事件というのは今も変わらない。そうした普遍性に加え、江戸末期になると武家は没落、商人や金融業者に金が集まり、それがやがては幕藩体制の崩壊へと進む。
この「宗悦殺し」は時代を暗示したものになっていて、物語後半への布石の仕方といい、非常に良くできている。
喬太郎の高座は冒頭から一気に客席を噺の世界に引き込み、終演まで息が詰まるような緊張感を与えていた。
このネタは今回が3度目になるかと思うが、その迫力においてこの日がベストだ。

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2019/10/03

「強盗」ならぬ「強贈」事件

近ごろは「強盗」ならぬ「強贈」事件というのがあるらしい。
犯人が金品を持ってきて、「これを受け取れ、さもないとタダじゃ済まないぞ」と脅して、無理やり置いていくそうだ。
怖いですね。
皆さんもいつ被害にあうかわからないので、十分に注意してください。
そんなバカなとお思いでしょうが、関西電力では実際に起きたそうですよ。
関電の言い分をそのまま信じるとすれば、事件の構図はこうなる。
・容疑者:福井県高浜町の元助役・森山栄治(故人)
・被害者:関西電力役員ら20名
・被害総額:約3億2千万円
なかには1億円もの金品を贈与された人も二人いた。1億円だぜ、そりゃ断わらないわな。
もっとも、無理やり強贈されたと主張しているのは被害者の方の言い分だけで、肝心の容疑者は亡くなっていて死人に口なしだから確かめようもない。
金品を渡すからには、当然見返りがあったと考えるのが自然だ。
何も見返りもなく、1億円もの金を渡すなんて、そんな茶人はいないさ。

原発を作ると立地の自治体に電力会社から交付金が支給される。この際、原発を受け入れに積極的役割を果たした人物はやがてフィクサーとなり、退職後も電力会社の関連会社や原発の工事会社などの役員に就任する。
発注側と受注側の両方に影響を及ぼすのだから、工事金額の水増しなんぞ思いのままだ。その水増し分を、フィクサーを通して電力会社の役員に還流させる。これで電力会社の役員と原発工事会社とはwin-winの関係になり、双方がハッピーになる。原資はどうせ国民から徴収した電力料金だから、気楽なもんだ。
こうした構図は、恐らくは他の電力会社でも起きているだろう。
この際、膿を全て出し切らせて、贈収賄事件として裁くべきだ。
検察よ、しっかりしてくれよ。

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