暴発
2月27日中津川市で起きた一家5人殺人事件は、小さな赤ちゃんまで犠牲になる大変痛ましい事件でした。
未だ全容は明らかになっていませんが、今のところ父親である介護施設の事務長が、自分の血族である家族を皆殺しにし、自殺を図ったと見られています。しかも飼い犬まで殺すという徹底ぶりです。
この男性は、普段は温厚な性格で、警察犬の訓練士もしていて、人望を集めていたようです。
確かに写真や、以前撮影されたビデオで見ても、その人柄が偲ばれます。
動機の解明はこれからですが、一種の暴発であることは先ず間違いないでしょう。
暴発による事件は、少年や若者だけではなさそうです。
少し前に起きた寝屋川市の17歳少年による小学校教師殺傷事件も不可解なものでした。
小学校時代の担任教師2人を殺し、自殺するつもりだったと供述しているようですが、なぜそう思ったかは分からないと言っているようです。
恐らく、この容疑者二人とも犯行に及んだ動機が、自分でも説明がつかないと思われます。
話は飛びますが、元禄14年江戸城中で、赤穂藩主である浅野内匠頭が吉良上野介に刃傷に及んだ事件が起こりました。世に云う『赤穂浪士』あるいは『忠臣蔵』の発端ですね。
この事件も私は一種の暴発と見ています。
先ず、浅野が吉良の下で勅使接待役を勤めたのは2回目であったことです。しかもこの2回目のときは、吉良自身が浅野を指名したもので、むしろもう一人の初めて接待役を勤める大名に対する指導役を期待していたのです。
又、刃傷事件は勅使接待の最終日のしかも午後で、もう間も無く終了のベルがなる直前ですから、なぜあのタイミングで切りかかったのか、理解に苦しみます。
ですから事件後の幕府の取調べでも、浅野内匠頭は犯行の動機を説明していないのです。
これも暴発としか考えられません。
ただこの事件の場合、気の毒なのは吉良上野介です。
当時、将軍綱吉からの信頼も厚く、又地元領民からは名君として慕われていた人物です。
一方的に切り付けられ、しかも本来は加害者である浅野側の家来たちにより、これ又一方的に押し入られたうえ殺害され、さらに抵抗が不十分であったとの理由でお家も取り潰しにあい、正に踏んだり蹴ったりです。
挙句のはて、現在に至るまで悪人扱いされているのですから、吉良上野介は、一人の思慮を欠いた大名が起こした暴発事件の、最大の被害者と言って良いでしょう。
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