「国際化」は、何をもたらしたか
ここ十数年、耳にタコができるほど毎日のように聞かされてるキーワードで、“国際化”という言葉があります。
時に大きな政策決定も、この一言で説明されてしまい、まるで水戸黄門の印籠のような権威を持っています。
国際化の定義は辞書によると、「国際的なものになること。世界に通用するようになること。」だそうです。お分かりになりましたか?
海外旅行が趣味で、渡航した国は30を越えますが、国によって政治体制も法律も経済も文化も風俗も、実にまちまちです。私たちは、こうしたお互いの国の違いを認めながら、各国と共存しています。だから国際化といっても、その基準が分からない。
そこに一人、俺だけが正義だ、俺だけが正しい、俺が法律だ、だからみんな俺の言う通りにしろ、という人が現れたらどうしますか。普通は無視(シカト)ですね。そうです、仰せの通りです、これからは何でもあなたに合わせましょうというのが、現在の日米関係です。先程の辞書の定義でいえば、「アメリカ的なものになること、アメリカに通用するようになること」と言われれば、“国際化”は実に分かり易い。
先日、外務省OBで外交評論家の岡崎久彦氏がTVで、“とにかく、アメリカの言う通りにしていれば、間違いはない”と言ってましたが、端的に“国際化”の本質をついています。
小泉総理が、郵政民営化を急ぐ背景、最大の理由も、この“国際化”に関係しているようです。米国大統領選挙前の昨年9月に、日米首脳会談が行われました。その際に、冒頭ブッシュ大統領は「郵政民営化はどうなっているか」と問い質し、これに対し小泉総理は「自民党内にはいろいろな意見があるが、政府としては郵政民営化の方針を決めた。」と答えて、ブッシュは「小泉首相の姿勢を高く評価する」と述べたそうです。
もう一つ、G7でスノー米財務長官が谷垣財務大臣に対し、簡易保険の民営化の実現について念を押し、谷垣大臣は、これは小泉政権の方針であることを説明しました。
ブッシュ陣営の支持団体に全米保険業界があり、以前から日本の保険市場への進出をブッシュに陳情していました。百兆円を越える簡易保険の民営化は、米国保険業界にとっては大きな魅力です。
こうして、郵政民営化は日本国内の問題ではなく、日米間の重要テーマとなりました。ブッシュは、選挙公約である郵政民営化の実現はどうしても譲れませんし、小泉総理は何が何でもブッシュとの約束を守る必要があります。郵政民営化によって、日本の国民生活がどうなるかなどという議論は、小泉政権にとっては最早どうでも良いことになりました。
2001年に小泉政権が誕生し、当初は数々のコイズミ語録で世間から喝采を浴びました。その後も人気は衰えず、歴代総理の中では高い支持率を保っています。
しかし、4年間の実績はとなると、何があったか余り思い浮かびません。
郵政民営化を急ぐ背景には、総理在任中に何かしら後世に残るような実績を残したいという、小泉氏の功名心も働いているようです。
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国際化=アメリカ化又はアメリカ追随でないのは言うまでもありません。
しかし、日本人が長い間旨としてきた「沈黙は金」「以心伝心」「都合の悪い時は笑って誤魔化す」が国際化の方向ではないでしょう。
少なくとも、事実を冷静且つ正確に把握し、その事実を基に自分なりの見解をまとめ、その見解を相手に理解され易い形で論理的に表現し、アピールし、相手の理解、了解、賛同を得る。
このプロセスは個人対個人であれ、団体対団体であれ、国対国であれ全部同じではないでしょうか?
こう考えれば国内社会で生きてゆく事と国際社会で生き残って行くことにはほぼ同じ能力が必要とされるのでは・・・・?
この為には、価値判断、良否の基準もおのずと相手に近いものが求められるのかも知れません。
生まれ育った環境も考え方も場合によっては宗教も違った外国の人を相手にこのような理性的な活動が出来る人が国際人、同様の活動を上手にやり更にその活動を通して商売が上手に出来る会社が国際化された企業ではないでしょうか。
国と国の場合も然りでしょう。
この辺をしっかりと整理した上で国際化のもたらすものについて議論をしたいと思います。
投稿: タケチャンマン | 2005/04/18 14:03
TB感謝致します。
国際化。
おっしゃるように、日本の場合は、
もう完全なアメリカナイズですね。
当然、アメリカにも良い面はたくさんあります。
しかし、今、日本で進行しているのは、
アメリカによる日本への<搾取>です。
その使い走りが、例えば、竹中氏です。
彼はアメリカのコンテンポラリーな経済学から見ても<遅れた経済学>者なんですが。
そのあたりの辻褄合わせがブッシュへの公約である郵政民営化に顕著にでていますよね。
投稿: devoe | 2005/04/19 01:35
タケチャンマン様
国家も国民も企業も、国際化は必要です。現在中国で起きている問題にどう対処するかは、まさしく国際感覚が試されるでしょう。
しかし、この記事で論じている「国際化」(カッコ付き)を唱える人たちは、太平洋の向こう側にしか、眼がいっていません。
特に小泉内閣になってからの、米国一辺倒は眼に余ります。
投稿: home-9 | 2005/04/19 11:19