脱線事故は、JR西日本の企業犯罪
JR福知山線の脱線事故は、真相が明らかになるにつれ、JR西日本の企業犯罪であることがはっきりしてきました。
先ず最初に問題になるのは、企業の隠蔽体質です。JR西日本は今回の事故について、当初踏み切り事故と発表しました。それを脱線事故として公表したのは、事故後5時間経ってからです。あの現場を見れば、誰でも単なる踏み切り事故とは思えないはずです。
次に原因が置石だと、記者会見で盛んに強調していました。事故原因は、警察や調査委員会が調べることであって、発生当事者が決めることではありません。
最後は、高見運転手の処分暦を積極的に公表し、運転手個人の不注意に全ての責任を押し付けようとしたことがミエミエでした。
そして最大問題点は、JR西日本の安全軽視の企業姿勢です。
JR西日本では、ミスをした運転手に、“日勤教育”というペナルティを課していました。列車の遅れを出した運転手に再教育するという名目で、草むしりや窓拭き、ペンキ塗りまでさせるという、教育というよりは見せしめです。その期間は、上司の裁量で決められるため、本人としてはいつ終わるのか分からず、不安に陥ります。もちろん給料や賞与、昇格まですべての待遇に影響し、繰り返せば運転手を辞めさせられます。
この話、昔どこかで聞いたようなと、ふと思い出しましたが、国鉄からJRに変わるときに、旧国労組合員に対して行った仕打ちとそっくりです。JR西日本も、あの時の体質が、そのまま定着してしまったのでしょうか。
こうした日勤教育を苦に自殺した44歳の運転手がおられて、自殺原因が会社のいじめにあったとして、現在父親が裁判を起こしています。この運転手がなぜ日勤教育を受けさせられてかというと、折り返し運転の京都駅で、安全確認に手間取って“50秒”の遅れを出したためだそうです。50秒ですよ。
こうした実例を見せつけられれば、誰しも安全より時間厳守を優先します。
JR西日本の安全軽視と隠蔽体質は、表裏一体であり、まさに企業ぐるみ犯罪といえます。
安全について、もう一つ気になる記事がありました。死傷者3名以上の重大労災の件数が、この20年間で倍増したとの報道です。原因として、熟練労働者から若い人への、知識や経験の継承がなされていないことが指摘されています。
この時期、日本の大半の企業は、社会的使命をかなぐり捨てて、利潤と効率追求だけに注力してきました。
実績主義、成績主義の給与体系と、高齢者への退職強要のツケが、こうして回ってきたものと考えます。
私たちは、今回の悲惨な事故を教訓に、世の中や企業のあり方を、いま一度考え直してゆく必要があるでしょう。
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これは、乗客との間にそういう契約があるはずです。
しかし、JR西日本は全くそういう義務を果たしていません。
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刑事訴訟法
第339条 左の場合には、決定で公訴を棄却しなければならない。
第271条第2項の規定により公訴の提起がその効力を失つたとき。
... [続きを読む]
トラックバックありがとうございました。
ほんとに今回の事件は胸が痛みました。「日本でもこんな事がおこるんだ」と思いました。二度とこのようなことがないように努めてほしいものです。
投稿: マチャ彦 | 2005/04/29 16:21
TBありがとうございました。
まさしく今回の事故は、JR西日本の犯罪だと思いますね。厳しく取り締まってほしいものです。
投稿: タキオン | 2005/04/29 16:30
福知山線の脱線事故を契機に列車の運行に遅れを生じさせた運転手の教育のあり方が大きな問題になりそうな気配です。
これはJR西日本だけでなく日本のほぼ全ての企業、教育現場に波及させるべき問題ではないでしょうか?
遅れの原因を科学的に分析し、その結果運転手の技能、メンタリティー等に問題があるのなら、それを取り除くあるいは解消する為の教育や訓練をする、これは必要な事です。
しかし草むしり、ペンキ塗りなどでミスの原因が改善されるのでしょうか。
教育と脅し、見せしめ、辱めは違います。
このようなペナルティーで運転手を責めれば、何か起こっても隠蔽しよう、虚偽報告で誤魔化そう、となるのが人間の自然な心理です。
しかし、これでは事象の改善に繋がるとは思えません。
こんなことを考えているうちに日本の教育現場にも同様な問題があるのではないかと思い始めました。
教師が感情にかられて生徒に手を上げる、こんな体罰は許されることではありません。
しかし、教師が生徒を叱ることは必要です。効果のある叱り方も必要です。また叱る場合には何故叱るのかを明確にする必要もあります。
ただ叱るだけでなく、今後どうすべきか、進路も示す必要があります。
叱る、教育する、育てる、日本人全体がもう一度考え直してみる必要がある課題かも知れません。
投稿: タケチャンマン | 2005/04/29 17:02
TBありがとうございました。
服部運転士のことですが、「3日で18枚ものレポートを書かされて自殺」という報道ですが、正直「そんなことで死ぬか?」という疑問が沸き起こります。
給料上げろ、で電車を止めてしまう力をかつて持っていた労働組合があって、裁判にもなっていて、今まで大きな問題として提示されていないというのは、そちらの方が違和感を感じるのですが・・・。
投稿: はたひら | 2005/04/30 12:43
コメント有難うございます。
国鉄ストが続いた時は、通勤で随分と迷惑を被りましたが、今では懐かしいですね。
企業では労組が、国会では野党が、国際社会では米国に対抗する国が、すっかり力を失ってしまいました。
何事も会社の言いなり、与党の言いなり、アメリカの言いなりという世の中、これで良いのでしょうか。
こういう”一人勝ち”社会は、いずれ大きな歪みを生むだろうと思います。
私は、均衡が進歩を生み出すと考えています。
投稿: home-9 | 2005/04/30 18:18
先日の転覆脱線事故原因究明の過程で国土交通省などから過密ダイヤが運転士にプレッシャーを与え、このプレッシャーが虚偽の報告を誘導し・・・・云々という見解が出され始めた。
これを受けてJR西日本の安全推進部長などが次回のダイヤ改正で過密ダイヤ解消も検討の対象にすると、列車の本数を減らす検討が必要と言い出した。
しかし、これは誤りではないだろうか?
列車が3~4分間隔で次から次へと駅に到着すれば、各々の列車がダイヤ通りなのか遅れているのかは問題ではなくなる。
乗客はとにかく来た列車に乗れば良い。
ところが列車の間隔が仮に8~10分に1本の間隔で運転されるようなダイヤになったとしよう。乗客は1分到着が遅れても問題視して騒ぐのではないだろうか?
どちらが運転士に与えるプレッシャーが高いのだろうか?
自明の理ではないだろうか?
むしろ、大都市周辺では大量輸送を実現する為に過密ダイヤは前提と考え、過密ダイヤをストレスなく実現すべくATC、その他の安全機器の充実や運転要員の配置を行った方が正解と思うが・・・・!
投稿: タケチャンマン | 2005/05/01 07:28
はじめまして。トラックバックさせて頂きました。
私は、日勤教育そのものについては賛成ですし、JR西日本が社是として5秒、10秒の短縮に拘る事を内外に公表している以上、如何なる遅延についても情報収集や再発防止に努めるのは当然だと思っています。尤も、その日勤教育が遅延防止に役立つものでなければ、その内容については改善すべきでしょうが。
但し、所論の「JR西日本の企業犯罪である」という意見には、全面的に賛成致します。問題は、その企業犯罪を裁くべき刑法がない為、事故の刑事責任が専ら末端のみに押し付けられてしまう事です。昨今のJALや今回の事故を見るに付け、企業だけでなくその経営者にも死刑を含む厳罰を科せる立法こそが必要ではないか、私はそう思っています。
投稿: ひな | 2005/05/02 14:03
初めまして。かつて、国鉄時代に三河島事故という160人が亡くなる大惨事がありました。運転士が逮捕され裁判になったのですが、その時の最高裁判決があります。「人間の不注意を責めるのは比較的容易である。しかし人間の注意力やとっさの判断力を過信することは、事故対策としては究極的な解決にはあまり役立たないであろう。………むしろ保安部門が国鉄という公共企業体の根幹となり、他の部門に優越する地位が与えられるよう基本方針の転換を図ることが急務であり、それとともに現場職員が物心両面にわたって優遇されることが是非とも必要である」
この判決を今読んで考えたことは、今のJRは、この判決とは全く逆のことをやっていたと言うことです。規制緩和、市場原理、効率化・・などが社会の隅々まで染み渡っていますが、安全とは全て相容れないのものでは。そもそも、国鉄の民営化とそれを推進した労働組合の幹部の腐敗が107名を殺したのではと考えています。
投稿: スクラム | 2005/05/05 17:51