”小皇帝”都知事の綻び(その2)
石原慎太郎という人は、考えてみれば、不思議な人です。
国会議員時代から、選挙は常に圧勝。現在でも都知事としての支持率は、非常に高い。でも、国会議員を長くやっていた割には、実績らしい実績は、思い浮かびません。
都知事としての実績はどうでしょうか。就任して先ずぶち上げた政策で、今思いつくのは米軍横田基地の返還、大手銀行への外形標準課税、そしてお台場カジノです。当初は、とてもセンセーショナルで新鮮に映り、マスコミも好意的に報道していました。
この内、銀行への課税については、既に東京地裁、高裁ともに、東京都側が敗訴しています。
法人はそれまでは利益に課税していたものを、大手銀行に限って利益に関係なく、事業規模に対して課税するというものです。
銀行から沢山税金を取るんだから、いいじゃん、という反応が多かったようですが、こうした税制の改定が、なんの相談も了解もなくやられたら、たまったものではありません。自分に対して行われるとしたら、誰でも反対するでしょう。
判決では、石原知事に対して、「政府や銀行側の意見を虚心坦懐(たんかい)に聴けば、違法性を認識できた」と、厳しく批判しています。また、都職員の責任については、「立法資料の調査や、知事や議会への正確な情報提供を怠り、重過失に近い」と指摘しています。
まあ、都の幹部も、知事の命令で強制的にやらされたんでしょうが。
お台場カジノは、どうなったんでしょうか。
この件は、2003年6月の定例会見で、港区・お台場に開設する予定だった「カジノ実験場」を断念することを明らかにしています。現行法上は、カジノは賭博と見なされ、景品提供ができないためです。
会見で、「やっぱり無理ですな、国の頭が固すぎて。やっても刺激のあるものにならない。人間は、当たったら最後にはお金が返ってこないと満足しない。それを合法化しないと」と、発言しています。
「国のアタマではなく、都知事のアタマに問題があるのでは」と、ツッコミを入れたくなりますが。
カジノなど作っても、東京都のフトコロが多少豊かになる反面、ギャンブルによる生活破綻者が確実に増えると思いますので、断念が正解なのでしょう。
横田基地返還にいたっては、もしかすると知事本人も、発言したことさえ忘れているかも知れません。
石原氏が、都知事就任当時にぶち上げた構想は、大半が実現していません。
実現したのは、都内の高級ホテルの宿泊費に、50円だか100円だかの税金をかける、ホテル税ぐらいでしょうか。ワタシ的には、残念ながら、都内高級ホテルを利用しようにも、相手がいない(トホホ・・)ので、カカワリないことですが。
こうした、石原都知事に対する評価としては、ずっと石原氏の動向を追っているノンフィクション作家、佐野眞一氏が雑誌に、「彼は公約を達成していないことについてはなんとも思っていないでしょうね。達成しようなんて気はないですよ。彼のベースになっているのは自己顕示欲ですから、結果より注目度なのです。」と書いていたのが印象的でした。
ウン、実に分かり易い。
では、都議会のチェック機能は、働いているのでしょうか。
この点では、2003年ですが、都議会民主党幹事長(当時)の田中良氏の、次の発言があります。
「厳しい質問をすると、間髪を入れずに側近から電話があって、“なんでそんな質問するんだ”、“そんなことならお前たちの会派をぶっ潰してやるぞ”というような、通常考えられない反応をする。」
「味方でないと彼らが勝手に判断すると、復讐的なことを平気で口にしたり、やってきたりする。」
「“石原の支持を表明しないでずっと野党のままでいいのか”とか、“野党でいるということは共産党以下に扱うということだぞ”とかいう脅かし方をする。」
オー、コワ。都庁って、何だか暴力団みたいな世界なんですね。
こちらも2003年ですが、先程の佐野眞一氏の発言は、今日の浜渦副知事問題を、既に予感させます。
「石原さんは、男気があるとかいう性格ではありません。連載にも書いていますが、非常に粘着質で女々しい部分が多々あります、怖がりだし、弱虫だと思います。それで汚れ仕事は、浜渦副知事や秘書たちにやらせているのです。彼の周りがおそらく親分に認められたいということで、意を体してやっているのでしょう」
小皇帝が、「裸の王様」になりつつあります。
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