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2005/05/07

JR西日本の事故を再考する

JR2
4月29日のこのブログで、今回のJR西日本の事故は企業体質によるということ、その背景として日本の多くの企業が実施している成果主義と、リストラへの脅威を上げました。
JR西日本社員の数々の不祥事が、その後に明らかになりました。でも我が身を省みて、その社員たちの行動を批判できるサラリーマンが、どの位いるでしょうか。事故を連絡しても直ぐに出社しろと言われたら、事故は知っていたが、職場のボウリングやゴルフ大会に参加しろと言われたら、あなたならキッパリ断れますか。出勤時間に遅れたり、従業員の行事に参加しないと査定に響きますよ。

能力主義、成果(業績)主義が導入されて以来、大半の従業員は成果は貪欲に追い求めますが、成果につながらないことは手を出さないようになりました。当然ですよね。でも企業活動というのは、個人の成果に還元できない多くの業務があります。JR西日本の運転手の場合推測ですが、安全運転は当たり前、それより運転時間を守ることが最大の査定基準ではなかったのでしょうか。

成果主義、体験されていない方もおられると思いますので、簡単に解説します。企業によってやり方は異なりますが、大体こんな方法をとっています。
原理は、学校の通信表と同じです。記号は各社で異なりますが、要は社員の成績を「5・4・3・2・1」に振り分けて評定します。この際学校と違うのは、目標(計画)に対する成果(業績)によって、査定が行われることです。

年度の初めに、向こう半年または1年間の目標を上司と共に計画します。この中には中心課題というのがあって、これが全体の50%くらいの比重を占めます。例えば営業マンなら売上と利益目標を数字でたてます。次に、この目標を実現するための方策を立案します。顧客別や商品別、テリトリー別に分けて、具体的な行動計画を作ります。
さて半年又は1年経過後、この成果をまとめます。売上、利益目標に対して、一例ですが評定は次のように振り分けられます。
5:120%以上達成、4:105%以上達成、3:95-105%達成、2:95%未満、1:80%未満、
こうして、その他の成果や本人の向上心、協調性などを含めて全体を評価し、考課を決めます。通常直属の課長が第一次考課、部長が第二次考課を行いますが、更に担当役員の決済や人事部での全社的な調整が行われ、最終的に本人に対する査定が決まります。
この査定結果が、給与、ボーナス、昇格・昇進全てに反映されます。査定が4以上でないと、昇格・昇進ができませんし、給料も殆ど上がりません。
反対に2や1がつけば、リストラになった時に、真っ先に退職勧告(肩たたき)のターゲットにされます。
まさに査定は、従業員の生殺与奪を握っているのです。

では、査定は客観的、公平に行われるのでしょうか。それは、NO!です。
査定する管理職には、人事から別に手引書が配られ、そこにその年の査定方法が詳しく指示されています。
先ず、査定は絶対評価とされていますが、それが違う。
先程の5から1の評定について、各々の比率が示されます。例えば、3は40%、2と4は各20%、1と5は各10%というような割合が指定されます。もし部下の全員が目標を120%以上達成した場合、本来は全員が5ということになりますが、実際にはそうならない。
元々成果主義は、人件費総額の抑制を目的としているのですから、考えてみれば当たり前ですね。

その他にも昇格・昇進対象者に対する考課方法、学歴や入社年次による考課のガイドライン、女子事務職には4以上つけられないなどといった、細かな指示が書かれています。社員によっては、口頭で指示がきます。文書で残すと、法律違反になるからです。
逆らえば、査定者として失格の烙印が押されかねません。
部下が、自分の上司のお気に入りであったり、役員と特別の間柄であれば、それも考課に反映されます。なぜなら自分自身も、その上司から査定を受けるからです。
こうしたモロモロの条件を考慮する結果、実際の査定はそうとう主観的な、もっといえば上司の意のままの査定が行われます。
これが、成果主義の実態です。
成果主義の導入により、従業員全体が上役の顔ばかり見て仕事をするようになります。

成果主義の弊害は、あちこちに現れており、既に企業によっては成果主義を見直したり、廃止するケースも出始めています。
ここ数年、雪印、三菱自動車、三井物産などという伝統あるトップクラスの大企業に、次々と不祥事が起きました。
今回のJR西日本の大事故は、企業の社会的責任感なき利潤追求と成果主義に、大きな疑問を投げかけたと思います。

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コメント

JR西日本の事故関連の不祥事には呆れるばかりです。
事故車両にたまたま乗っていた運転士が救護活動をせずに出勤、事故当日に事故の事実を知りながらボーリング大会、その後に宴会。
社員のモラル、会社の体質に呆れるという報道が盛んになされ、私も同感です。
しかし私が呆れるのは、危機管理の原点とも言える、事故発生時の各社員の対処方法についてマニアル化されていなかったように見えることです。
交通運輸会社である限り事故の発生防止には全力を挙げるにしても、事故発生という事態は容易に想定される範囲ではないでしょうか。
最近、全ての企業で危機管理の重要性、危機管理マニアルの充実が叫ばれているにもかかわらず事故車両に乗り合わせた社員は乗客の救護と会社への事故発生の連絡を第一に行動する、こんな簡単なことが事前にマニアル化され、教育されていなかったのでしょうか?
それとも教育はされていたが「気が動転して忘れた」のでしょうか?
事故は直接関係する社員だけに任せ、他の社員は傍観せよとでも規定され、教育されていたのでしょうか?

T/B お礼申し上げます。
 
 良い記事拝見しました。事故・事件の批評は誰にでも可能でしょう。貴サイトの記事の如く掘り下げた記事を「ブログ」の本来の目的と思います。

今後共に良い記事期待します。

担当 森岡

コメント有難うございます。
今回のJR西日本の事故とその後の推移を見ますと、社会的責任を放棄して、企業は利潤追求に走り、従業員は保身に汲々としているかの印象を受けます。
今回の記事は、こうした現象が起こる仕組み、背景を考えてみました。
いささか牽強付会の傾きがありますが、ご参考になれば幸いです。

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