プール天井落下は人災
8月16日の宮城地震で、仙台市で竣工したばかりのスポーツ施設“スポパーク松森”で、プールの天井が落下し多数の負傷者が出ました。
最初にこのニュースを聞いた時、“ふれ止め”のことが、最初に頭をかすめました。案の定、その後の国土交通省の調査で、天井を吊るすワイヤに、揺れを抑える“ふれ止め”が、取り付けられていないことが判明しました。
今回のスポーツ施設に限らず、広い面積の室内の天井は、通常吊り天井となっています。屋根のハリなどから吊りボルトやワイヤをぶら下げて、その下に金具と取り付け、更にその金具に天井板を固定するという工法です。
吊りボルトと金具を付けた状態のイメージは、沢山の小さなブランコを屋根から下げたと想像してください。このままですと地震などの揺れで、吊りボルトと金具も揺れてしまい、後から取り付けた天井板が落下する恐れがあります。
そこで、吊るした吊りボルト同士を連結して揺れないようにする、これが“ふれ止め”です。
通常の吊り天井でも、取り付けられており、ましてやスポーツ施設のような広大な面積と、天井高さが高い施設では、当然取り付けるべきものです。
国土交通省は、過去の地震の教訓から、“ふれ止め”を取り付けるよう通達を出していたようですが、これが徹底していなかったようです。
施設工事の仕様書には、“ふれ止め”が盛り込まれていて、設計者と施工業者(ゼネコン)は付けた筈だと言っているようですが、付いていなかった。
これは想像ですが、天井など内装工事は、通常ゼネコンの下(孫)請けが行いますので、工事業者が手抜きをし、ゼネコンも見落としたのか、あるいは了承していたのか、その辺りが真相だと思います。
建築工事というのは、設計、施工、監理により成り立っていて、これらは本来独立した存在として、相互にチェック機能を果たしている筈なのです。処が我が国では、圧倒的にゼネコンの力が強い。特に工事の監理、これは工事が設計仕様書の通り行われているかをチェックする、大事な機能なのですが、この工事監理は、実際にはゼネコンの息のかかった会社が行っています。従って、本来のチェック機能を果たしていません。ここが日本の建築業界の、最大の問題点といって良いでしょう。
手抜き工事や欠陥住宅が度々話題になりますが、一番の原因は工事監理が有名無実になっていることです。
国土交通省も、勿論こうした実態は承知していますが、この役所もゼネコン丸抱えに近い。毎年多数のOBが、ゼネコンに天下りしてますので、文句が言えない仕組みになっています。
こうした関係は、厚生労働省と製薬会社、財務省と銀行・証券会社、防衛庁と機械メーカーなど、殆どの省
庁に見られます。
小泉首相は、目下郵政民営化にだけ邁進していますが、私はもっと国民生活に係わりの深い改革こそ、優先すべきだと思います。
| 固定リンク
「ニュース」カテゴリの記事
- 安倍晋三元首相への国会の追悼演説の人選(2022.07.28)
- 派閥の長が統一協会票を割り振っていた(2022.07.21)
- やはりあの「宗教団体」の名が(2022.07.10)
- 安倍元総理が銃撃され死亡(2022.07.09)
- 竹田恒泰の全面敗訴(2022.05.09)
コメント
はじめまして
鈴風ともうします
トラックバック、ありがとうございます
おかげさまで
事件の背景について
より詳しいことを知ることができました
相互にチェック機能が果たされていれば
発生しなかった可能性が
十分に高いだけに
今回の事故(むしろ傷害?殺人未遂?)は
残念です
投稿: 鈴風つかさ | 2005/08/19 10:26
TBありがとうございます。
ものづくりの観点から、誰一人として気づかなかった(気づいてももみ消された可能性は捨てきれませんが)と言うことは非常に残念な事でしたね。
今回は天井で済みましたけど、これが建物本体へとならぬよう祈るばかりです。
投稿: KANAtaylfc | 2005/08/19 10:45
はじめまして。
宮城県は、内陸、海上とも大きな地震の多い所です。こうした場所でなぜ、肝心な検査がないがしろにされたのか・・・
>これは想像ですが、天井など内装工事は、通常ゼネコンの下(孫)請けが行いますので、工事業者が手抜きをし、ゼネコンも見落としたのか、あるいは了承していたのか
東海地震の脅威とともに、浜岡原子力発電所に対する世論が沸騰していましたが、宮城県沖地震に対する、東北電力女川原子力発電所への莫大な経費を要する改修工事という話は、全く聞いていません。
この辺が、真相かも。
投稿: U-1 | 2005/08/19 11:41
役所の建築主事より確認が下りた以上は、施工業者の責任だと思います。一般住宅でよくあるような、費用・納期等の関係かもしれませんが、検査の段階でうまくごまかしたのでしょう。それにしても致命的な手抜き工事ですね。一般住宅であれば、設計会社の工事課は、幾つかの区画を兼ねて監督しているので、詳細までのチェックは難しいかもしれません。また、この建物が工場であれば、建築に熟知した施主からもっと厳しいチェックが入ったかもしれないと思いますが・・・永続的な建築管理の担当専任の少ない業界(新しい物件に着手した方が利益が大きい)なので、施主側が泣き寝入りする時代は、昔からちっとも変わりませんね。
投稿: うさぎ | 2005/08/19 11:43
こんばんは。
トラックバックを読ませて頂き、やっと読めてきたようなきがします。
一旦引渡しされると、なかなかチェックを入れにくい天井裏。
国土交通省の調査結果が見ものですが、こういう場合、やはり施工会社の立場が問われるように思います。
投稿: うさぎ | 2005/08/19 21:30
鈴風つかさ様
KANAtaylfc様
U-1様
うさぎ様X2
皆様からのコメント、有難うございます。
皆様からの気付きを含めて、次回のニューエントリーで再度このテーマの続きを、書く予定にしています。
投稿: home-9 | 2005/08/19 22:44