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2005/08/20

「手抜き工事」は続くよ、どこまでも

kitagawa
前回の記事で、宮城地震により仙台で起きたプール天井落下事故は、原因が「ふれ止め」の“手抜き工事”にあると推定しました。又、こうした問題が起きる要因として、工事監理の機能が働いていないことを指摘しました。これらの点を、もう少し詳細に見てゆきたいと思います。

日本の建物は、いろいろな決まり事が建築基準法という法律によって定められています。ただし建築基準法はその第1条に「建物の最低の基準を定める法律である」とあるように、最低基準しか定めていません。処が、その最低基準さえ守られていないのが現状です。
私たちが家を建てる(施主)場合、工事監理者を選定し届け出る必要がありますが、実際にはハウスメーカーや工務店が勝手に選定してしまう。マンションやビルの場合は、ゼネコンが工事監理者を決めています。工事監理者は、文字通り工事を監理し、仕様や図面通りに工事が行われているかをチェックする役割があるのですが、施工業者が決めている現状では、当然こうした機能は期待できません。

建築基準法では、建物が出来上がったときに、建築主が「工事完了届け」を行政に提出することになっています。行政は「完了届け」を受理した後に、完了検査を行い、合格した建物に「検査済証」を発行しています。今回の吊り天井のように、工事完了後は内部は見えないですから、仮に図面と違った工事が行われていても、完工検査でも分からないのです。
このように、吊り天井工事で“手抜き”が行われたとしても、現状では工事の当事者以外誰も分かりません。

もう一つの要因は、工事の発注形態があげられます。今回のような公共工事の場合、役所はゼネコンに工事を発注します。建物は実に多くの職種が関わります。室内工事を例にとれば、ゼネコンは先ず下請けの内装工事会社に発注します。次に下請けは、軽鉄(今回の吊り天井の金具工事を行う業者)、ボード貼り、クロス貼り、塗装などの各業者を孫請けとして発注します。
例を単純化しますが、この時にゼネコンが1億円で受注していれば下請けには8千万円で、下請けから孫請けには6400万円で、発注がきます。つまり利益は上から取ってゆく仕組みです。
最近のように談合が難しくなり、競争入札で予算が厳しくなって、仮にゼネコンが8千万円で受注すれば、孫請けの金額は5120万円となります。
前の例に比べて、1280万円もコストを下げられない、どうするか、どこかで“手抜き”するしかない。どうせ誰も分からないし。今回の件でも、地震さえなければ、明るみに出ることはないですから。

「何だ、ゼネコンばかり良い思いをしてる」、とお考えの向きもあるでしょう。そうではありません。
先ず政治家に多額の献金をして、見返りに工事予算を獲得して貰います。
国土交通省や地方自治体から沢山の“天下り”を受け入れて、見返りに受注を増やして貰います。
大学の建築学部の先生方に研究費を出して、イザという時に、会社に有利なデータを出して貰います。
こうした、営業経費を、ゼネコンは負担しています。
ですから、立派に”社会貢献”をしているのです。

一番問題なのは、こうした仕組み構図を十分把握している国土交通省が、何ら対策を講じないまま、放置していることです。こうした問題こそ、構造改革が必要なのです。
これからも、“手抜き工事”“欠陥住宅”は絶対に無くならない、私は断言します。

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コメント

TBありがとうございます。

そうなんですか~。

恐るべし手抜き工事ですね。

そのしっぺ返しは図り知れない位の

損害賠償が来る事でしょうから

この工事を担当した会社は先が無いかも

知れませんね。

おぉ~こわっ!

投稿: nandemogozare | 2005/08/20 08:38

トラックバックありがとうございます。
これは建築業界の悪いしきたりですね。
良い思いをしているのは政治家で、一番痛い目に合うのは私達。
手抜き工事のせいで怪我したり、亡くなったりしたら、やりきれません。
こういう事は、二度と起こして欲しくないんですけどね・・・。

投稿: yuki | 2005/08/20 09:40

おはようございます。

一般住宅には違法建築がはびこっていますが、壁や天井裏の細工は、「検査」が完了してから、あらわにするケースが多いみたいです。検査が完了すると、ヒミツの通路やヒミツの部屋をオープンして、無かったはずの空間をあらわにする手法を知っています。ただ、このケースは、施主の要望を適えたまでのことですが・・・。

高さ制限の上、三層が禁じられている住宅街に2層プラス屋根裏部屋を作っておき、検査が済んでから狭い収納庫のように見せかけていた3階の空間を、どうどうと部屋として使い始める。(ロフト以上に天井は高い)
こういう現場をみたことがあります。
3層を禁じられている住宅街の物件では、天井裏にかなり細工を施しているようです。

違法建築といっても、それは施主や業者やそれに関わる色々な人が口裏を合わせているケースが多いと思います。
「検査」さえ通ればもうけもの~なんていうケースです。いいかげんなものですね!!

またまた、話が反れてしまったっけ?反れまくりですみませ~ん。

投稿: うさぎ | 2005/08/20 09:57

まったく、おっしゃる通りだと思います。
今やっている郵政民営化にしてもゼネコンと同じ構造を作り出そうとしているだけです。民営化そのものは大いに議論してしかるべきで、正しい形であれば民営化すべきでしょう。

一見この話題とは関係なさそうに見える記事ですが私のブログからトラックバックを遅らせてください(^^ゞ

投稿: とほほ | 2005/08/20 09:59

> 一般住宅には違法建築がはびこっていますが、壁や天井裏の細工は、「検査」が完了してから、あらわにするケースが多いみたいです。

こう言うことは常識のようになってますよね(^^;

「あれ、ここには玄関テラスが付くって話しだけどないじゃない」
「あー、大丈夫です、検査が終ってから取り付けることになってます」

なんて(^^;

ただ、うちの地方の場合は都市計画法に抵抗した形での違法建築が多いのですよね。セットバックを守らないだとか、、、。

投稿: とほほ | 2005/08/20 10:08

nandemogozare様
yuki様
土木建築業界というのは、最も遅れた産業分野です。
通常どこのメーカーでは、社内に品質管理体制がありますが、工事ではこうした発想がないのです。
社外のチェック機構が必要とされる由縁です。

投稿: home-9 | 2005/08/21 09:51

うさぎさん
記事に書いた通り、建築基準法では、建物が出来上がったときに、建築主が「工事完了届け」を行政に提出することになっています。
例えば大阪では、こうした手続きがとられているのは、3割程度といわれています。
法律をきちんと守らせる事を、先ずはやるべきでしょう。

投稿: home-9 | 2005/08/21 09:59

とほほ様
郵政民営化が、一つの検討課題であることは否定しませんが、現在郵便局の問題で困っている国民がいるのでしょうか。
いくら説明を聞いても、郵政民営化を最大の緊急課題とする理由が、私には分かりません。

投稿: home-9 | 2005/08/21 10:11

お邪魔します。つり天井つながりでトラバさせていただきました。

投稿: 東北のこやなぎ | 2005/08/23 05:30

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