身近にあった「人身売買」(その1)
私が未だ中学生のころ、1950年代の後半の話しで、少し身内の恥を晒すような話しですが、私の伯父に鉄五郎という人がいまして、仕事師だったんですが、博打が大好きでした。この息子、私の従兄にあたりますが、この人の名前は鉄なんとかと言ってました。私たちは、オヤジの方を大鉄、息子の方は小鉄と呼んでました。
その小鉄ですが、怠け者で定職に就かず、ニコヨンと呼ばれていた当時の失対事業で、1日240円の日銭稼ぎの生活です。処が、博打好きだけは親譲りで、いつもピーピーしてました。
小鉄はそれでも女に手を出すのだけは早くて、20代初めには所帯を持ちました。所帯たって、とにかく小鉄は働かず、博打ばかり打っているのですから、生活が成り立たない。そこで、女房が飲み屋に働きに出ていたのです。
その女というのは、美人じゃあなかったが、中肉中背の、いわゆる男好きのするタイプだったと記憶しています。歳は、当時でまだ20代半ばってところでしょうか。
その飲み屋に、クズヤが通って来ていた。当時「クズやー、お払い」といって、一般家庭を回って、クズを買い集めていた商売、今なら環境事業自営業者とでも云うんでしょうね。そのクズヤが、女に惚れちまった。もう40過ぎのいい歳だったのですが独身で、職業柄、いままで女性とお付き合いするチャンスが、無かったんでしょうね。
だけど、小鉄という立派な(あまり立派とは言えないが)亭主がいる。そこで思い余ったクズヤが、小鉄の所に乗り込んできて、女房を譲ってくれと懇願した。小鉄は、そんなら50万円出すなら、お前に譲ってやると、啖呵を切った。当時大学卒の初任給が1万円に達していない頃の50万円、今なら1000万円近い大金です。どうせ出やしないと、高をくくっていたんでしょう。
ところが、クズヤはそれなら50万円出しましょうと言い出した。結構金も貯めていたんでしょうが、余程その女に惚れてたんでしょうね。
小鉄も、言い出した手前後に引けず、そんなら50万円で手を打とうと話がまとまり、その女房はクズヤに売られてしまった。
でもこの「人身売買」、誰も損をしていなのです。
クズヤは、惚れた女と待望の所帯を持つことができた。
女は今までの極貧生活から抜け出して、自営業者夫人に納まり、幸せな生活を送れるようになった。
小鉄は、一度に夢のような大金を手にして有頂天、女房が50万円で売れたと、親戚近所に触れ回っていました。
三方が、みなハッピーな「人身売買」になったわけです。
メデタシ、メデタシ。
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