気をつけよう 甘い言葉と 小泉総理
今回の総選挙、各報道機関の予想では、自公合わせて300議席に迫る勢いだそうで、小泉政権の大勝利に終わりそうです。
私の周辺でも、俄か郵政民営化論者が目立ちます。いつもながら、小泉首相の世論操作の巧みさには、舌を巻きます。
今回の総選挙には、「小泉劇場選挙」と名付けられているようですが、「小泉レトリック選挙」と言ったほうが相応しいと思います。
以前は「痛みを伴う改革」を標榜していた総理が、こと郵政民営化に関してはその「痛み」に触れず、甘い言葉ばかり羅列するのが、どうも気に入らない。
郵政民営化により公務員を減らすと言ってますが、元々郵政の職員に給与は、全額郵政事業から賄われています。勿論このことは、当の総理自身よくご存知の筈ですが、恐らくは広告代理店あたりの入れ知恵で、主張しているのでしょう。
私も公務員の数を減らすべきだと思っていますが、それなら税金から100%支払われている職員を、先ず対象にすべきです。
第一は省庁の機構改革、そして省庁間の人事異動を活発化させ、全ての職員がどこの省庁の仕事でもできるようにする。業務を標準化する。省庁毎の採用を止めさせ、職員の採用を一元化する。これだけで、相当な効率化が可能となるでしょう。
管理職昇進にあたり、複数の省にまたがったキャリアを持つことを条件にする。これで、天下りが激減するでしょう。
まあ民間企業なら、どの会社でもやっていることですが。
改革を口にするなら、先ず一番困難な課題、最も効果が大きな課題から、手をつけるべきだと、私は思います。
郵政民営化により、資金が「官から民へ」移動すると言ってますが、これもおかしい。
民間金融機関の資金の動向を見れば一目瞭然ですが、ここ数年民間企業への貸し出しは減り続けています。民間企業の財務体質とキャッシュフローが改善され、資金需要が減ったためです。
銀行が貸し渋りしているのではなく、企業が借りてくれないのです。
その余剰資金は、主に国債など公債の購入に充てられています。
不要なマネーサプライは、かえって経済を混乱させるだけです。
それより、国債発行高を減らす努力こそが、先決です。
又、郵便銀行が、国債を買い控えし始めたら、確実に長期金利が上昇し、それこそ日本経済に大きな打撃を与えることになります。
郵政民営化により、特殊法人などの無駄使いがなくなる、うん? そうでしょうか。
昔と違って今は、郵貯資金が直接特殊法人に流れないように、制度が改まっています。
現在、金融機関が購入した国債などの資金が、特殊法人に流れているのですから、政府自身が不要な特殊法人を整理し、不要な公共投資を止めさせるしかありません。
これは、郵政民営化とは、関係無い問題です。
民営化後の郵便局は、常識的に考えれば減るでしょう。それも、地方の過疎地から。
ここ数年で、民間金融機関の店舗数は、4000店程度減ったとの試算があるようです。自分が預けていた銀行が、いつも間にか無くなったり、近所にあった支店が廃止・統合されたというのは、多くの国民が経験しています。
今度は、郵便局の番ですね。
郵便局を統廃合して効率化を図り、全国一律ユニバーサルサービスを見直すことこそが、郵政民営化の真のネライなのでしょう。
それでも小泉総理は、郵政民営化は絶対やると言ってます。
郵政民営化は、改革の入り口だとも。では、「出口」はどこにあるのでしょうか、なぜか小泉首相は語りません。
私は、この「出口」は、今までの共同体的ムラ社会から、弱肉強食のシステムへ、日本の制度・在り方を変えることだと睨んでいるのですが、小泉さん、当りですか?
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自公が300議席に迫る勢いという。暗澹たる気分にならざるをえない。以前の項と重複する部分もあるが、自分なりに争点を整理してみたい。
争点その①=<アメリカ的対日本的>
ニューオーリンズの惨状に感じたのは、<官>に捨てられた人々がいかに多いかということ。<小泉―竹中改革>もその方向で、非正規雇用とリストラで大企業は立ち直ったが、庶民の生活は苦しくなる一方だ。この4年間、貧富の差は拡大し、国民�... [続きを読む]
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T.B有難うございます。
貴方の意見に同感です。小泉首相は、言行不一致。言っていることと、やっていることが違い過ぎます。
小泉さんが街頭演説すると、多数の女性が群がり、キャーキャー言っていますが、そろそろ騙され、踊らされていることに気ずかないと、自民、公明が圧勝でもした日には、憲法改正、増税などやりたいほうだい。 私達国民が苦しむことになります。
悔やんでも後の祭りです。国民が騒いでも、小泉さんは、「貴方達は、私の政策を認めて多数の議席を与えたではないか。」と開き直ることでしょう。選挙では、争点を郵政民営化一本に絞り、他のことには触れようともしなかったのに。 過去4年間を振り返ってみると、この人は国民のことなど考えていないようです。
投稿: 正昭あいやん | 2005/09/09 12:44
お久しぶりです。ようやくネットに繋ぎ易い環境に戻りましたのでひと言。
小泉のキャッチフレーズ造りの上手さ、主張の簡単化は、まったくその通りだと思います。
でも、それが何か悪いのでしょうか?
郵政民営化より大切な事はたくさんある、まったくその通りです。
でも郵便局を民営化したら何が悪いのですか?
郵便局がなくなる?
郵政職員の給料は税金ではなく彼等の稼ぎから支払われている。
郵政改革が入り口と行っているが「出口が明確に示されていない」
何れも、郵政民営化が間違った方向であるという論拠にはならないのでは?
民営化に反対する人種は、既得権益による甘い汁に固執しているとは言いませんが、もっと明確に民営化したら、こんなデメリットがあると示して頂きたい。
過疎地の郵便局がなくなるとか、現在の郵便貯金が心配なんていうことではなく・・・。
投稿: タケチャンマン | 2005/09/09 20:14
タケチャンマン様
こちらこそお久しぶりです。
当方も夏休みやら旅行やらで、サボっておりました。
郵政民営化は、どちらに転んでも、国民生活全体にに重大な障害になるとは思えません。
であれば、これを緊急かつ重要課題としている、総理自身の説明責任が問われると思います。
公務員を減らすだの、官から民だの、郵便局は無くさないだの、そうした子供だましではなく、正々堂々とその必要性を主張すべきだと思います。
今のような態度を続けていると、よほど議論を避けたいのか、何か言えない事情でもあるのか、そう勘繰られても止む得ないでしょう。
投稿: home-9 | 2005/09/10 10:54
TBをいただき、ありがとうございました。こちらからもTBをさせていただきましたが、二重投稿になったようで申し訳ありません。
TB先の記事を拝見し、同感にたえません。
「この国を想い、この国を創る」って言ってたのはだれなんだっけ、などと思っているきょうこのごろです。
投稿: sissyboy | 2005/09/10 12:31
レトリック選挙。わたしもそんな言葉が頭に浮かんでいました。
まったくアメリカの真似っこのイメージ選挙大成功だったんでしょうねー。
弱者が排除されて行くことになるのでしょうかねー。
あ~あ、富裕層に生まれたかった。。。
投稿: とんちんかん。 | 2005/09/12 00:16
とんちんかん様
コメント有難うございます。
今回の選挙で、国民の多数はニューリベラリズムを選択しました。
具体的な政策が実行されていく段階で、その実態を把握することになるでしょう。
俗に、勝ち組負け組といいますが、勝ち組になれるのは5%程度の人だと言われています。
大多数の国民は、負担のみが増える結果となるでしょう。
投稿: home-9 | 2005/09/12 19:39