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2005/09/08

イスラエル国家と「マサダコンプレックス」

masada 「マサダコンプレックス」という言葉があるのを、今回のイスラエル旅行で、初めて知りました。イスラエル国民の精神を知る上で、ユダヤ教は欠かせないものでしょうが、私のような無神論者には、イマイチ理解できない。しかし、この「マサダコンプレックス」の説明を聞いた時に、ああそういうことなのかと、胸にストンと落ちました。

この言葉の由来は、死海の南西部にあるマサダ要塞にあります。紀元70年、ローマ軍によってエルサレムは陥落し、エルアザル・ベン・ヤイルに率いられた、967人の熱心党員がこの要塞に立てこもり、10倍以上の兵員のローマ軍の攻撃を凌いで、マサダで戦いつづけました。

しかし西暦73年、最後は砦が攻め落とされることが確実となって、自分や自分の家族が奴隷としてローマに連れて行かれるよりは、集団自決を選びます。その方法も、家長はその家族を殺し、そして10人のグループをつくり、1人が9人を殺し、又、10人グループのうち1人が9人を殺し、最後の一人は自害するという凄惨なものでした。

この内、7人だけが逃げ延びてローマ軍に捕えられ、彼らから聞いた話を、その後ユダヤ人の歴史家ヨセフス・フラビウスが、「ユダヤ戦記」に記述しました。ところが、このヨセフスがローマに寝返った人物であったため、ユダヤ人の間では、この史実が全く無視され続けたのです。

近年のイスラエル建国以後に見直され、遺跡の発掘によって、ヨセフスの記録が正確なものである事が、分かりました。イスラエル政府が、自らの政策遂行に、この史実を積極的に活用したと、考えるべきでしょう。

現在マサダでは、イスラエル軍の入隊式が行われるそうです。「マサダは、再び陥落させることはない」と、誓うわけです。イスラエルの人々は、再び国を失い、 離散させられるぐらいなら、死ぬまで進んで戦おうという精神を保持しています。更にこの事から、敵の攻撃に任せていては、結局マサダの悲劇をまた繰り返す。もし攻撃される恐れがあるならば、先に相手を倒すことでしか、身を守ることが出来ない、という理論に帰結してゆきます。

つまり、先制攻撃論ですね。

1981年、イスラエルはイラクに対して、イスラエル攻撃用の核兵器をつくっているとし、バグダッド付近の工場を爆破しました。

翌年12月には、シリアのゴラン高原を占領、併合しました。

2004年3月、イスラエル軍がハマス創設以来の指導者アハメド・ヤシン師を、武装ヘリコプターからのミサイル攻撃によって暗殺し、さらに4月には、ヤシン師のあとをついだハマスの新指導者、アブドルアジズ・ランティシ師をも、同様の攻撃で暗殺したのは、未だ記憶に新しいところです。

これらの軍事行動の背景に、私は「マサダコンプレックス」があると思います。

しかし、個人の問題に置き換えて考えてみれば、自分を殺そうとする人間がいたら、先に殺してもよいのか。犯罪を起こす可能性が高い人間は、予め捕まえて刑務所に入れておけば、安心なのか。

やはり社会的なルール違反と、いわざるを得ません。

こうしたイスラエルという国の行動原理と、大国、特にアメリカの思惑が絡んで、中東問題を深刻化させていると考えます。

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コメント

「中東に降る雪」のブログ   (http://rakudano2.exblog.jp/) に、私の言いたいことがしっかりコメントされているので、あえて繰り返しませんが、日本人の考え方は中東では通用しないということをまず理解しないと、イスラエルの行動原理の正誤を論じることはできないと思います。

現在のテロリスト狩りでも同じです。9.11白書にもありましたが、実行犯たちにはいずれテロ活動に走ることを暗示する行動が事件前にいくつかあったそうです。理想でいえば確かに「疑わしきは罰せず」が正論かもしれません。でも最近では特定人物の危険度が「疑い」以上であり、大量の人命が危険にさらされる場合は公の利益を優先させざるを得ない事情に変わってきていると思います。

イスラエルの場合、イスラエル絶滅を公言する隣国に対し、何度も和平案を提示してきています。首を縦に振りさえすれば要求の90%を与えられたのに、それでも和平を拒否したパレスチナ側の本音は何など思いますか?

投稿: ハティクバ | 2005/09/20 05:49

ハティクバ様
コメント有難うございます。
我国の世論は、判官贔屓もあってか、パレスティナの主張に同調する論調が多いようです。
現地に行って見ると、イスラエルの地域と、パレスチナの地域とで、余りに格差が大きいので驚きます。パレスチナの指導者は、先ず住民の生活改善、経済の建て直しが最優先されるのではないでしょうか。もっとそうした課題に真剣に取り組まないと、国際世論を味方につける事ができないと思います。
援助金の多くが、政府上層部に流れるような不透明なやり方は、いずれ内外の指示を失うと思われます。

投稿: home-9 | 2005/09/20 21:26

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