文化勲章、功労賞、二人の「光子」さん
28日、今年の文化勲章、文化功労賞が発表されました。文化勲章には森光子ら5人、功労賞は内田光子ら15人です。森光子は、大衆演劇部門からの珍しい受賞となりました。
森光子は、伯父が時代劇で一世を風靡したアラカンこと嵐寛寿郎だったのが縁で、1935年に映画「なりひら小僧 春霞八百八町」でデビュー、時代劇を中心に脇役として出ていました。今でもNHK衛星放送の古い映画を見ていると、森光子の姿を見ることがありますが、いずれもチョイ役に近く、いわゆる映画スターとしては成功しなかった。その後は売れない歌手をしたり、ラジオでお笑い系の番組に出ていましたが、いずれも大成しなかった。
森光子の成功のきっかけは、1960年の芸術座での「がしんたれ」です。私はこの舞台を見たのですが、当時そうそうたる顔ぶれの中で、強く印象に残ったのは、中山千夏(子役でした)と森光子の二人でした。森は主人公の友人である林芙美子の役で、脇役で出番は少なかったのですが、これが実に名演でした。
結局この舞台が、当時東宝の重役であった菊田一夫の目に留まり、彼女のイメージで林芙美子を主人公にした芝居「放浪記」を書き下ろし、森光子を主役に抜擢します。当時の芸術座は、スター制度を採っていましたから、このキャスティングはかなりの冒険であったのですが、彼女は見事に期待に応え、興行的にも成功して一躍スターの道を歩むことになります。
林芙美子の役は、今までの森光子が辿ってきた道、人生の様々な経験、これらが一気に役に投影した、そんな演技でした。つくづく、舞台はウソをつかないと実感しました。
80歳を越えて、まだまだ若い男性と恋が出来る、いつもでも若い森光子へ、心から拍手を送りたいと思います。
内田光子、クラシックファンなら知らない人はいない、世界的に活躍している日本人ピアニストです。もっともご本人は、若い頃から国際舞台で活躍しているので、彼女を日本人だと思ってはいけないのかも知れませんが。特にモーツアルトのピアノ曲については、今や世界的に第一人者といって良いでしょう。
内田光子のピアノ曲をCDなどで聴くと分かりますが、先ずその音の素晴らしさに感動します。音楽評論家中野雄によれば、彼女のピアノ曲では通常の平均律を採用せず、古典調律法でチューニング(私は良く理解できないのですが)しているのだそうです。この方法は、曲ごとに調律し直すのだそうで、音の美しさが際立つとのこと。
そんな難しい理屈は別にして、とにかく彼女の演奏を聴いてください、こうお薦めしたくなる粒揃いの名演奏です。
今回はピアノを通じての国際交流という業績が認められての受賞ですが、チェコでのコバケンこと小林研一郎、ウイーンでの小澤征二のように、その国では知らない人がいないチョー有名日本人も少なくないのです。
音楽を通じて日本、あるいは日本人に尊敬と親しみを感じてくれる人も多いわけで、これからの内田光子の益々の活躍を期待したいと思います。
(文中敬称略しました)
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