「耐震データ偽造」の背景を考える
「耐震データ偽造」問題で29日行われた衆院国土交通委員会の参考人質疑は、予想通り相互の責任のなすりあいに終始し、実りある議論になりませんでした。しかし映像は正直で、多くの視聴者の方は、この不正の主役は誰か、誰が一番の悪者かを推察できたと思います。
そういう意味では、やることに意義はあったのでしょう。
私はサラリーマン時代、永年商品開発関係の仕事をしていたので、お陰で色々な業界の方と接することができました。その中で、建築業界とのお付き合いが最も深く、今回の不正についても色々考えさせられることが多いわけです。
私が仕事で関わった業界で、最も職業倫理観の薄いと感じたのは、建築と食品業界です。
ご存知の通り、その後食品業界は大きな不祥事が相次ぎ、やはりという思いで見ておりました。
どの業界でもオモテウラがあり、キレイ事でない部分がありますが、この2つの業界は特に顕著だと、そう感じました。
建築業界の場合、建設現場事務所に商品の売り込みに行きますと、公然とワイロを要求される場合があります。相手が業界トップクラスのスーパーゼネコンでもそうです。
これが例えばトヨタや松下を訪問して、相手先からワイロを要求されるなどということは、到底有り得ないでしょう。
ヒューザーの小嶋社長のような人物が、この業界では大手を振って通用している、ここにこの業界の病巣があります。
建築業界関係者の中に、どうせ他でも不正をしているんだからという意識がどこかにあります。
検査書類をごまかしたり、工事では特に見えない部分での手抜きを行う、その程度の事どこの現場でもやっている、こういう意識が強いのです。
今回の不正もかなり早い時期から関係者が把握していましたが、売主も設計者も工事業者も検査機関も、そして国交省の担当者でさえ問題の重要性に誰も気が付かなかった。
これは、こうした不正・手抜きが日常化していた何よりの証拠です。
もう一つには、不正がバレル事は先ずないし、バレても責任を負わされたり、刑事罰の対象になることは無い、そう信じている点にあります。
例えば、過去阪神大震災など大地震で沢山の建物が倒壊しましたが、あの中には今回のような不正で耐震基準に達していない建物も、相当存在した筈です。
でもそれは一切分らないし、責任を追及された例も無い。
市街地では建築基準法による防火規制により、法定の耐火・防火材料の使用が義務付けられています。しかしこの規則を守らず、規格外の製品を使うケースがあります。
では実際に火事になって、そうした不正が暴かれた例があったか、多分過去に1件も無い筈です。
無論そうした不正に一切手を染めず、真剣に取り組んでいる建築業界関係者も沢山居られます。
しかし今回の「耐震偽造」の件では、関係者は“俺たちは余程運が悪かったんだな。”と思っているでしょう。
そして、売主によってはサッサと会社を潰して責任を逃れ、ホトボリが冷めた頃に別の不動産販売会社を設立し、平気な顔で又商売を再開することでしょう。
残念ながら、建築業界ではこんな実例、ゴロゴロ転がっています。
不正を働いた者は厳しく処罰され、正直に法を遵守した者が報われる、そうしたシステムを作り上げる、これは正に政治の責任です。
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