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2005/11/27

「桂文珍独演会」

bunchin
昔から江戸落語、上方漫才と言われていますが、確かに漫才は今でも大阪が優勢です。落語はといえば、大御所の桂米朝を筆頭に芸達者がずらり顔を揃え、特に三枝、鶴瓶、文珍ら人気も実力もの噺家(枝雀の死は返す返すも残念)を集めており、東京落語もウカウカしていられないでしょう。
以前国立演芸場で米朝や三枝らが出演した上方落語会を聴きに行きましたが、そのサービス精神には感心させられました。一口で言えば、木戸銭の分は楽しませて帰そうという精神です。

2005年11月26日、メルパルクホールで行われた「桂文珍独演会」に出掛けました。人気者の文珍とあって、大きな会場は大入りでした。
文珍は、いずれもお得意のネタで、新作・古典の3本立てとなりました。

マクラで、最近の世相から、「姉歯建築士、あんなに不正で儲けているんだから、もう少し上等なカツラをかぶったらどうか。それとも意外に“儲けがない”(もう、毛がない)」。NHKの記者は、事件が無い時は、自分で火をつけて歩いてる。あ、これはここだけの話とか。
TV出演のウラ話で、拉致被害者家族会の地村さんのお爺ちゃんに出演して貰った時、お孫さんお様子を聞いたら、「みんなとても素直な子ばかりで、北朝鮮の教育のお陰です。」と答えられて、それは正しいかも知れないが、番組的には困った発言だったとか。

そんな話で場内を大爆笑に包んでから、十八番の「老婆の休日」。
文珍は、お婆さん、お爺さんたち年寄りの描写が上手い。病院待合室でのお婆さんたちの会話が、実に生き生きとしています。
この噺、今から10年以上前の作だと思いますが、当時は老人医療費はみなタダ同然でした。処がその後本人負担が増え続けてきて、今や年寄が暇つぶしに病院にたむろ出来る時代では無くなりつつあります。
この辺りが、新作落語の辛いところで、作品が完成した時点で最も旬であり、時代の経過と共に古臭くなっていく運命にあります。
この噺、もう2-3年もすると、高座にかけられなく成るかも知れません。

2席目は 古典の「包丁間男」。兄貴分の男が、弟分の男を使って女房とスンナリ別れるために一芝居打つが、結果はその女房と弟分の男がイイ仲になってしまうという、「お約束」の展開です。
文珍の欠点の一つは、色気に欠けることです。あれだけお婆さんでは精彩を放つのに、小唄の師匠となるとサッパリです。
女に色っぽさがないと、この手の噺は生きてきません。

お中入りを挟んで、最後は 「老楽風呂」。得意のⅠT関連の小噺から、本題に入ります。
慣れないⅠTの仕事に悩むサラリーマンが、銭湯で出会った老人に癒されるというストーリーです。
この演目も数年前の作だったと思いますが、今や50代のサラリーマンで、パソコンや携帯を使いこなせない人は、先ずいないでしょう。「窓際族」も、もう死語になりつつありますしね。
噺としては面白いのですが、生活実感とは微妙にズレテきてます。
文珍の新作は、時代の先端をネタにして、それに適応できない人とのズレが主要テーマですので、時代が進むとかえって話の方がズレテしまう、この辺りが悩みです。

お客さんは終始大爆笑で、殆どの方は満足してお帰りになったことでしょう。
しかし私は、文珍落語の将来に、ふと不安を感じてしまいました。
先ずはもう少し「色気」を身に付けることです。一流芸人には、色気が欠かせません。
もしかしたら文珍、性格が真面目すぎて、「女遊び」の修行が足りないのかも知れません。
これは余計なお世話ですね。

他に桂楽珍が手堅く「子ほめ」と、色物の内海英華が、これは色っぽく「女道楽」。

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コメント

文珍師匠、NHK朝の連ドラ出演中ですよね、バイタリティありますね。
ところで会に出掛けていないので質問させてください。「新作3本立て」と書いてありますが、2席目の「包丁間男」って古典の噺では? もしかして演出ががらり違うのでしょうか?

投稿: ロング | 2005/11/27 23:08

ロング様
コメント有難うございます。
文珍は当日マクラで、NHK朝のテレビ小説のウラ話をしていました。
それからご指摘の演目のことですが、これは完全な私のミスで、仰る通り古典落語です。
かつて三遊亭圓生も、「包丁」という題で口演しています。
早々に訂正させて頂きます。
ご親切に有難うございました。

投稿: home-9 | 2005/11/28 00:10

home-9さん,こんばんは。

文珍師匠,CDで出されている朝日名人会の録音は,古典が多かったので,独演会でもされるのかと思いましたが,新作中心だったようですね。

そういえば,さび88さんのブログに,1週間前の朝日名人会での独演会の報告がありました。(http://plaza.rakuten.co.jp/zavier/diary/200511190000/) ここでは,古典2,新作1で,老楽風呂と包丁間男は共通だったようです。

色気に欠けることと,新作が時事的すぎることへの御意見,うーんと思いました。確かに,故文枝師匠の演じられた女性は,実に色気がありました。そして,新作でも故春風亭柳昇師匠の「春が来た」などは,いつ聞いてもほろりとさせられるものがありました。

今,CDで文珍の「稽古屋」を聞いていますが,そう言われれば女のお師匠さんの部分は,ちょっと物足りないかなあと感じました。

投稿: なも | 2005/11/28 23:28

なも様
コメント有難うございます。
とても楽しい独演会でしたよ。同行の妻も大喜びで、腹を抱えて笑っていました。
文珍は多才だし、近い将来上方落語を背負うべき人であるのは、間違いありません。
それだけに、一層芸に磨きをかけて貰いたいので、ついつい厳しい注文をつけてしまいました。

投稿: home-9 | 2005/11/29 06:02

先日、トラックバックをいただいたはずですが、いろいろ制限をつけている関係上うまくいかなかったようです。
もしよろしければもう一度お願いしたいのですが。

投稿: ジャマ | 2005/12/20 12:30

トラックバックできました。いろいろお手をわずらわせてすみませんでした。

投稿: ジャマ | 2005/12/21 08:51

今日、桂文珍様に初めてお会いしました。
落語も初めてです。可笑しい。深い。凄い。
鳥肌立ちました。芸術と、存じます。
面白い。風刺でもあると。世の中を見る目をお持ちと。
明日は、お腹が痛くなる程、笑いました。
日本には、落語という芸術ありまっせー!と言います。
桂文珍様、本当に有難うございます。かしこ

投稿: 正子 | 2014/01/16 03:05

正子様
すっかり文珍落語に嵌ったようで。文珍、とにかく面白いですよね。それから進化しています。初めて聴いた10年以上前と今とでは雲泥の差です。特にあのサービス精神は他の噺家も見習うべきでしょう。

投稿: HOME-(ほめ・く) | 2014/01/22 12:06

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