ネットの「言論の自由」は守られるか
9月にこのブログの記事で、『不可解な「アマゾン・ドットコム」の対応』と題して、普通の書店で売られている「拒否できない日本」という書籍が、なぜかアマゾン・ドットコムのオンライン書店では、長期に亘り品切れになっていることを紹介しました。同趣旨の記事は、当時多くのブログが取上げていました。その後、アマゾンでも取り扱いが再開されたようで、こうしたネットでの批判は無視できないようです。
その時の記事へのコメントとして、“ぼくてき”様や“通りすがり”様から、niftyを含む検索エンジンで、特定のキーワードが検索不能になったり、特定の記事がヒットしなくなったりしており、ネットにおいて言論統制が行われているのではとのご指摘がありました。私も記事の検索中に、何度かオヤット思ったことはありますが、それが意図的なものなのか、それとも検索システムの不備に起因するのか、判断がつきかねています。
これだけネットの力が大きくなり、世論形成に影響を及ぼす存在になった以上、これを制限したり、誘導したり、取り込んだりしようとする勢力も、当然現れてくるでしょう。そして反対意見の排除あるいは制約の動きも。
その点から少々気になるのは、ライブドアの堀江社長の動向です。堀江は9月に行われた総選挙に、広島から無所属で立候補しましたが、経緯からすれば実質的に自民党公認と同等です。10月24日読売の渡辺会長が、堀江が広島カープを買収しようとしており、その背後に自民党の武部幹事長がいると暴露しました。堀江が落選したことのフォローと、次回の選挙再挑戦への布石を兼ねた動きと思われます。いずれにしろ堀江が国会議員になった際に、果たしてライブドアのサイトが、政治的に公正中立を保てるかどうか危惧しています。更に最近の、こうしたネット企業のメディア支配の動向も、大いに気になるところです。
過去の例から見ても、報道内容が、その言論機関の経営者の政治的主張にある程度左右されるのは、避けられないと思われます。
例えば、読売新聞の場合、育ての親である社主正力松太郎が自民党の国会議員であったこと、現在の渡辺会長が元々は中曽根元首相のブレーンであったことから、どうしても保守寄りの主張に傾かざるを得ない。
産経新聞の場合は、左翼的言論に対抗して当時の財界人が創立したという経緯が、現在の政治的立場に色濃く反映されています。かつて自民党が幹事長名で、全国の支部に産経新聞の拡販を訴えたことがありますが、やはりDNAは争えないものです。
もう一つの動きとして、ブログ“◆木偶の妄言◆”の記事で紹介された、自民党から送られてきた下記の案内状です。http://brotherjin.exblog.jp/m2005-08-01/#2197553
「メルマガ/ブログ作者と党幹部との懇談会」のご案内
拝啓 酷暑の中、ご活躍のことと存じます。
さて、自由民主党では、下記日程にて「メルマガおよびブログ作者と自民党幹部との懇談会」を開催する運びとなりました。
ネット上で信頼性が高いと判断させていただいたメルマガ作者およびブログ作者を党本部にお招きし、私どもの考え方についてご説明させていただくとともに、幅広いテーマについて意見交換をさせていただくものです。
当懇談会は、自民党として初めての試みです。
お忙しいこととは存じますが、奮ってのご参加を期待しております。
敬具
自由民主党 広報本部長代理 世耕弘成
記
■開催日 平成17年8月25日(木) 午後7時~8時
■場所 自由民主党本部 4階 総裁応接室
〒100-8910 東京都千代田区永田町1-11-23
TEL ********
地図 http://www.jimin.jp/jimin/main/touJ.html
※当日は、一階の専用受付までお越しください
(事前登録が必要です)
■自由民主党 出席者
幹事長 武部 勤
幹事長代理 安倍 晋三 (遅れて参加させていただく予定です)
広報本部長代理 世耕 弘成
■主な内容
・ 総選挙に臨む自民党の考え方とスタンス
・ 質疑応答
・ その他
■予約申込み方法
●メールに下記内容を明記し、
事務局 ******** 宛てに送信してください。
事務局より返信を差し上げます。
・ 氏名 ・住所 ・年齢 ・職業(所属の社名・団体名)
・ 貴方のメルマガまたはブログの名称
・ 発行部数または月間平均アクセス数
・ 懇談会で質問してみたいこと(簡単に)
■申込み締切
8月24日(水)23:00必着
■問合せ・申込み
「メルマガ・ブログ作者と党幹部との懇談会」事務局
TEL.******** E-mail: *********
註)伏せ字にしたメールアドレスの@以下のところには、広告代理店のドメインが書いてある。又役職はいずれも開催当時のもの。
実際にこの懇談会に12のブログと17のメールマガジンから33人が集まり、参加者の中には『はてな』の近藤淳也社長の名前がありました。武部勤幹事長は「総選挙に向けた国民の声の勢いや力強さには圧倒されている。これからは『マスコミ』から『クチコミ』の時代、ブロガーやメールマガジンを運営する皆さんと連携しながら政治をわかりやすくしていきたい」と、参加者に語ったと報じられています。
我が国のネット社会は、概ね言論の自由は守られていると言って良いでしょう。
しかし今後は、ネットでの選挙運動自由化を機に、様々な制限や干渉が起きることを私は危惧しています。
(文中敬称略)
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いまさら選挙の話も遅すぎるとは思いますが、話のつかみなんでお許しを。
先日の総選挙、ブログが体験する初めての選挙だったのですが、全く機能せず。
公職選挙法の縛りで、候補者本人が更新できないそうな。
日本は言論の自由が保証されているはずなのにな。
で、『政官討論の会blog』というのがありまして、「選挙運動におけるIT(情報技術)活用に関するアンケート」というのを衆議院議員全員に送っておられます。その集計結果はExcelファイルで落とせます。
結果は「選挙運動においてホームペ... [続きを読む]
» 中曾根康弘と渡邉恒雄の関係 [阪本剛]
先日、なぜ党内基盤の弱い中曾根康弘が首相になれたのか?と聞かれた。中曾根の政治活動については、読売新聞グループ本社会長の渡邉恒雄との関係に触れる必要があると思う。
■大野伴睦のもとで影響力を拡大
渡邉は1926年生まれ、東京大学文学部を卒業し、1950年に読売新聞に入社。ワシントン支局長、政治部長などを経て、社長になった。学生時代は、共産党に入党していたことは有名。
渡邉は、自民党の大野伴睦の番記者となり、信頼を得て、地歩を固める。大野の邸宅に日参、派の決定事項を他の記者に発... [続きを読む]
>ネットでの選挙運動自由化を機に、様々な制限や干渉が起きることを私は危惧しています。
HOME9さんの懸念はよ~く分かります。
我々が想像する以上のスピードでネットが発達し、しかも若者だけのツールでなく老若男女のすべてが利用するツールになったのですから・・・。
法整備が追いつかなくなったり、モラルが形成される以前に現実的な問題が起きたり・・。
でも、すべてツールが悪いのではなくツールを使う人間に問題があったのです。
くれぐれもツールの使用を制限するような方向に社会的なコンセンサスが向かないように望みます。
投稿: タケチャンマン | 2005/11/18 12:19
HOME9さん
親記事の趣旨からは外れてしまいますが、コメントさせてください。
HOME9さんの仰っているのは、特定のキーワードということですが、検索エンジンってそれほど利口じゃないですよね。
私のサイト(http://www.joy.hi-ho.ne.jp/atabis/)のことになり恐縮ですが、すべて読んだ上での意見・感想をとのことから、一頁に収めてあります。プリントアウトすれば、各200ページぐらい(確認していませんが)になると思います。
そうすると、最初の50ページぐらいまでに出てくるキーワードは、検索にかかってもそれ以降は、全く拾われません。
検索エンジンからの情報っていうのも限界があるのでしょうね。
投稿: 柴田晴廣 | 2005/11/18 17:13
タケチャンマン様
ネットでの選挙運動が解禁となれば、当然公選法の規制を受けます。
違反文書と認定されれば、刑事告発の対象となり、逮捕起訴も有り得るわけです。
選挙を通して、ネットが警察による監視の対象になることを考えると、ネットでの選挙運動解禁は慎重であるべきでしょう。
投稿: home-9 | 2005/11/19 08:25
柴田晴廣様
リンクの様な長大な文書は、一定範囲しかキーワードを拾わないということでしょうか。そうすると、文書冒頭にキーワード集をつけるなどの措置が必要になりますか。
検索エンジンによる差異もあるようで、こちらのブログ(nifty)は開始3ヶ月位までは、yhooの検索には掛かりませんでした。
一方別館(excite)は、開始直後からyahooで検索できました。
gooとgoogleは、当初から検索可能でしたし、プロバイダー相互の関係もあるのかなと思っています。
投稿: home-9 | 2005/11/19 08:37
HOME9さん
私事で恐縮ですが、たとえば、穂国幻史考の第一話拾遺1の第三章あたりで「彦狭島」について取り上げています。
その中で基本資料として「予章記」を検討しているのですが、たとえば、「予章記 彦狭島」と検索しても私のサイトは、ヒットしません。
さらに、第三話拾遺では、地元の「うなごうじ祭り」について取り上げていますが、これなどまったく私のサイトはヒットしません。
では、ヒットする頁が詳細かといえば、我田引水になりますが、拙稿より詳しいとは思いません。
一度、「うなごうじ祭り」で各検索エンジンで試してみてください。そして、お手数ですが、ヒットした頁と拙稿第三話と比べてみてください。
検索エンジンでヒットする情報がいかに浅いものかわかると思います。
インターネット上では、ろくに調べもせず、安易に「教えてください」などという質問をよく目にします。所詮検索エンジンなんていうものは、そういう安易でお気楽な者を対象に開発されたものだと思います。
投稿: 柴田晴廣 | 2005/11/21 09:07
柴田晴廣様
コメントの「うなごうじ祭り」を検索してみましたが、いずれも貴HPの記事はヒットしません。
貴ブログの記事については、yahooを除く検索エンジンでヒットしました。
記事からキーワードを抜き出すソフトが、どのような仕組みになっているのか、ここが一番問題なのでしょう。
キーワードのピックアップソフトにつぃては、機会があったら調べて見たいと思います。
投稿: home-9 | 2005/11/22 21:51
HOME9さん
拙稿のみならず、長文の頁は、ヒットしないことが多いように思います。
長文のページこそ、一般には、情報が充実しているにもかかわらずです。
Web-Logのタイトルを「インターネットの普及で本当に便利になったか?」としたのも、一つは、検索エンジンとやらの機能の限界からです。
そして、それに気付いておらず、検索エンジンの検索だけで得た情報で、「わかったつもり」でいる者が若年層を中心にかなりの数に上ります。
インターネットを盲目的に信頼し、頼れば頼るほど、浅い情報しか入ってこないのではないか、本当に便利になったのか疑問に思います。
投稿: 柴田晴廣 | 2005/11/23 11:51