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2005/11/20

国交省の責任が問われる『耐震強度偽装』

aneha
以前このブログで、「天井落下事故は人災」「手抜き工事は続くよ、どこまでも」の2本の記事で、現在の建設業界が前近代的な産業形態にあり、今後も建築を巡る不正事件は後を絶たないだろうと書きましたが、今回又しても建築に関する不正が発覚しました。

「姉歯建築設計事務所」が、2003年2月~05年10月の間、ビルやマンションなど21棟の柱や梁(はり)の構造計算をする際、建物にかかる外力の数値を実際の約半分にして入力していたというものです。
建物によっては震度5程度の地震で倒壊する可能性もあり、既に入居している住民を中心に、不安が高まっているとの報道です。
現在都会に住む多くの人は集合住宅で暮らしており、私自身を含めて他人事ではありません。今回のような不正は、いつでもどこでも起こりうる問題なのです。

建築には施主(今回の場合は、デベロッパーと呼ばれる業者)、設計、施工、工事監理と多くの組織が係り、更に「建築確認」や「工事完了届け」を地方自治体に提出することが義務付けられています。
つまり本来は、これだけ相互のチェック体制が出来ているわけです。

今回の明るみに出た不正を見ると、「姉歯建築設計事務所」は個人事務所であり、仕事の多くは、元請である大きな設計事務所の下請けであったと見られます。不正に作成された構造計算書には、認定番号の印字も認定書も添付されていなかったということですから、先ず元請の設計事務所が気付かなくてはいけない。
更に、国交賞指定の検査機関により―今回不正のあった物件の大半は「イーホームズ」社が検査していますが―審査と建築確認を受けるのですが、中身はともかく、認定番号と認定書が揃っていないというのは、形式上の不備ですから、これも当然気が付くべきです。

私が最もいぶかるのは、施工会社=ゼネコンです。
建物の強度を半分に減らす為には、鉄筋の数を減らしたり、柱を細くしたり、壁を薄くしたりしたのでしょうから、ゼネコンは気が付くべきです。ゼネコン社内には、沢山の構造計算の専門家がいますし、それでなくとも従来の経験から、オヤッと思うが普通でしょう。
設計事務所が作成した設計書が、施工の実情と合わず、ゼネコンからの指摘で修正されることは、そう珍しくない筈です。
ゼネコンは気が付いてはいたが、見て見ぬ振りをしていた、私にはそうとしか見えません。

施工監理は、設計通りに施工されているかを監理する機能があります。
本来この段階でもチェックが働くべきなのですが、以前の記事でも指摘したとおり、殆どの工事でゼネコンが施工監理会社を指定するため、ここが正しく機能しない。

そして施主のデベロッパーですが、ここも素人が持ち家を建てるわけではなく、プロ集団ですから、明らかな設計ミスには、気が付いてもおかしくない。
処が、デベロッパー自身が「姉歯建築設計事務所」を指定していたとの報道からすれば、不正に係っていたか黙認していたか、疑義が持たれます。

結論から言えば、今回の件は、全ての関係者が寄って集って不正を働く、あるいは意識的に見逃してきた結果と想定されます。
その背景に、建設業界の体質があります。
公共工事では談合し、民間工事ではコストを抑えるために手抜きや不正を行う、この体質を改めない限り、これからもこうした欠陥ビル、欠陥マンション、欠陥住宅は、絶対に無くなりません。
このことは、国土交通省が、一番分っている筈です。でも彼らは、決して改めようとはしない。
それは根底に「政・官・財・学」の相互癒着があるからです。

小泉首相が唱える「構造改革」は、こうした課題こそ真っ先に取り組むべきだと、私は思います。

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住まい・インテリア」カテゴリの記事

コメント

TBありがとうございました。
震度5強の地震でなくても、自ら倒壊する恐れのあるマンションがあるという記事を読んであきれかえっています。

こんばんは。

この記事に関係なくて、申し訳ないのですいが、
「心に残る絶景バトン」を、うさぎから発信しました。
受けて下さいますよねっ!(^_^)v

花レタスTV様
コメント有難うございます。
不正に建てられたマンションに入居されている方は、本当にお気の毒です。
建物は構造が最も大事なのですが、これが外部から簡単に見えない、ここが建築物の最大のネックです。
だから、特にこの部分の審査を厳しくしなければならない。
処が、政府は認証機関を民間委託してしまい、安易に不正が通るように変えてしまった。
この責任は大きいと思います。

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