風刺が薄くなった「爆笑問題」
12月25日、国立演芸場「花形演芸会」へ。
毎年この例会に「爆笑問題」が出演するので、欠かさず通っています。お笑い芸人は、人気が出ると寄席を敬遠するようになりますが、やはり芸を磨くにはお金を払って見に来る客の前で演じることが大事です。
TVの公開番組で甘い客だけを相手にしていて、ウケていると勘違いしている内に、いつの間にか姿を消す芸人が後を絶ちません。
「爆笑問題」のように回数は少なくても定期的に寄席に出る、これは後輩のお笑い芸人も是非見習って欲しいところです。
さて今年最後の花形演芸会、その「爆笑問題」目当てで満席でした。
柳家小蝠「粗忽長屋」、過去師匠が談志から文治、更に蝠丸と3回変ったという変り種、そのせいか二ツ目に昇進するのに11年掛かっています。よく言えば苦労人、悪く言えば今一つパットしないという所でしょうか。もう少し登場人物にとぼけた味が欲しい。
古今亭錦乃輔は新作「ワルの条件」で一席を伺った後、曲芸は鏡味正二郎、未だ若手ですが芸がしっかりとしています。最近の若い太神楽の芸人は研究熱心な人が多く感心します。古参の芸人はウカウカとしていられません。
仲入り前は三遊亭金時、今最も期待される古典落語家の一人です。この人の良いところは、全身が落語家としての雰囲気を備えている事と、高座が落ち着いている事です。
この日は大ネタの「掛取万歳」、この演目の難しさは多彩な登場人物の描き分けと、演じ手に芝居や音曲の素養が必要とされる点です。
当日の金時は、風邪気味だったのかやや声の調子を落としていましたが、この噺途中で切る落語家が多い中で、金時は端折ることなく最後の万歳までノーカットの熱演でした。
最近の金時には、芸に風格が漂ってきてます。
カンカラの時代劇コントの後、お目当ての爆笑問題の高座。
最近バラエティの司会が多いこの二人ですが、社会風刺のしゃべくりが本業です。今時の殆どのお笑いが一般庶民を笑いのネタにしていますが、爆笑問題は政治家や有名人など社会的強者をネタにする所に、最大の魅力があります。
特にTVでは流せない内容も、高座では披露できますので、これを毎年の楽しみにしているわけです。
で、今年ですが、初期の頃と比べると段々と風刺が薄くなりました。特に政府に対する風刺はカゲを潜めていました。
どうもお笑いタレントは、売れてくると毒を失う傾向がありますが、この日を見る限りでは爆笑問題もその例に漏れないようです。
客席の笑いも、いつもより少なかった。
太田光の奮起を望みたいと思います。
トリは三遊亭円馬が、「お神酒徳利」を丁寧に。
« 「男系・女系」論議より大切なこと | トップページ | 「金原亭馬生独演会」in 鈴本 »
「寄席・落語」カテゴリの記事
- 「落語みすゞ亭」の開催(2024.08.23)
- 柳亭こみち「女性落語家増加作戦」(2024.08.18)
- 『百年目』の補足、番頭の金遣いについて(2024.08.05)
- 落語『百年目』、残された疑問(2024.08.04)
- 柳家さん喬が落語協会会長に(2024.08.02)
コメント