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2005/12/18

ソウル大「黄」教授の「灰色」論文疑惑

kiiro
お隣の韓国で、ソウル大の黄禹錫(ファン・ウソク)教授の研究成果ねつ造疑惑が起こり、揺れています。何しろ黄教授は、クローン胚からES細胞を作ることに成功させた国民的英雄であり、ノーベル賞の期待も持たれていた人ですから、事は重大なのです。

ES細胞というのは、これからなんにでもなれる大元の細胞で、この細胞一つで、体を構成するあらゆる種類の細胞を作り出す能力を持っています。
例えば臓器移植が必要な患者の場合、自分自身の体からES細胞をつくり、そこから新たな臓器を作れる可能性がありますから、再生医学においては画期的な偉業でした。

黄教授チームのメンバーの研究員が、今年5月に米科学誌サイエンスに掲載された論文の写真が黄教授の指示でねつ造されたものであることを明らかにしています。
黄教授自身は、ES細胞は存在するとしながら論文は撤回するという意向であり、名前は「黄」ですが、研究成果は限りなく「グレー」のようです。

“だから韓国は・・・”などという声もあるようですが、日本も余り偉そうなことは言えません。
医薬の世界では、製薬企業が新薬を開発するために、治験や臨床試験を医師、病院などに依頼して、症例データの提供を受けています。
この際、治験を担当する医師が、データを企業の都合のよいように捏造する見返りとして、製薬企業から多額の謝礼や研究費名目での寄付を貰う、この手の話は後を絶ちません。
中には報告書自体、製薬会社の人間が書くことも少なくないそうです。
医学部教授が海外で行われる学会で論文を発表する際に、論文の執筆からスライドの作成、航空券やホテルの手配まで製薬会社やその代理店の丸抱えというのも、医学の世界では現実にあります。

今回の黄教授の疑惑も、こうした世界の反映なのかも知れません。

ES細胞疑惑とは直接関係無いかも知れませんが、私が以前から気になっていた研究分野での“悪習”について、触れてみたいと思います。
文系の方は良く知りませんが、理系の世界では論文あるいは書籍の著者と、実際に書いた人(ゴーストライター)が別人であることは、ごく日常的なことです。
私は、昔ある高名な大学教授が書かれた論文について、詳細を伺いに訪問したことがあり、その際教授から実際の執筆者を紹介されました。大学の場合は大抵教授のお弟子さんが書くようですね。
著者自ら、「実はボクも、細かな所は見てないので」などと言われ、唖然としたことがあります。

企業でも同じような事があります。
私が所属していた会社でも、在職中に博士の学位を得た人がいましたが、その学位論文の殆どを、部下に書かせていた人が少なくありません。
それで学位を取得しているのですから、ああいうのは「偽装博士」だと思うのですが、学会で問題になったと聞いたことがありません。
会社での職務発明でも同様のことが起きます。重要な発明ですと、発想した本人の上司の名前で特許を出願するケースだってザラでしょう。

著作権がうるさく言われている時代、こうした慣習は改める必要があると思います。
特に人の生命に係わる分野では、「偽装研究」「偽装論文」だけは是非御免蒙りたい。

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医療・福祉」カテゴリの記事

コメント

home-9様
当方ブログにコメントありがとうございます。
いつも楽しく拝見しております。

「誉め苦味、世界を皿に、毒もあり、
ヤメラレモセズ、アキサセモセズ。」

来年はどちらにご旅行ですか?
“ホメラレモセズ、クニモサレズの存在”ではありません。
いい味付けで感心しております。

home-9さん

 わざわざお知らせありがとうございました。
 早速こちらにコメントさせていただきます。
 クローン技術によるES細胞(胚性幹細胞)は存在しないということで、胚性幹細胞そのものは、存在するということでしょうか?
 日本では、もっととんでもないものがありましたね。東大の緒方知三郎教授が1927年に存在するとした唾液腺ホルモン。
 しかし、唾液腺からホルモンが分泌されるなどということはなく、ホルモンは、動物の臓器から抽出され、現代では、大腸菌から作られているようです(詳細は、http://www.geocities.jp/m_kato_clinic/parochin-01.html)。
 いずれにしても唾液腺ホルモンなどというのは、存在しないにもかかわらず、インターネットを検索すると武田製薬などで、「パロチモン」の名称で唾液腺ホルモン薬が発売されています(http://takeda-kenko.jp/products/parotin/parotimon.html)。
 偉そうなことがいえるどころか、未だに医薬として発売されているわけですから、“だから日本は・・・”になるわけです。
 私の同級生でベルリンの壁崩壊時に東欧で放浪していたのが、いますが、彼が当時よく口にしていたのは、「ロシアという国はでたらめだが、国民が国がでたらめなのをわかっているから救いようがある。日本は、ロシアほどではないが、でたらめな国に変わりはない。救いようがないのは、国民がそれをわかってない点だ」でした。
 韓国もでたらめな国の一つだと思いますが(もっとも国家なんてまともなとこはないと思いますが)、韓国国民の方が日本国民より国がでたらめな点を認識しているのではないかと思います。その点やはり、救いようのない点では、日本に軍配が上がるように思います。

 つぎに、知財法の観点から、2点ほど言及させていただきます。
 職務発明については、出願人の名義は、問われません。仰っりたいのは、出願人の名義ではなく、発明者の名義ということになるかと思います。
 特許願の発明者の名義を基に特許証が交付されるわけですが、パリ条約4条の3は、「発明者は、特許証に発明者として記載される権利を有する」と規定します。
 つまり、願書に発明者でない者を発明者と記載すれば、条約違反を問われることになります。
 前に釣具のダイワのクーラーボックスの兆番の成形をしていたとき釣具の特許を調査したことがあります。そのとき、静岡の富士工業(http://www.fujitackle.com/)の特許明細書をみてびっくりしたことがあります。ガイドやリールシートの出願は、ほとんど、Fujiから出願されているのですが、すべて、発明者は、同一人物、調べてみると代表者でした。日釣振の会長を務めていて、発明までしていたということになります。
 つぎにゴーストライターの件については、著作権法121条は、「著作者でない者の実名又は周知の変名を著作者名として表示した著作物の複製物(原著作物の著作者でない者の実名又は周知の変名を原著作物の著作者名として表示した二次的著作物の複製物を含む。)を頒布した者は、1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」と規定します。
 著作権法121条は、非親告罪ですから、公益保護を趣旨とします。したがって、形式的には、本条に規定する処罰の対象となるばあいであっても公衆を欺くというような実質的な違法性、反社会性がない場合は、本条に規定する処罰の対象とならないと解されています。home-9さんの事例では、行為そのものは、公衆を欺くものではないかもしれませんが、実質的に、その論文により博士号を取得しているわけですから著作権法121条の対象となると解されます。

猪口山人様
コメント、そして勿体ない「誉め句」まで頂戴しまして、恐縮です。
「ヤメラレモセズ」、仰る通りで、時々苦労しながら原稿を書きつつ、何のために自分はこんな事をしているんだろうと、自問自答することもあります。
これからも「アキラレモセズ」程度に続けて行こうと思っています。
旅行はこれからも年に3回程度はと、これは体力と経済力が続く限りはと考えています。
ダイエットを心がけ、
「旅は股ズレ 余は情けねえ」
にならないように、注意してゆきます。

柴田晴廣様
早速詳細なコメントを頂き、感謝致します。
柴田様からのご指摘の内容を含めまして、この問題もう1回記事にしたいと思いますので、お気付きがありましたらお寄せ願います。

おはようございます。

この記事とは関係ありませんが、
お歳暮ブログをTBいたしました。

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