「耐震偽装」を生み出す底流
姉歯建築士の不正に始まった「耐震偽装」は、調査が進むと共に次々と被害の実態が明らかとなっています。今後は、他の業者の物件でも同様の不正が発覚し、大きな問題となる可能性が十分あります。
以前の記事で、今回の不正は建設業界の体質そのものが生み出したこと、その背景に「政・官・財」(正確には更に「学」が加わる)の癒着構造があることを記しました。
今回は建設業界から政界への資金の流れについて述べてみたいと思います。
自民党(支部や議員、後援会を含む)への政治献金で、建設業界は最大の資金源と言えるでしょう。それも正式に届けられるオモテの政治献金といわゆるウラ献金と両方ですから、正確に実態が掴めないくらい多額なものです。
先ず政治家が公共事業を取ってきます。次に官から民へ、本体秘密にすべき工事予算が伝えられます。ゼネコンは、仕切り役を中心に「談合」して、受注業者を決めます。この結果民間工事に比べて、はるかに高い利益を確保することが出来ます。
この見返りとしては、一つには建設業者から政治家への政治献金であり、もう一つは官の退職者の民間業者への天下りです。
これが、典型的な資金の流れであり、「政・官・財」癒着の構造です。だからいくら「談合」を摘発しても、絶対に無くならない。
「談合」こそが、金を生む「打ちでの小槌」ですから。
しかし、政治家というものは因果な職業で、こうしたオモテの金だけでは足りず、どうしてもウラの金が必要になるようです。裏金の作り方は私の専門ではないので、業界関係者から実際聞いた一例をご紹介します。
建設工事には、沢山の業者が関わりますが、それらの下請け孫受けから集金し、ゼネコンの幹部社員の個人口座に入金させます。ここで裏金が出来ます。これを財源にして、収支報告書に記載しない、領収書がいらない政治家へのウラ献金を捻出するそうです。
ここで思い出して頂きたいのは、今回の「耐震偽装」で木村建設の篠塚明東京支店長の個人口座に、姉歯からのリベートを振り込ませていました。この事実は木村社長も認めています。
処が、先日行われた衆院の参考人質疑で、木村社長と共に堂々と篠塚支店長が出席し、悪びれた様子も無く質問に答えていましたね。使い道を尋ねられると、「自分の営業経費」と答えていましたが、つまり社長公認の裏金であったと想定されます。
ヒューザーも木村建設も政治献金はむろん行っていますが、恐らくこうした手口でウラ献金もしていたのでしょう。
11月26日自民党の武部勤幹事長が講演で、耐震強度偽造問題に関して「悪者探しに終始すると、マンション業界つぶれますよ、ばたばたと。不動産業界も参ってきますよ。景気がこれでおかしくなるほどの大きな問題です。」と述べました。
この発言は大切なスポンサーである建設・不動産業界へのリップサービスであり、政府・与党の本音を代弁したものです。
建設業界が、政治家への資金を生み出す温床と」なっている間は、業界の健全化は実現しません。
「談合」や「裏金」や「天下り」、不正行為には厳しい処罰を与え、関与した業者は公共工事から締め出すなどの制度を作っていかないと、建築の不正はこれからも決して無くなりません。
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