企業体質が問われる日経新聞
又しても日経新聞社の不祥事が発覚しました。昨年6月にキャノンソフトウエア社の株式分割広告に絡んで、日経広告社の営業局長がインサイダー取引を行い、証券取引法違反で告発を受けたばかりです。今回もこうした企業の法定広告に関連したインサイダー取引が行われた模様です。
決算や格式・社債の発行など経営に関わる重要事項については、官報か日刊紙に掲載することが商法により定められていますが、こうした法定広告では日経新聞は圧倒的なシェアを握っています。
広告は数日前には新聞社に持ち込まれるため、広告局の社員は事前に発表の中身を知ることが出来ます。
株式分割であれば株価が上昇する可能性が高いので、事前に購入すれば儲けることが出来ます。
新株予約権つき社債発行の場合は株価が下がる可能性が高いので、売り抜けるか空売りすれば利益が得られるわけです。
今回問題となった社員の場合は、こうした手口で数千万円稼いだそうです。社内調査で当人は、「ゲーム感覚で繰り返した」と語ったとのことですが、冗談ではない。事前予測がつかないならゲームですが、結果が分かっているならゲームとは言わない。
かつては株屋さんの新聞であった日経新聞ですが、今や経営者やビジネスマン必読の経済・産業新聞となりました。記事は企業から直接取る情報が多いので、いきおい社員と企業との接触が深くなります。
企業側としては、自社に有利な記事を書いて欲しいし、不利な情報は掲載して欲しくない。そうなると記者に対して特別な情報を提供したり、時には便宜を計らうこともあるでしょう。
私のいた会社では、取材に来た日経の記者には、手土産程度は渡す習慣がありました。大体3-5千円程度の品物だったと記憶しています。大した金額ではないのですが、企業との距離の置き方としてどうなんだろうかと、私としては多少の違和感がありました。
日経新聞の社員の場合、法定広告や企業からの様々なアプローチを通して、個人的利益を得る機会が多いと思います。それだけに社員に対しては高い倫理性が要求されます。
今回問題となった社員の、“ゲーム感覚でインサイダー取引”という表現自体に、日経新聞社内の規律の緩み、規範の欠如が現れています。
日経では過去、2003年に関連企業である内装工事会社の不正経理・手形乱発事件で社長が辞任に追い込まれています。この件を機に、コンプライアンス遵守のための社内機関を設置しましたが、今回の不正を見る限りでは、有効に働いていないようです。
現在ライブドア事件の捜査が進行中ですが、発表された情報を見る限りでは、少なくとも堀江被告らは企業の利益のために犯罪を起こしていたと考えられます。
しかし今回の日経社員の場合は、自己の利益つまり私腹を肥やす目的でのインサイダー取引ですから、見方によってはこちらの方が遥かに悪質です。
証券取引等監視委員会は勿論のこと、日経新聞社内においても厳正な調査と処分、再発防止に取り組んで欲しいと思います。
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