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2006/03/30

「医師は加害者」ですか-射水市民病院での延命措置中止

Hosp
近所に病院があって、余り規模は大きくないのですが親切な診療をしてくれますので、罹りつけにしています。入院したこともあって、医療に関する話題を聞いたことがあります。
私たちは普段は専ら患者の立場から医療機関を眺めるわけですが、一方医療機関の側から患者の側を見ると、別の面が見えてくるようです。

この病院に年配の女性が入院していて、容態が変わり緊急手術が必要となりました。家族として一人成人した息子さんがいるのですが、一度も見舞いにも来ないし、連絡が取れない。しかし手術承諾書にサインして貰わないと手術は出来ないので、連絡のため八方手を尽くしたが、最後までその息子の居場所が分らなかったそうです。
しかし患者の容態は待ったが利かないので、止むを得ず承諾書のないまま手術を行いました。手術そのものは成功したのですが、その後の経過が思わしくなく、暫くしてその患者が亡くなりました。
そしておよそ半年過ぎたこと、一人の中年男が病院を訪れて来ました。その行方が分らなかった息子で、暴力団員だったそうです。「手術承諾書を見せて欲しい」と要求してきて、病院側は経過を説明して承諾書が無いと答えたところ、その男は病院のミスだから裁判を起こすと言い出し、それがイヤなら2千万円出せと脅かしてきたそうです。
仲間を引き連れて何回も病院に脅しに来たそうですが、病院側は決して屈することなく要求を拒み続けました。幸い彼らも脅迫を諦めて落着したそうですが、肉親の面倒を見て貰ったことに感謝するどころか、世の中には母親の死させ金にしようとする不心得者もいるわけです。

小児科で一人部屋に入院していた女の子が、深夜侵入してきた男にイタズラをされるという不幸な事故がありました。
病院側としては警察に届ける一方家族に謝罪し、補償についても和解が成立していたのですが、何者かがこの件をネタに病院の管理体制を批判するビラを作り、病院の周辺にビラをまいたそうです。
更にTV局や週刊誌記者が取材にくるなど、一時は騒然となりました。
被害者が小学生の少女だったため、病院側は身元が特定されないよう相当神経を使ったようです。
ここは救急指定もされていますので、外部から侵入しようとすれば、これを完璧に阻止することは極めて難しいのです。他の医療機関でも同様の問題を抱えています。
管理体制うんぬん言われても、入院患者がいる以上は、夜間でも家族が駆けつけてくるケースもあるし、夜間完全シャッタアウトしたら、急患の人が困ってしまいます。

救急指定病院というと、直ぐに“たらい回し”が問題となります。患者の側からすれば、医師がいるのに診て貰えなかったと不満が出るのでしょうが、当直医師が内科医であれば、手術を伴う患者は受け入れられないし、小児科の救急患者にも応じられません。
数日前に、1999年に幼児が喉に割り箸をさして頭蓋骨を損傷させ死亡した事故で、救急搬送された病院の医師が十分な検査をせずに見逃し、業務上過失致死罪で起訴されていた事件で、無罪を言い渡されました。この医師も耳鼻咽喉科が専門でしたが、もしこの症状なら脳神経外科の医師の診療が必要でした。
しかしすべての救急病院で、夜間あらゆる専門医を揃えておくことは、採算性が前提の現状では不可能です。まして医療事故で時には逮捕投獄されるケースも出てくるのでは、専門外の患者の治療には慎重にならざるを得ないでしょう。
この結果、公立病院でさえ救急指定を外す事態が生まれています。
救急で運ばれてくる患者の中に、いわゆる“行き倒れ”の人もいます。健康保険には入っておらず、生活保護の申請もしていない、身分証明も無い、勿論現金は持っていない。入院させて衣服まで病院が用意して治療し、2-3日して少し回復すると勝手に病院から出て行ってしまう。そうした患者を相手に診療する医療機関は大変だと思います。
救急医療体制を確立するには、公費支出が避けられないでしょう。

現在富山県射水市の射水市民病院で、患者7人が人工呼吸器を外されて死亡した問題で、呼吸器外しを指示した外科部長が県警から事情聴取を受けています。
この件は全容がつかめておらず、事件性があるのかどうかはっきりとしていません。しかしTVのニュースショーの中には、頭から殺人事件の容疑者扱いしていた局もあります。
終末期医療での回復不能か否かの判定、延命措置と中止、本人又は家族の同意の確認方法など、我が国では未だ多くの点が法制化されておらず、現場医師の裁量に委ねられているのが現状です。
末期で、しかも患者が激しい苦痛を伴うような場合、従来は医師と家族の“あうんの呼吸”で、延命治療が中止されることが多かったのは事実です。
同意文書が無かったと言いますが、家族の死を決する事柄に同意したことを文書に残すのは、一般に相当抵抗感があります。
私は、医師と本人または家族に加えて第三者が立ち会って(例えば遺言の公証人のような立場の人)、同意を確認する方法がとれないかと思っています。

警察や検察、マスコミなどが、医師側が悪と決め付けて世論を煽っても、何も解決しません。
むしろこうしたやり方は、現在の医療制度を崩していくのではないかと危惧します。
これを機会に、終末期医療のあり方や尊厳死のルール化について、医師も家族も禍根を残さず、双方が納得しうる法制化を真剣に取り組むべきと考えます。

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コメント

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投稿: 日々発掘調査びと | 2006/03/30 14:16

今から6年前に親父を亡くしました。
その時の経過を思い出しました。
私の親父の場合、死因は肺がん、没年は85歳でした。
初めてガンが見つかった時に後半年くらいの命と医者に言われてから3年生きました。
親父がガンであることを弟にも親戚にも言いませんでした。
そして、最後の入院の時に主治医と徹底的に話し合いました。
どこまで延命治療を行うか。
医学的な事実を細大漏らさず説明してもらい、最も楽観的に推移した時にどうなるのか、逆に最も悲観的な場合には、一番あり得るケースは。
そして達した結論は、苦痛を伴う治療はやらない。
人間的な生活が出来ない状態で寿命を延ばすような延命治療はやらない。
従って、人工呼吸器の使用は控える。
今回の射水市のケースでも一旦取り付けた人工呼吸器を取り外すのではなく、取り付ける前に医者と患者の家族の間でもっと議論ができなかったのかと思います。
突然の発作、徐々に悪化する病状、病気の進行には色々な経過がありますから軽率に論評は出来ませんが。

投稿: タケチャンマン | 2006/03/30 20:40

日々発掘調査びと様
コメント有難うございます。
医療事故が起きると、とかく病院や医師を叩く傾向があります。その方が喝采を受けるからでしょう。しかしそうした安易な姿勢は、問題の本質を覆い隠してしまう危険性があります。
今回の射水病院の件も、終末医療の在り方で、従来何が問題であって、今後はどうすべきかという観点が必要だと思われます。

投稿: home-9 | 2006/03/31 10:13

タケチャンマン様
お父上の実例は、医療側と患者側との理想的な関係を示していると思います。
治療で最も大事なことは、医師と患者(家族)との相互の信頼関係です。患者側も病気に関る知識を習得する、あるいは家族が熱心に看病する、こうした態度が医師の診療姿勢にも反映します。
しかし全てがそうした理想的な関係にはなりません。過去の医療事故の例を見ても、大半がこの信頼関係が欠如していたケースです。
後々こうしたトラブルを起こさないためには、やはりルールを作っておかなければならないでしょう。
普段は現場の判断に任せておいて、問題が起きると司直の手が入るというやり方は改めるべきです。

投稿: home-9 | 2006/03/31 10:26

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