三遊亭圓丈独演会in横浜にぎわい座
三遊亭圓丈、知る人ぞ知る噺家。つまり知っている人は良く知っているが、知らない人は全く知らない、そんな存在です。
名人圓生の直系の弟子ですが、まあ異端児といって良いでしょう。古典落語が多い落語協会の中にあって、新作落語の雄です。
この人の「新寿限無」などは一聴して抱腹絶倒、正に無形文化財ものです。
圓丈の作った新作は、多くの落語家によって演じられていますから、昨年国立演芸場で行われた還暦祝いの落語会では、沢山のゲスト噺家が出演しました。
4月7日に横浜にぎわい座で行われた独演会のゲストは、柳家喬太郎でした。
客席は空席が目立ちましたが、客の多くは圓丈の熱心なファンで、さすが知る人ぞ知る、です。
1席目は「手紙無筆U.S.A.」。お馴染みの「手紙無筆」をアレンジしたもので、10年前に他の噺家向けに作ったそうですが、当時受けずにお蔵入りしていたのを、9年ぶりに自演してみたとのことです。
手紙がFAXに変わり、しかも英文という設定で、英語が全く分らない人間と、しったかぶりする兄いとの掛け合いの面白さで聞かせます。所々に圓丈らしいナンセンスギャグが散りばめられて、笑いを誘います。
ゲストの喬太郎、当日は池袋演芸場昼の部のトリが圓丈でしたが、この日の独演会のために休演して、喬太郎が代演したのだそうです。そうしてこの横浜にぎわい座に駆けつけたら、未だ圓丈が来ていなかった。私は何のために代演したのだろうとマクラを振っていました。
ネタは「寿司屋水滸伝」、この噺、大して面白いネタではないのですが、喬太郎は雰囲気で聞かせてくれます。
圓丈の2席目は、古典のしかも大ネタ「居残り佐平次」でした。圓丈が未だ二ツ目というからぬう生の時代でしょうか、それ以来30年ぶりだと言ってました。
なぜ60歳を過ぎて古典に再挑戦なのかその理由ですが、師匠の圓生が持ちネタ400席を、日々絶えることなく稽古していた姿を思い出したとのことです。その直弟子たちも次第に衰えてきて、三遊亭の看板を背負っているのだから、やはり古典に挑戦してみようということで、今回の高座となったようです。
古典を演じると、さすが師匠圓生と口調が似ています。主人公佐平次の厚かましくてお調子者で、そしてワルという人物がくっきりと描かれていました。
3席目は、名作「肥辰一代記」。全編糞尿まみれの話でスカトロファンには堪りませんね。
これでもかこれでもかというギャグの連発で、客席は笑いに包まれました。
こうした題材の噺でも決して下品にならない、この辺りが圓丈の芸の力です。
久々に圓丈を堪能した一夜でした。
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home-9さん,こんばんは。書き込ませていただくのは,久しぶりです。
円丈師匠,頑張っていらっしゃるのですね。私は,どちらかと言うと古典偏重なのですが,円丈師匠は同郷なので,何となく親近感を持っています。
投稿: なも | 2006/04/10 18:25
なも様
コメント有難うございます。
圓丈は愛知県出身であることを誇る珍しい落語家です。自作の中にも「月のじゃがりこ」や「名古屋弁金明竹」といった、名古屋の風土を活かした名作があります。
これからは古典にも挑戦するそうで、還暦を過ぎてますますの活躍を期待しています。
投稿: home-9 | 2006/04/10 22:05
TBありがとうございました。
アメブロのTBが承認制になっていることに今日気づいたため、お返事が大変遅くなってごめんなさい。
圓丈は末広亭の八月上席トリで出てますね。1回は聴きに行きたいと思っています。
投稿: rakugonikki | 2006/08/03 07:56
rakugonikki様
コメント有難うございます。
圓弥さんが亡くなり、圓楽さんはリハビリ中ですので、圓生師匠の直弟子で元気に活躍されている圓丈さんは貴重な存在です。
しかも圓生一門では、異色中の異色ですからね。
末広亭、私も行きたいと思っています。
投稿: home-9 | 2006/08/05 06:04