「高利貸し」とはナンギな商売
高い金利で他人に金を貸すことを、かつて「高利貸し」と言っていました。名は体を現すとても良い表現だと思っていましたが、最近はあまり聞かれなくなりました。
1970年代の「サラ金」と云われていた時代から、1980年代には「消費者金融」に看板を書き替えました。
私は事業者向け貸し出しの「商工ローン」を含めて、「高利貸し」と呼ぶのが最も相応しいと思います。
金融庁は14日、強引な取り立てなど違法行為が多発したとして、消費者金融大手「アイフル」に業務停止命令を出したと発表しました。
以前にもやはり業界大手の「武富士」に不祥事がありましたが、上場する消費者金融大手に対する全店の業務停止命令は初めてですから、よほど手口が悪質だったのでしょう。
金融庁によると、顧客に無断で委任状を作って所得証明を取ったり、債務者に第3者から資金を調達するよう執拗に要求したり、債務者の母親や勤務先に電話して債務者らを困惑させた行為があったとされており、これらはいずれも違法な取立てです。
消費者金融各社のCMでは、なぜかグラビヤアイドルが「ご利用は計画的に」と微笑んでいますが、あれは止めた方がいい。ここは時代劇の悪役スターに、「借りた金は返せよ」とすごんで貰うCMに差し替えて欲しいですね。
消費者金融が急成長したのは1990年代の初めで、TVコマーシャルの規制緩和と無人契約機の導入が追い風となりました。同時にその時期がバブル崩壊と重なり、利用者が一気に増えたこともあります。又利用者個人の情報を、業者間で共有するシステムが出来上がり、与信が厳しくなりました。
一方で金利や取立てに対する規制が強化された結果、中小の業者が撤退して大手に集約される傾向が強まりましたが、同時にそうした業者から借りられない人々が「ヤミ金」に流れ、暴力団の資金源となっています。
一方「借りたものは返す」ということは、社会生活の大事な約束で、このルールが無視あるいは軽視されるなら、モラルハザードが起きます。
金銭の貸借があり返済が滞れば、「取立て」は避けられません。銀行だろうと一般企業だろうと、必ず取立ては行っています。
企業の営業部門にいた方なら、債務の返済を求めに行く、つまり取り立ては誰でも経験しているでしょう。債務者が倒産でもすれば、相手先の会社に乗り込んで、商品を回収した経験もあるでしょう。倒産企業の経営者の身柄を押さえて、返済を迫ったことも経験されたかも知れません。
経済活動を行う上で、「取立て」行為そのものは避けられない行為です。
金貸しを業として行い、しかも無担保で連帯保証人も不要となれば、取立ては重要な業務です。仮に返済できない人に、そうかそうかと言って取立てをしなかったら、金融業は成り立ちません。直ちに倒産です。
もし低利でお金を貸してくれ、取り立てもしない金融機関があったら、とても便利でしょうが、そんな所には誰もお金を預けないでしょう。
では「高利貸し」というものは、社会にとって百害あって一利なしであれば、いっそ廃止したらよい。借金をする人がいなければ、高利貸しは自然と消滅しますが、そうは簡単にいかない。
そのためには、消費者金融を利用する人がなぜお金を借りるのかを調査する必要があるでしょう。原因は生活苦に決まっているだろうと言われるかも知れませんが、私の周辺で見る限りは、原因の第一位はギャンブルです。
ギャンブルー生活苦ー借金ー返済ー生活苦ー借金のスパイラルです。そうであれば、ギャンブルに対する規制を強化しなければ、消費者金融問題は解決しません。
あるいは家族の病気が引き金になったケースも多いかも知れません。この場合は医療制度とつなぎ資金の融資制度の検討が求められることになります。
とにかく利用者の実態を調査し、原因を分析し、具体的な対策を講じる、この事が一番肝心なのではないでしょうか。
金融庁は現在、出資法の最高年利29.2%と、利息制限法での最高金利(元本10万円以上100万円未満であれば年利18%)との食い違い、いわゆるグレイゾーンの解消を目指しているようです。この政策だけでは、金利引下げ→与信の厳格化→ヤミ金の増殖 を招きかねないという観測もあります。
モグラ叩きのような個別企業取締りや、小手先の金融政策だけでは解決になりません。
俗に犯罪の原因は、「痴情、怨恨、もの盗り」と言われていますが、多くはお金の貸し借りが絡んでいます。
犯罪の抑制のためにも、抜本的な対策が必要でしょう。
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アイフル 全店舗対象に業務停止命令 金融庁
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060415-00000001-maip-bus_all
大騒ぎであります。
いまさらながらこのことについて考えてみることにしました。
録音されたテープの映像がネット上で公開されているので、さっそ... [続きを読む]
銀行預金金利がほぼゼロ金利の時代に29%であろうと15%であろうと、よく安易に金を借りる人がいるなぁというのが今回の事件に関する私の率直な感想です。
でも主な地方都市に行くと無人借入機?を備えた消費者金融の営業所が派手な看板を設けて乱立している現状から見てこの金利でも金を借りるお客さんはたくさんいるのでしょうね。
自分の収入を考えずに安易に欲望を満たす為に金を借りる。その後で返済にどんな苦労が待っているのかについての想像力が足りないのですかね?
想像力と言えば、最近よい歳をした老人や壮年の人が、こんな馬鹿なことをしたら、その後自分はどうなる、家族は・・・・という想像が出来ず、その場の感情に任せて人を殺めたりする事件が頻発しています。
どうなっているのでしょうか?
それとも、こんなことを考える私は世間の標準から外れているのですかね?
投稿: タケチャンマン | 2006/04/18 16:28
確かに無担保・無保証っていうのが問題
ここは、担保を取る質屋の復活を願いたいものです。
home-9さんのお詳しい落語には、欠かせないもの
伝統文化としての質屋の復活しかないですね。
元気なナゴヤの「コメヒョウ」に質屋の全国展開を行ってもらいましょう。
考えてみると、ナゴヤ地区のテレビCM、質屋の宣伝って意外とあるなぁ
投稿: 柴田晴廣 | 2006/04/18 19:16
タケチャンマン様
コメント有難うございます。
借り手がいるからサラ金があるのか、サラ金があるから借りる人がいるのか。こうした問題が起きると常に貸し手の責任が追求されますが、本当は借り手の存在が問題なのだと思います。
ここ数年で、預貯金を持たない所帯が急増していますが、本人または家族が事故や病気になれば、直ちに生活資金に窮乏するので、サラ金から借金せざるを得ない。こうした予備軍が増加している事態にメスをいれないと、根本的な解決にならないというのが、私の主張です。
サラ金が不要となる仕組み作り、難しい課題ですが、犯罪の抑制にも有効ですから、取り組む意義は十分あると思います。
投稿: home-9 | 2006/04/19 13:55
柴田晴廣様
お久しぶりです。コメント有難うございます。
質屋のCMですか、そう言えば東京では余り見た事が無いですね。周囲でも最近質屋を利用した人の話を聞きません。
金利の規定上では、貸金業が年利29.2%であるに対し、年利109.5%までの超高金利が認められている質屋ですから、庶民が手軽に利用できる金融機関とは、言い難いのではないでしょうか。経営実態も、最近は古物商になっていると思われます。
昔の落語家で、金に困って得意のネタ(演目)を質に入れたというエピソードが伝わっていますが、遠い昔の話になりました。
投稿: home-9 | 2006/04/19 14:18