世に偽ブランドの種は尽きまじ
2005年に全国の税関が差し止めた偽ブランド品など(知的財産権の侵害品)が、約13500件で過去最高となり、2004年に比べ47%も増加しています。これは数量が増えたのか、税関の取り締まりが厳しくなったのかは分かりませんが、いずれにしろ実際に輸入された偽ブランド品は相当な金額となっているのは間違いありません。
中国と韓国からの輸入が全体の9割を占め、中でも中国品は前年より87%増えて韓国を抜いてトップとなり、躍進ぶりを示しています。
私自身はブランド品に全く興味がありませんが、家族に頼まれて海外のブランド店で買い物をしたことは数回あります。どこに行っても、日本人の女性客が多いのが目に付きました。血相を変えて目的の品物を探す人、大きな袋に買い漁ったバッグを次々詰め込んでいる人もいます。
フィレンツエでイタリアブランドのバッグを買った時に、価格が2-3万円の小さなバッグが売られていました。店員に何に使うのか聞いたところ、日本人のお土産用として販売している商品で、実際に日本人しか買わないとの答えでした。欲しいのは商品では無く、ブランド(印)ということなのでしょう。
海外のブランド店で、日本人はあまり歓迎されていないと聞いたことがあります。確かに商品を沢山買ってくれるのですが、庶民的な格好の客が増えると、店の高級感が薄れるのだそうです。当店のバッグは、それに相応しいお客様に持って頂きたいということなのでしょう。
売り上げに貢献しているのに、迷惑がられているのですから、日本人はいい面の皮ですね。
数年前に中国の青島に行った時に、初めて偽ブランド品を買いました。中国人に同行をお願いして、現地の人が買い物をする偽ブランド店に連れて行って貰いました。大きなショッピングセンター内に数店ありましたが、案内してくれた中国人が推薦してくれた店に入ると、中は現地に若い女性で一杯でした。
店員から希望の商品は何かと聞かれたので、取り敢えずルイヴィトンのバッグと答えたら、1級品か2級品かと聞かれ、1級品と答えました。そるとルイヴィトンの最新カタログを持ってきて、この中のどれが希望かと聞かれました。最新の商品まで全て取り揃えてあるのだそうです。
そこで1年前に娘に頼まれて購入したタイプと同一のバッグ、中年女性向けの落ち着いたデザインのバッグと、定番の財布を指で示しました。
店員はそれぞれの商品を数点ずつ取り出してきて、気に入ったものを選んでくれと言いました。偽ブランドと言っても出来不出来があるそうで、客自身が1点1点品質チェックする必要があるそうです。なかなか商売が良心的ですね。
良くわからないので、適当に3点選んで購入しましたが、合計で1万円でおつりがきました。ルイヴィトンのマークの入った布袋やダンボールに包まれ、丁寧に製造番号まで入っていて、この辺り実に芸が細かい。
更にローレックスの時計を1万円でどうかと勧められましたが、そちらはお断りしました。
とにかく安い!という印象は受けました。
せっかくの機会ですから、店員に中国の偽ブランド事情を聞きました。
先ず製造工場ですが、現在世界各国のブランド品の多くが、コストの安い中国で生産されているそうで、製造技術も必要な資材も手に入るから、これだけ精巧な物が出来ると言ってました。又韓国や他の東南アジアで売られている偽物も、殆ど中国から供給しているとの説明でした。
その後日本へ持ち帰って、そのうちの1点は娘が本物を持っているので、早速彼女に比較して貰いました。隅々まで検査した結果、本物との違いは細かな所数ヶ所が見つかっただけで、普通に使っているぶんには区別がつかないという結論でした。
本物は確か12万円ほどでしたから、3000円との価格差は余りに大きい。売値が3千円ということは、メーカー出荷価格は1500円以下でしょう。とすればコストに対する売価の比率は100倍近いことになります。ブランド品の製造原価がいかに安いか、流通コストと利幅がいかに莫大なものかが、これで窺われます。
ブランドの付加価値は当然としても、売価が適正レベルかどうかは大いに疑問です。
一部日本人の盲目的なブランド信仰と、ブランド企業側のいびつな価格体系が共存する限りは、法の網をかいくぐっての偽ブランドの輸入は、これからも続くでしょう。
世に偽ブランドの、チョ~ン、あっ、種は尽きねえ。
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今も、私の弟は中国へ出張中なのですが、長年に渡って視察して来た末、ようやく中国進出に踏み切ったようなのです。
地元京都の老舗玩具屋に勤めているのですが、海賊版の横行する中での販売は、どんなに不安があるだろうかと察するばかりです。
・・といいつつ、中国へ行けば必ず超安いDVDやCDを買って帰るうさぎです。
投稿: うさぎ | 2006/04/07 00:00
うさぎさん
コメント有難うございます。
21世紀の経済を考えれば、中国の巨大市場を無視するわけのはいきません。
一方中国に進出した企業で成功したのは、1割程度と言われています。私が見聞きした範囲では成功例は、中国社会の文化に対する理解と人脈作りがポイントだと感じました。
私の知り合いで中国でのビジネスで成功している人は、中国社会のルールを尊重し、中国人の能力や努力に敬意を払っています。
中国近代代的な国家になるには、未だしばらく時間が掛かるでしょう。現在はその移行過程にあるという、長い目で見ていく事が必要だと思います。
投稿: home-9 | 2006/04/07 09:25
品質の良否を見分ける能力があり、たまたま気に入った品質のバッグを購入したらルイヴィトンというブランドだった。
そのような人もいるでしょうが、これはほんの一握りで大多数のルイヴィトンユーザーは「品質を見極める能力がないのでブランドに頼っている」と私は解釈しています。
ですからルイヴィトンのバッグを持っている人を見ると「私は品質を見極める能力もセンスもありません」と告白しているような感じられます。
ところでHOME9さんの記事を見ていてバンコクを思い出しました。
ある時、バンコク市内のかなり大きなショッピングセンターの中にある綺麗で洒落た衣料品屋でジーパンを買いました。
既製品なのですが寸法を測って、サイズが合わないところを簡単に直してくれます。
修正箇所が明確になって、「お願いします」「後で取りに来ますので」と言って帰ろうとしたら店の人が、
「お客さん、どれになさいますか?」
ジーパンの後ろのベルトのところにつける皮製のマーク?を色々と並べて!
「リーバイスがいいですか?」「エドウィンもありますよ!」「リーなんかも洒落てますよ」
「どんなブランドもOKです」「好きなものをお選び下さい」
こんなバンコクでも、
「最近はDVDやコンピューターソフトの海賊版とか・・・、偽物の取り締まりがものすご~~く厳しくなって暮らし難くなった」
と嘆いています(笑)
投稿: タケチャンマン | 2006/04/07 12:38
お久しぶりです。
ヴィトンの売り上げの40%は日本で発生しているので、ヴィトンは日本人、それも日本の店舗が支えているのですよね。
日本人が(割高な、すなわちヴィトンが儲かる)日本店以外で買うとヴィトンとしては困るので、色々と方策を打ち出しているようです。
ちなみに私も「品質を見極める能力がないので」ヴィトンのボストンバッグを買いましたが、もう10年以上使っているし(結構丈夫)、買い換える予定も無いので、結果的には割安だったかな~と思っております。
投稿: はたひら | 2006/04/08 10:37
タケチャンマン様
コメント有難うございます。
最近デパートの1階を覗くと、どこでも殆どがブランド品売り場と化してしまいました。消費者がどこまで品質を評価し、購入しているのか疑問を感じます。
一時期若い女性に圧倒的な支持が高かったPRADAのバッグですが、あの安っぽいデザインの良さが分りません。
COACHのバッグは感触が良いのですが、材質が柔らかいので表面がキズつき易く、金具も壊れ易く、実用的でないと感じています。
ブランド品に全く興味が無いなどといいながら、結構チェックしているじゃないかと、お叱りを受けそうですね。
タイは15年ほど前までは、国際空港で堂々と偽ブランド品を売っていましたが、最近はすっかり様変わりです。
投稿: home-9 | 2006/04/08 14:59
はたひら様
コメント有難うございます。
大きな声では言えませんが、私が評価しているブランドは、ルイヴィトンだけです。
家族の評判を聞くと丈夫だし飽きが来ない。長期間使用できるというのは、やはり価値があると思います。
偽ブランド品を買う際も、迷わずルイヴィトンを選んだ理由は、その点です。
いつも間にか、ブランド信奉者みたいな発言になっちまいました。
投稿: home-9 | 2006/04/08 15:09
COACHは直営店が無いころ?に高島屋で一つだけ買って使ってみましたが(当時は非常に安価だった!)、仕上げが雑なのと、作りが柔だったので「あ~、やっぱアメ車っぽいなぁ」とそれ以来はご無沙汰です。
今は日本市場に適応した製品を作っているのでしょうか・・・って私もなんだかブランド信奉者みたいな発言になっちまいました。
しかしまぁ、ブランドとは「このブランドならこのぐらいの品質」という信用を売っているわけで、その信用を売るための対価も払ってきたわけですから、それには正当な対価を払ってあげたいですよね。
私も「あの人の仕事ならこのぐらいの品質(&値段^^)で当然」といわれるブランド力を身につけたいものです。
投稿: はたひら | 2006/04/08 16:34
はたひら様
毎年恒例の質流れ品大バーゲンで、ブランド物が渦高く積まれています。その大部分が、ホステスが客からプレゼントされた品物を換金したものだそうです。
せっかく何か見返りを期待して、大金をはたいて貢いだバッグを質屋で換金するとは、何と言う非情なやり方でしょうか。
ここでのブランド品は実用的な価値ではなく、換金性という特性のみで利用されています。
ブランド品にはこうした使用価値もあるわけです。
バーゲンで積まれたバッグの一つ一つは、オジサン達の汗と涙の結晶です。
投稿: home-9 | 2006/04/08 21:55