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2006/06/05

日本の文化水準が問われる絵画「盗作疑惑」

Wada
洋画家和田義彦氏のいわゆる「盗作疑惑」ですが、既に多くのブログで取り上げています。
ご本人は「専門家なら違いが分かる」と言っているようですが、私など素人から見ると、あれは単なる「模写」としか思えません。同一画家の絵をひたすら模写したとしたら、余程そのイタリア人画家アルベルト・スギ氏の絵がお好きだったのでしょうね。
海外の美術館に行くと、しばしば有名な絵画の隣にキャンバスを立てて、熱心に模写している姿を見ますが、あの手の絵ですね。
そうした模写を自分で楽しんでいる分には趣味の世界ですから、どうと言うことは無かった。
しかしこれらの模写を、自分のオリジナル作品として世間に公表し、個展を開き、数々の権威ある賞を受賞したとなると、話は穏やかではない。

ある高名な作家のエッセーにこんな事が書かれていました。
小説家に対しても熱烈なファンがいて、この中には、どうしても私が書いたものを読んで欲しいという依頼も多いのだそうです。大概はお断りするそうですが、ある時中年のご婦人が自宅に押しかけてきて、「あなたの小説は、私の作品を盗用している」と主張し始めました。
その作家氏くだんの原稿を見ると、氏の代表的な作品の一言一句たがわず、原稿用紙に書き写したものだったそうです。その事を指摘すると、「いや、これは私の作品だ、あなたが私の真似をしたんだ」と言い張るので、とにかく丁重にお引取り願ったそうです。
ファンであるという心情が昂じて、いつしか好きな作家の作品が自分のものと思い込んでしまったわけです。
今回の和田義彦氏の主張を聞いて、このエピソードを思い出しました。

私は今回の騒動を取り上げた一連のマスコミ報道を見ていて、違和感があります。
確かに盗作した和田義彦にも罪はある。しかし、そうした作品を持ち上げ、賞まで与えた周囲の責任はもっと重いでしょう。
和田氏は過去に東郷青児美術館大賞、河北倫明賞、更には芸術選奨の文部科学大臣賞をも受賞しています。
最後の文部科学大臣賞は、2005年4月から各地で開催した個展、「ドラマとポエジーの画家 和田義彦展」に対して与えられたものです。今となってはこのタイトル、悪い冗談としか思えませんけど。
実はこの個展開催中の昨年12月に、既に和田氏の作品が盗用である旨の投書が、美術館宛に送られていました。
しかし、「スギ氏へのオマージュ(敬意)としての作品」とする和田氏の説明を受け、黙殺してしまった。その結果、輝かしい賞が与えられてしまったわけです。

勲章や褒章の受章にかかわったことがある方なら、お分かりだと思いますが、こうした権威ある賞は、実は「受賞」や「授賞」ではなく、「穫賞」が実態です。賞を獲るために、本人あるいは周囲が、賞の選考会に運動や働きかけを行うのが通例です。ある日あなたに、いきなり「あなたに勲章を授与します」などという通知は来ませんので、ご心配なく。
受賞を働きかけた周囲、賞の選考委員、こういう人々が寄って集って和田氏の権威を作り上げた、寧ろその点にこそ大きな罪があると言わざるを得ないでしょう。

海外の画家の作品だからと弁明していた美術関係者がいましたが、スギ氏はイタリア現代美術展の協会長も務め、同国内では著名な画家です。
模倣が1-2枚ならともかく、20枚とも30枚とも言われている「盗作疑惑」に、賞の選考委員や関係者が、誰一人気が付かなかったとしたら、不明を恥じるべきです。少なくとも、昨年12月に「盗作」の指摘があった時に、本人の弁明だけに済ませていなかったら、避けえたことです。

以前、考古学の発掘で不正が発覚したことがありましたが、あの場合も本人は悪いのは当然としても、名だたる考古学者たちが、揃ってこの発掘者を褒め称え権威を与えてきた、ここに最大の問題があったと思います。そうした責任は、結局ウヤムヤに終わっています。

ここに至れば賞の選考審査会は、過去の面子に拘ることなく潔く誤りを認め、授賞の取り消しを行うべきでしょう。
このままでは、我が国の文化水準が疑われます。

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コメント

絵画の模索基準とは、やはり第三者の客観視だけによるものなのでしょうね。
もし作曲であるなら、同じ旋律を何小節以上使えば、盗作であるという基準がありまが・・。

この度はご心配をおかけしましてすみませんでした。2~3日で接続できるとの話だったのですが、管理画面にだけしか入れませんので、只今、nifty側で調べてもらっている処です。
早く復帰したいです~。

こんにちは。
日本のお偉方はまだ島国だからバレずに済むなんて甘い考えを持ってらっしゃるのかもしれませんね。今回の賞剥奪決定会議は担当委員7名中4名が欠席だったそうです。疑ったら止まらなくなりそうなので考えないようにしています(笑。
模写は悪いことではありません。ですから和田氏も堂々と「得意分野・模写」で美術界で生きれば良かったのですよね。スゥギ氏がおっしゃっているように模写したものに自身のサインを書いて自分のものとした、ことが罪なんだと私も思います。

うさぎさん
コメント有難うございます。
音楽の世界での盗作問題、これも度々話題になるところです。モーツアルトやベートーベンのメロディーは、あちこちで使い廻されていて(特に映画やドラマの音楽に)、あれは”作曲”ではなく”変曲”じゃあないのかと、皮肉の一つも言いたくなるような曲も多いのです。
私同様「うさぎさん日記」再開を待ち望んでいる方が多いと思います。
楽しみにしています。

ま・ここっと様
コメント有難うございます。
文化庁の「盗作と疑われても止むを得ない」という見解も、随分と奥歯に物が挟まったような表現です。明らかな模倣であり盗作である、授賞は間違っていたと明瞭に言えば良いのにと思います。
やはり審査会の権威あるセンセイがたに遠慮があるのでしょう。
その後和田氏の、大学教授時代のスキャンダルまで明らかとなりました。
人間外観で判断してはいけないのでしょうが、好色な男は大抵顔を見ると分ります。今回の報道も、ああヤッパリと思いました。
「同病相哀れむ」だって?
私に限って、決してそのようなことはありません(キッパリ)。

今、日本の文化庁がすぐにやることは、今回間違って授与しようとした賞を即刻、イタリアのスギ氏に届けることではないでしょうか。

日本でも有数の著名な選者がこぞって芸術性がある、素晴らしい、とスギ氏の作品とそっくりな作品を賞賛したのて゜すから・・・・(笑)

タケチャンマン様
コメント有難うございます。
ある美術関係者が、スギ氏程度の画家はヨーロッパにはゴロゴロいるので、なかなかチェック出来ないと発言していました。
そうすると、ゴロゴロいるような画家の作品の模倣が、我が国は芸術選奨を得られるということになり、それはそれで大いに問題があります。
スギ氏は、日本での展示会を望んでいるようですが、海外の美術家のレベルがどの程度なのか見極める良い機会だと思います。

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