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2006/06/19

「ものを言えぬ株主」総会の裏側

Murakami2
村上ファンドの村上世彰元代表は、一時期「ものを言う株主」として、もてはやされていたことはご存知の通りです。でも考えてみると、「ものを言う株主」というのは、昔からいました。世間では「総会屋」、あるいは「特種株主」と呼ばれている人たちです。
企業の株主総会に出席された方なら経験があると思いますが、総会で発言する人というのは、殆どが総会屋だけという時代が長く続いていました。

総会屋というのは明確な定義が無いのですが、「株主として株主総会に出席資格を有することを利用し、総会の議事進行に関し、会社が金をくれれば会社に協力し、会社が金をくれなければ会社を攻撃するという行動に出ることにより、会社から株主配当金以外の金員を収得している者」と言えるでしょう。
村上世彰の場合は、総会の場なので企業に株主価値の向上を要求し、株価をつりあげて高値で売るのが商売でしたから、現象から見れば「総会屋ファンド」とも言えるでしょう。

では普通の株主はといえば、圧倒的に「ものを言わぬ株主」です。特に殆どの個人株主は、株価の値上がりと株式配当のみ関心があり、その会社の経営がどうのということには、全く関心を示しません。
しかし会社というのは、本来は株主が所有者であり、従ってその株主が集まる総会は、最高の意思決定機関となっています。
法律で定められている株主総会決議事項は、次の通りです。
・営業譲渡
・定款変更
・資本減少
・合併
・解散
・取締役・監査役の解任
・計算書類の承認
この他に会社の重要な事項については、総会で決議することができます。

しかし日本の多くの(全部と言っても良いでしょう)会社では、株主総会は形式的なもので、実際に審議や特別な決議が行われるのは、極めて稀です。
その最大の理由は、総会屋対策と称して、実質的に株主の発言を極力排除しているからです。
株主総会に何分掛かったかだけが問題とされ、長時間に及べば総務部長が責任を問われる、そうした実態が現在も続いています。
会社の中には、開かれた総会を行う例もあるようですが、全体の中では極めて少数派だろうと推測されます。

会社の株主総会というのは、実に入念な準備が行われます。
会社の規模にもよりますが、先ず数十名の社員株主が組織されます。次に経営者や社員株主全員による総会リハーサルが3-4回行われます。その中では、総会屋に扮した警察OBの従業員などが議事を妨害して、なかなか臨場感あふれるリハーサルとなります。社長の提案に、「了解」「異議なし」と声を揃える練習もします。
顧問弁護士によりダメだしや講評が行われ、修正が繰り返されます。
総会当日になると、開会2時間前には、社員株主が会場前列から10番目くらいまでの席を独占します。勿論通路も全て埋め尽くします。これとは別に、会場警備の社員も配置されます。
そのほかに関係会社や取引先、OB社員などにも協力を求め、出席してもらいます。
そして、私服警官が2名程度、会場の後方に配置されます。
だから総会出席者が100名近くいて、その中で一般株主は数名だったなどという例だって、決して珍しくありません。

銀行や機関投資家と呼ばれるような大口の株主に対しては、総会に先立ち別の説明会を開き、予め議事について了解を得ておくことは、言うまでもありません。

ではなぜこうした念入りな総会対策を必要とするのでしょうか。
どんな企業でも、外部に知られたくない情報は、必ずと言って良いほどあります。企業活動を進める上で、全く法律に触れないというのは困難です。
会社組織として触法というケースもあれば、いわゆる従業員の不祥事ということもあります。
更に経営者(主に社長)の不正、これが意外と多いのです。会社を私物化し、不正な利益を得るケースです。あるいは女性や暴力団との付き合い、これらも表沙汰にしたくない。

株主総会の決議は、普通の会議と同様に多数決(株数基準)で決まりますから、本来は総会屋などというのは、全く恐れる必要が無い。
処が、総会の席上で会社の暗部やスキャンダルを暴露されるのは絶対に避けたい。
だから全国にたかだか400名程度といわれる、絶滅寸前貴種となった総会屋におびえ、今も多くの企業で総会屋対策を行っているのです。

穿った見方をすれば、全国の大半の上場企業の株主総会が集中する6月下旬、それに先立って村上逮捕が行われたのも、意味があったのかも知れません。
これで村上世彰が経済界から退場し、これからはますます「ものを言う株主」がいなくなり、企業は安泰、あとは経営者の思い通りです。
でも、これで良いのでしょうかね。

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