「反テロ」の方が恐ろしい
8月23日オランダのアムステルダム・スキポール空港からインド・ムンバイへ向け出発した米ノースウエスト航空の旅客機が緊急着陸し、インド人乗客12人が逮捕された事件で、地元検察は24日テロなどと関係がないことが明らかになったため全員の釈放を決めたと発表しました。
発生当時、「又もやテロ事件」と世間は色めき立ち、日本のマスコミ各社も大きく報道していました。
こういうのを昔から我が国では「幽霊の 正体見たり 枯れ尾花」と表現しています。
私は第一報を聞いた時から、これはテロとは無関係だと確信していました。
機内で12人の若者が、携帯電話で騒いでいたということでした。周りの乗客も「まるで宴会のような賑やかさだった」と証言しています。
どこぞの世界に、航空機を爆破しようとする犯人が集団で大騒ぎする人間がおりますか。本当の犯人なら爆弾を仕掛けて息をひそめてますよ。
まあ機内マナーとしては誉められた話じゃありませんが、テロ容疑で逮捕は狂っています。
インド政府は、オランダ当局に行き過ぎを抗議したようですが当然です。
でもオランダでまだ良かったかも知れません。アメリカやイギリスだったら、射殺されていたでしょう。
イギリスのロンドンで7月21日、27歳のブラジル人電気技師が警察官に射殺され事件は、まだ記憶に新しい。
当初英国警察は、行動と服装(爆弾を隠し持っていたようだ)が不審だったと発表しました。
その後の地元TVが現場検証写真や目撃者の証言に基づいて報じたところによると、事件当時は薄いデニム姿で、地下鉄駅の改札を定期で通過。列車がちょうど入ってきたため走って車内に乗り込んだということです。着席してまもなく、追いかけてきた警察官に至近距離から射殺されました。
行動も服装も、何も不審なことはない。
地下鉄の座席に座っていたこの青年は、頭に7発の銃弾を受け殺害されました。7発ですよ。
こうなってくると、8月10日に起きたロンドン・ヒースロー空港での爆破未遂事件も、本当だったかどうか分かったもんじゃない。
この件に関してブレア首相は、「もし男性がテロリストで、その行動を警察が阻止できなかったら逆の批判が出ただろう」とコメントし、警察当局を擁護しました。
この論理でいけば、テロリストと間違えられる方が悪いのであって、捜査当局が疑わしいと判断すれば殺しても構わないということで、とても民主国家とは思えませんな。
「反テロ」を口実に、アフガニスタンでイラクでレバノンで数万人、数千人の罪の無い民間人が殺されました。
イラクでは大量破壊兵器は見つからず、反対にアメリカやイスラエルがその大量破壊兵器でもって沢山の人々を殺害しました。
テロによる犠牲者より、「反テロ」による犠牲者の方が遥かに多いのは歴然としています。
イスラエルのように宣戦布告も無しに他国に侵入し爆弾で民間人を殺戮する、これこそ国家による「テロ」ではないか。
テロかどうかはアメリカが決めるというのも変な話です。
反米=テロとう論理は、どう考えてもおかしい。
もう一つ心配なのは、一連の事件の影響で、欧米でのアジア人に対する差別や蔑視が一段と強まるのではという懸念です。
以前JTBの添乗員から聞いた話ですが、9・11以後この添乗員の扱いだけでも、日本人ツアー客が米国入国を拒否された例が2件あるそうです。
本人たちも特に心当たりが無く、強いていえば一人は中東へ頻繁に旅行していたこと、別の一人は数十年前の学生時代に反米デモで逮捕されたこと、それしか原因が思いつかないそうです。
何だかアメリカも、昔のソ連みたいになってきましたね。
私も好きでよく海外に出かけますが、どう考えてもテロにあうより、「反テロ」の被害にあう確率の方が高そうです。
「なにせ目付きが悪いアジア人だったので・・・」などと後になって言われないように、気をつけます。
なに? 悪いのは目付きだけじゃないだろうって?
放っといてくれ!
最近のコメント