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2006/09/21

寄席な人々【観客編】

Yose田舎芝居の興行も昨日で終わり、台本通りの新総裁の誕生。これから1週間位はご祝儀番組が続くでしょうから、少々ウンザリ。

芝居だろうと音楽だろうと、ライブというのは演者と観客が作り出すハーモニーです。良い舞台には良い観客が必要です。
特にお客の反応で演目まで変える寄席の世界では、観客の役割は大きい。
それ以前に、ある程度の客が小屋に入っていなくてはいけない。
私が経験したひどいケースで、お客が4人ということがありました。こうなると、どうしたって熱演は期待できません。芸人よりお客の方が緊張してしまう。
昨今の寄席ブームでは考えられないことですが。

寄席芸人にとっては、客が笑ってくれるかどうかは一番気になりところです。
私が子供のころ寄席に行き始めた当時、近所にいた若林さんという中年の女の人がよく一緒でした。
この人は、絶対に笑わない。なん時間寄席にいてもニコリともしない。周りが大爆笑している時、ついつい若林さんの顔を見てしまうのですが、やはり笑っていない。
それでも若林さんは、寄席が大好きなんです。

当時の末広亭の常連に、もう一人中年の男の人で絶対に笑わない人がいました。ああいう人は、後ろから行って、腋の下をくすぐるしかないですね。
一緒に見てるこっちも気になって、ちょくちょくその人の表情を観察するようになります。まして高座の芸人は気になって仕方がないでしょうね。
笑わないのに寄席は好き、色々な人がいるものです。

反対に笑い過ぎる人、これも又困ったものです。
先日鈴本演芸場ですぐ後ろに中年のご婦人たちが座っていましたが、この人たちが実によく笑う。というより、殆ど笑い続けていまして、そうなるとこちらが高座に集中できない。
演者の方だって面白くない場面で大笑いされると、やりにくそうです。
私が持っている古今亭志ん生のCDで、一人の女性客の甲高い笑い声が殆ど切れ目なく続いていて、好演がぶち壊しになっています。

ちょっとタイミングがずれて笑う人、これも噺の流れを妨げます。
三遊亭圓生の高座で、マクラで圓生が小咄を入れた時のことです。
中国の老子という人は80年間母親の胎内にいました。ある時弟子が、「先生、母の胎内というのは、どういうところですか?」と聞くと、老子いわく「まるで秋の季節の様なところだ」との答え。
「そりゃまた何故に」という問いに答えて老子いわく、「時々下から松茸が生えてきた」。得意の艶笑(圓生)噺です。
これを聞いていた女性客が、2-3分過ぎてから意味が分かったらしく、次の話題にはいって後に急に大声で笑い出し、圓生が困っていました。

昔の落語の録音を聴いていると、子供の笑い声が聞こえます。
私も小学校2年生のとき、初めて寄席に行きましたが、以前は小さな子供がよく寄席に来ていたものです。
人形町末広は桟敷でしたので、親子4人連れがお握りとポット(当時は魔法ビン)持参で見に来ていたりすると、微笑ましかったですね。
ああいう子は、絶対に非行になりません。
教育基本法ウンヌンより、先ず子供を寄席に連れて行きましょう。
人生で大切なことは、全て寄席で教えてくれます。

もっとも、芸人から見ると子供はあまり歓迎されないようです、「ジャリ(子供の符牒)はうるさいね」ってな具合でね。
色物で大変な人気があった、柳家三亀松という有名な芸人がおりました。この人は音曲の芸人ですが当時の大看板で、寄席で度々トリを取っていました。

ある時三亀松が、末広亭で昼夜のトリに上がって、全く同じネタをやったことがあります。
まだ8歳くらいだった私が最前列で立ち上がり、隣の母に「この人、昼と同じことをやっているから帰ろう」と、退場しました。
その後高座でこの三亀松が、「子供がいるとやりにくい」とよくぼやいていましたが、あれは私のことだなと思いました。
子供は権威なぞ認めず、感じた通り行動するので、芸人としてはやりづらいのでしょう。

酔っ払った観客が減ってきたのは良いことです。
酔ってヤジを飛ばし、時には芸人と口喧嘩になったり、客同志が怒鳴りあうという光景は、すっかり影をひそめましたね。
その代わり、時々携帯電話が鳴る、これは困ったものです。
携帯が初期のころ、客席にかかってきた携帯電話をとり、落語家が一席伺っている最中に座席で通話しているのを2度見ました。
先日の内田光子リサイタルでも、演奏中に携帯の呼び出し音が鳴っていました。
ああいう人は、今後劇場への立ち入り禁止処分にして欲しいですね。

良い芸人を作るのも、良い舞台を実現するのも、偏に観客の力です。
お金を払って芸に貢献する、これぞ贅沢の極みです。

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