憧れの「内田光子」を聴きに行く
竹中平蔵の突然の議員辞職ですが、どうやら安倍新内閣からお呼びがかからないと見ての行動のようですね。
大臣を目指して議員になる人は多いですが、大臣のためだけに国会議員になったのは、憲政史上この竹中が初めてでしょう。こうした職業倫理観がない人物が国政を牛耳っていたということは、呆れるしかありません。
これからは、国会議員になるためにプロレスラーになんてね、それも何だかなあ。
閑話休題。
今最も海外で活躍している日本人演奏家といえば、先ず内田光子の名が上げられます。モーツァルトのピアノ曲では、世界最高の弾き手の一人であることに異論がないでしょう。
9月16日サントリーホールで、その内田光子ピアノリサイタルが行われ、初めて憧れの内田光子さんをナマで見てきました。
チケットが入手し難いとよく言われていますが、今回は1階のほぼ中央という絶好の席が確保できました。
会場入り口で、演奏者と演奏曲目解説とが書かれた小さなプログラムが配布されましたが、これは良いですね。他の演奏会でも是非見習って欲しいところです。
ただ音楽評論家というのは、難解な文章を書く人が多いのには閉口します。例えば今回の解説書でもこんな一節がありました。
「アダージョ部分の冒頭はユニゾンと溜息音型の対話からなる。ここで現れる『嬰へート』の動きとバスの半音階進行は主調のハ短調を脅かしているといえるが、アダージョ全体も調的な安定をことごとく拒んでいく。」
ナンダこりゃあ、今日来たお客さんは皆、この文章を理解できるんだろうか。まるでコンピュータで和訳したような文章で、マトモな日本語になっていない。音楽の研究もいいが、日本語の勉強をして欲しい。
内田光子さんとは関係のない話ですけど。
演奏家の紹介の冒頭で、シカゴ・トリビューン紙の記事が掲載されています。
「内田は、内田以外の何ものでもない。何を演奏しても、そのエレガントで深遠な音楽の解釈が、知性と情感の絶妙なバランスを現出させる。」
ふんふん、これなら低レベルな私でも、そうかそうかと納得できます。
難しい理屈はともかく、内田光子のディスクを聴くと、真っ先に感じるのが音の美しさです。
当日の演奏曲目は、いずれもモーツァルトのピアノ曲です。
幻想曲 ハ短調K475
ソナタ ハ短調K457
アダージョ ロ短調K540
(休憩)
ソナタ ヘ長調K533/K494
ソナタ ニ短調K576
それにアンコールの小品2曲を加えて、正味2時間を越す演奏会となりました。
休憩後、美智子皇后が来場、盛んな拍手を受けていました。
内田光子さん、一口でいえばとにかくカッコイイ、歩き方、お辞儀の仕方、演奏の姿勢、どれをとっても優雅で洗練されています。
演奏家といえども、やはり見た目は大事です。
演奏技術をウンヌンしたり、個々の曲ごとの解説をする力はありませんから、全体印象にとどめます。
ソナタにせよ、協奏曲にせよ、モーツァルトのピアノ曲はいずれも美しい旋律を有しています。
人間というものは、かくも美しい音楽を創り出せるものかと思ってしまいます。
それでこの日の内田光子の演奏ですが、今まで経験したことのないような音に感動しました。
人間というものは、かくも美しい音を紡ぎ出せるものかと。
美しい音楽を、最高の演奏で聴ける贅沢さです。
昨夜は久々に幸せな気分で家路につきまました。
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