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2006/10/21

「代理出産」の光と影

Mukaiaki前回の記事で採りあげた奈良県の町立大淀病院、今年3月の記事で採りあげた福島県立大野病院での妊婦の死亡事故は、共に産婦人科医師の医療ミスが原因でした。
昔に比べ妊産婦の死亡率は低下しているとはいえ、出産が生命の危険を伴うものであることに変わりはありません。
この他にも、妊娠中や出産後に体調を崩したり、場合によっては後遺症が残ることもあり、妊産婦には常にそうしたリスクがつきまといます。

タレントの向井亜紀が、2003年に米国での代理母出産により誕生した双子について、東京高裁が品川区に対し、出生届を受理するようにという判断を下したのは、記憶に新しいところです。
加えて10月15日には、長野県で50代の女性が娘の代理母として孫を出産したというニュースが飛び込んできました。
当事者である向井亜紀や国内の出産を公表した諏訪マタニティークリニックの根津八紘院長の下には多数のお祝いや、激励の声が寄せられていると報じられています。
有名人のことで話題性もあり、代理出産に関する論議が再び高まっており、世論調査の結果でも代理出産に賛成する人が多くなっています。

先ず代理出産とはどういうものかですが、下記の図のように大きく分けて二つに分かれます。
現在公表されている国内の例は、いずれも右側の「ホストマザー」に限られており、このエントリーでもそちらを対象に議論を進めたいと思います。
Dairishussan

私はこの代理出産に関する議論が、事情があって子供を生むことが出来ない夫婦が、代理出産により赤ちゃん授かったという側面にのみ光が当てられ、代理に出産する女性の側の立場に立った議論が忘れられているように思えます。
私は男性ですから無論経験はありませんが、妊娠・出産というのは妊産婦には大変な負担であることは良く分かります。
妊娠したら翌日あたりにポンと生まれてくれれば、女性はどれほど助かるでしょう。
それでも自分の子が得られる喜び、愛するパートナーとの間の愛の証としての生命の誕生のために、辛い日々を耐えることが出来るのだと思います。
どこに、他人のために命にかかわるようなリスクを負い、苦労を積極的に買って出る人がいるでしょうか。

根津院長のHPを読むと、国内の代理出産の例では代理母は肉親であり、それは本人も了解したものであり、人間愛に基づくものだと書かれています。本当にそうなのでしょうか。
でもその肉親というのは妻の妹や母という、妻の側の肉親に限られています。
不妊の娘や姉・妹に代わって、いわば身代わりとなって代理母出産したというのが実状でしょう。
もし本当に人間愛であるなら、夫の側の肉親が生みの母を引き受ける例もあるはずです。
子供が出来ない妻の家族の側の、一方的なプレッシャーの結果としての行為と考えるべきで、これを人間愛などとキレイな言葉で飾らないで欲しい。

代理母を引き受けた本人はともかく、その家族はどうなのでしょうか。その夫や恋人は、果たして理解してくれるのでしょうか。
私の妻が代理母を引き受けると言い出したら、絶対に反対します。恐らく世間の大半の男性はそうすると思います。
代理出産の論議の中に、代理母となる女性や家族の側の問題がすっぽり抜けているのではないでしょうか。

肉親がダメなら、他人に報酬を渡して依頼するしかありません。
海外での代理母では1千万円単位のお金がかかるそうですから、これでは経済的に恵まれている人しか恩恵に浴すことが出来ません。
結局お金で自分の子供を買うという結果になりかねません。

根津院長のHPでは、更にこうしたことが述べられています。
『「危険な側面を持つ妊娠・出産を他人に課すことはまかりならん」という意見があります。ならば、何故愛する妻に男は子供を生ませるのでしょうか。妻を愛しているならば妻は床の間に置いて、愛人にでも子供を生ませるようにでもしなければならない』
私はこの言葉に、根津医師や代理出産進める側の論理が見てとれます。
自分の子を持つということは、危険な妊娠期間、出産を通しての夫婦の苦労、その後の長い子育てを共に体験することにより形作られるものであり、それを血縁やDNAや精子・卵子だけに注目している、そこに問題があるのではないでしょうか。

以前の記事に書いたように、私の母は周囲の数組の夫婦に養子縁組を斡旋しました。
私はいずれの家庭も知っていますが、とても円満で幸せな家庭を築き、普通の家庭以上に親密な親子関係が保たれていました。
血がつながっていなければ、本当の親子関係にはならないなどということはありません。

バイオテクノロジーの発達で、人間の生命までがコントロールされる時代になってきましたが、踏み越えてはならない一線というものがあると思います。
大切なのは血や精子・卵子でなく、人間の心です。

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コメント

私の記事へのTB、ありがとうございました。
こちらへもTBさせていただきたいと思います。
別記事の件ですが、育児の欄の記事拝見しました。
私も祖父母の世話になりながら働いております。
保育園ネタも扱っていますので、よろしければまたご訪問ください♪

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