「必修科目の履修漏れ」騒ぎの陰で
突然ふって湧いたような「高校必修科目の履修漏れ」の大騒ぎって何なんでしょうね。それほど大事なことであれば、なぜ今まで文部科学省は永年放置してきたのか、なぜ今ごろになって問題にしたのか、どうも納得のいく説明がありません。
普通に考えれば、安倍政権が進めている「教育基本法」改正のための布石です。学校も教育委員会もだらしない、こういうことだから教育基本法を改正せにゃならんという理屈になるのでしょうね。
この問題は、現場をあずかる校長自殺という事態まで招きましたが、元はといえば教育の数値目標だの市場原理の導入だのと、学校間の競争を煽ってきた文部行政によって引き起されたもので、従来は見て見ぬふりをしてきた結果です。
「いじめ問題」も同じです。政府がいじめをゼロにしろというから、「それならいじめがゼロということにしておこう」とウソの報告を上げていた、実態はそういうことでしょう。
ここ最近の教育基本法改正を先取りしたような文部行政が、かえって教育現場の混乱を招いているように見えますけど。
その教育基本法改正の国会審議ですが、中身の乏しい論議が続いています。政府与党案と民主党案、比べても大した違いもないので、さっぱり論戦が深まっていきません。
以前の記事で書いたように、安倍総理とその周辺が意図している教育基本法改正の目的の一つは、思想教育です。問題はその理念が正しいのかどうか、本来はその点がもっと議論されないといけないと思います。
教育再生担当の内閣総理大臣補佐官であらせられる山谷えり子(小川 惠里子)センセイは、8月29日に開かれたシンポジウムの席上で、次のような発言をしています。
「真のエリートの条件は2つあって、ひとつは芸術や文学など幅広い教養を身に付けて大局観で物事を判断することができる。もうひとつは、いざというときに祖国のために命をささげる覚悟があることと言っている。そういう真のエリートを育てる教育をしなければならない。」
先の記事で紹介した下村博文官房副長官による、文部官僚の思想信条チェック発言と併せてみれば、今回の教育基本法改正の狙いがどこにあるのか、とても分かり易い。
もう一つの改正の狙いは、教育への「市場原理」の導入です。
安倍首相の「美しい国へ」でも、「サッチャー改革のような国の監査官による学校評価制度」の導入を提唱しています。
しかし当の英国では、サッチャー改革が当初期待していた学力レベルの向上につながらず、逆に教育の荒廃を招いたということで、保守党の内部からも批判の声が上がっているそうです。
例えば入学希望者が上位校の近所に引っ越すようになったため、周辺の地価が上がり、その結果上位校に入学できるのは富裕層の子どもだけになった。
全体を底上げするどころか、地域格差が拡がってしまったという現象が指摘されています。
もう一点、あの森元総理が10月31日付けの新聞インタビューで、「日教組、自治労を壊滅できるかどうかということが次の参院選の争点だろうね。」と発言しています。
これもまた、改正の狙いの一つなのでしょう。
今回の教育基本法改正の狙いである「愛国心」教育と「市場原理」導入が、我が国の教育レベルの向上につながるとは、考えられません。
依然として、日本の教育制度は世界に誇れるものです。
教育が誤った方向に向かわないよう、国会でも本質的な論議を進めて欲しいと思います。
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コメント
はじめまして。ヤメ記者さん経由で参りました。教育基本法がらみでは色々きな臭いと感じますが、10月31日の産経新聞には森元首相のとんでもない発言が掲載されていました。「日教組つぶし」。これ、憲法違反じゃないでしょうか。トラバさせていただきました。
投稿: starstory | 2006/11/03 19:14