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2006/11/06

笑志の今夜はにぎわE

Shoushi11月5日の立川笑志の横浜にぎわい座での独演会、今回で4回目を迎えた。
落語界広しといえどもこの小屋で独演会ができる二つ目は、この笑志だけだろうから貴重な存在。
立川一門では家元以外に、志の輔、志らく、談春、そして笑志とピンでこの規模の独演会を開ける噺家が4人もいて豪勢。やはり家元の指導宜しきだろうか、それとも弟子の素質が良いのか?
この点は、“笑点”に寄りかかっている三遊亭圓楽一門との大きな差である。

落語家がTVで活躍するのを嫌う人がいるのが、決して悪いことではない。人気者になって新たなファンを開拓し、寄席に足を運んで貰うのも大切なことだ。
古今亭志ん朝だって若い頃はTVのレギュラーを持っていたし、ドラマにも出演していた。今の立川志の輔もそうだ。
問題は本業の落語の修業をきちんとするかどうかに掛かっている。
TV人気に溺れて修行を怠れば、林家こん平のように協会幹部になっても、トリ一つ満足に取れないような体たらくに陥る。現在は楽太郎がその気配濃厚だ。

さて当日の笑志だが、胡弓奏者の王霄月の演奏を間に挟んで二席。
一席目で笑志は、精神病院の患者を相手に落語をやった話を枕で。この病院で禁煙運動に取り組み、全員が達成したので何かご褒美に好きなものをと問うたら、一人の患者が今までの人生で一度も誉められたことがないので、表彰状を授与して欲しいと言ったというエピソードが紹介され、ホロリとさせられた。
笑志のいうように、その人たちがまともなのか我々がまともなのか、果たしてどちらか分からない。

落語ファンでもないと立川笑志はお馴染がないと思われるが、先ず良いところは芸風が明るいこと。噺も面白い。それに最近色男が多くなった中で、笑志は面構えも体型も、いかにも落語家向き。
欠点は、人物描写がしっかりしていないこと、結果として噺に奥行きが欠ける。ただこれは本人の芸が未熟なだけであって、これからの精進で十分克服できると思う。まだまだ伸び代のある芸人である。

本題は「幇間腹」(たいこばら)。
大店の若旦那が座敷に幇間(たいこもち)を呼んで、無理やり腹に針を打つ噺。
最近聴いた中では、笑志のこのネタは面白く仕上がっていた。
ただこれは笑志に限らないのだが、幇間がさっぱり幇間らしくない。そうなるとこの幇間の自虐的な可笑しさが伝わってこない。
針が折れた時の若旦那のうろたえぶりも弱い。

二席目の枕は、元の兄弟子である快楽亭ブラック(多分)の近況から。この人の芸名が既に差別で糾弾されそうな名前である。破門の原因となったバクチを今も止められないとのこと、根強いファンがいただけに残念だ。

本題は人情噺の「文七元結」。
歳の瀬が押し迫ってくると、掛けられるネタである。
笑志のこのネタも、全体的には出来は悪くなかった。しかし・・・。
この演題が大ネタといわれる所以は、バクチで身を持ち崩す左官の親方、その女房、親孝行な娘お久、吉原の大見世の女将、その若い衆、大店の旦那、番頭、手代の文七という多彩な登場人物の描写、演じ分けが非常に難しいからである。
笑志はここが弱い。特に女将と旦那に風格が欠ける。
熱演にもかかわらず、もう一つ胸に迫るものがない。
この点は、昨年聴いた立川談春の方に一日の長がある。

100点満点で合格ラインを80点とするなら、この独演会の採点は70点という所だろうか。
もう一息、立川笑志の更なる精進を望みたい。

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