犬の災難
久々にタイへ出掛けてきましたが、観光客の態度が一変したことがあります。それは、現地の犬に誰も手を出さなくなったことです。例の狂犬病騒ぎの影響ですね。
日本人は犬が好きな人が多いのか、海外の観光地でも犬を見つけると撫ぜたりさすったり、エサを与える光景をよく目にしたのですが、今回は犬をいると皆さん避けて歩いていました。心なしか犬たちも寂し気で、所在無さそうにしていました。
犬にとってみれば、つい先日までチヤホヤされていたのが、急に掌を反したように冷たくされるので、戸惑っているようです。
何事も注意するに越したことはありませんが、過剰反応するのは考え物です。
鳥インフルエンザが流行ると、急に鶏肉を食べなくなる人が増えてきます。鶏肉でインフルエンザが伝染することは有り得ないのにです。
ニワトリから人間への感染にしても、生きたままのニワトリと接触する職業の人を除けば、全世界的に見て感染例は極めて稀です。
日本人が感染する可能性など、10億円の宝くじに当たるより確率は低いでしょう。
狂犬病や鳥インフルエンザに注意することは必要ですが、過剰に恐れることはない。
それより人間のインフルエンザに罹って死亡する確率の方が遥かに高いし、交通事故に出遭う危険性に注意を払うべきです。
可能性という時には、常に確率を考慮する必要があります。
例えば隕石に当たって死ぬ可能性は、いつでも誰にでもありますし、避ける方法はありません。それでも隕石の落下を心配して、出歩かないという人はいないでしょう。確率が低いからです。
確率を無視し、可能性のみ誇大に強調すると、かえって判断を誤ります。
これは政治、外交、防衛問題などにも言えることですね。
犬の話題に戻りますが、ひところ北京オリンピックの関係で欧米人が、中国で犬を食う習慣があることを嫌悪しているとの報道がありました。中国当局もこれに応えて、現在犬を食べないように指導しているようです。
しかしこんな事は、本来大きなお世話です。食文化というのは国によって大きく異なるのであって、他国の人が何を食べようと、あれこれ指図する権利は誰にもありません。
クジラを食うのはけしからんと、多数決で決められのは実に理不尽です。
それなら将来インドが天下を取り、仮に牛肉を食うことを禁止すると言い出したら、欧米人は素直に従うのでしょうか。
そう考えれば、自分達の言い分がいかに横暴か分かるというものです。
日本人もかつては犬を食べた時期がありました。終戦後、近所の大人たちが犬を殴り殺しているのを見たことがあります。「美味そうな赤犬だ」と言ってましたから、食べたのでしょう。
猫も肉は食べなかったようですが、スープの出汁にはしていたようです。ラーメンや中華料理に使われていたというのは、親父から聞かされました。
食べ物の無い時代には、食材を選んでいられなかったのです。
最近の日本での「崖っぷち犬」の大騒ぎや、「ネコ殺し」の新聞コラムへの抗議ぶりを見るにつけ、隔世の感があります。
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タイでの今年になってからの狂犬病による死者は12月初めで21人と去年の年間死者数20人を越えました。
暴露後(狂犬病感染犬などに噛まれた後)予防接種件数もこのところ毎年数10万件あるようです。
この状態に危機感を強めたタイ政府は、このところ数回「狂犬病に対する注意」と言うキャンペーンを実施しています。これを受けて在タイ日本大使館も在留邦人に向けて注意喚起のメールを発信しました。
この中の注意事項によると、狂犬病ウィルスは唾液中に高濃度に存在しているので咬まれた場合だけでなく、例えば傷口などを舐められた場合も感染しますので注意して下さいとのことです。
今回のキャンペーンの有無に関わらずタイを始めとしたアジア諸国では犬が要注意動物であるのは常識です。
得体の知れない犬に手を出すなんていうのが自殺行為なのは常識なのです。
タケチャンマン自身も不用意に手を出す日本人観光客を眼にしてハラハラしたものです。
世界の中で狂犬病が絶滅した国はほんの僅かです。
そのほんの僅かの国の中の常識が世界中で通用すると勘違いする世間の狭さが今回久しぶりに国内で発生した患者によって少しでも改善されれば亡くなられた方の存在も無駄ではなかったと言えます。
少なくとも犬に対する態度については過剰反応ではなく、無知からの脱却なのですよ、HOME9さん!
投稿: タケチャンマン | 2006/12/15 15:42
タケチャンマン様
コメント有難うございます。
確かに海外に出て、犬に触らないのは鉄則ですね。
でも熱し易く冷め易い国民性からいくと、どこまで続けることができるのやら。
投稿: home-9 | 2006/12/16 10:10