「にっかん飛切落語会」第308夜
久々の外出、そして久々の落語会は11月29日イイノホールで行われた「にっかん飛切落語会」。
この会は、レギュラーの二ツ目の若手に、人気落語家が加わるというメンバー構成の落語会だ。
先ずはレギュラーの古今亭志ん太「きゃいのう」。
最近高座にかかることが少ない珍しいネタだ。大部屋の役者の悲哀をテーマにした芝居噺で、登場人物が多いが笑いが取れない難しいネタといえる。
間違いが多く未だネタが見についていないが、一生懸命演じていて好感が持てる。
何よりこういう難しいネタに挑戦する姿勢を評価したい。
林家たい平「二番煎じ」。
寒くなると高座にかかる噺である。
たい平は古典を真っ直ぐに演じ、いつ聴いても明るく爽やかな高座が心地良い。
この演題で注文が二つ。一つは番小屋から夜回りに出るところで、もっと凍て付くような寒さを表現して欲しい。登場人物が寒そうに見えない。
二つ目は、番小屋に戻って飲み食いする場面が、少々あっさりし過ぎている。未だ酔いが回らない内に役人が現れてきた。ここはもっと宴席を盛り上げた方が良い。
中トリは桂歌丸「井戸の茶碗」。
歌丸は人気番組の“笑点”旧メンバーで、唯一人落語の修業をしっかりと積んできた成果が、ここ数年現れている。
浪人の千代田ト斎に、もう少し風格が欲しいところだ。
仲入り後、レギュラーの桂快治「笠碁」。
レギュラー陣の最年長らしく、落ち着いた雰囲気の高座だった。師匠であった文治とは随分と芸風が違う。
碁敵の、二人の大店の旦那に貫禄が出てくれば、申し分ない。
トリは立川志の輔「ディアファミリー」
枕から客席を志の輔の世界に引き込む芸の力は、さすがである。古典、新作、この人は何をやらしても上手い。サラリーマンの経験が生きていて、新作の登場人物にリアリティがある。
実は独演会以外で志の輔を見たのは初めてであるが、他の出演者を圧する存在感で、格の違いすら感じた。
志の輔が志ん朝亡き後の、落語界の第一人者であることを実感させられた高座であった。
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