小泉前総理は郵政民営化を通すにあたり、その将来をバラ色に見せていましたが、当ブログでは国民生活にとって良いことは何も無いと疑問を呈してきました。
民営化を前にして郵政公社が局外ATMのおよそ3割を撤去する計画であり、簡易郵便局のついては2006年末で約300局が一時閉鎖されました。
今後、民営化が本格的になればこうした傾向は更に強まり、採算の悪い過疎地の施設切捨てが一層進むと思われます。
政府の言う事を鵜呑みにしていると、ロクなことは無いという見本ですね。
環境省が音頭をとって、レジ袋を減らす、有料化するという運動が展開されており、ここのところ毎日のようにTVや新聞紙上を賑わしています。
一部の地域や販売店では、レジ袋を有料化し始めているケースもあります。
小池百合子前環境大臣も、一時期「もったいない風呂敷」とやらをデザインしてご満悦でしたね。
環境保護について反対の人は誰もいないでしょうが、どうもこの話、ある種の胡散臭さを感じています。
レジ袋が環境問題の中心的課題であるがごとき宣伝に、眉に唾をつけて見る必要がありそうです。
先ずレジ袋が膨大な量の石油を消費し、大量のゴミとなっているということですが、事実はどうなのでしょうか。
ちょっと面倒な数字が並びますが、辛抱下さい。
先ず石油消費量の計算です。
①レジ袋の消費量 305億枚/年
②レジ袋1枚を作るために消費される原油量18.3ml(内訳:製品に11.5ml、製造過程に6.8ml)
③この18.3ml/枚に305億枚を掛けると、レジ袋に消費される原油量が算出できる。
レジ袋の消費量を原油に換算すると、年間55.8万klとなります。(内訳:製品に35,2kl、製造過程に20.6kl)
一方国内で使われるレジ袋の供給は、次の通りです。
国内97千トン+輸入172千トン=合計269千トン(国内生産比率36%)
先の原油量55.8の36%は20になりますから、
レジ袋の消費に対応する原油使用量は、20万kl/年となります。
我が国の原油輸入量は、およそ2億4千万kl/年ですから
レジ袋に使われる原油の割合は、0.08%に過ぎません。
仮にレジ袋を完全になくしても、原油換算では1000分の1以下の効果にしかなりません。
政府が宣伝している、レジ袋のために石油一日分を使っているというのは誇大です。
次に廃棄物の量についての検討です。
①レジ袋の重量が平均で9.9g/枚とされているので、これに消費量305億枚をかけると、302千トン/年になる。
②レジ袋の供給量から推定した場合、先の数字を採用すれば269千トン/年になる。
いずれの数値を採っても、全量が廃棄されたとしておよそ年間30万トン前後と推定されます。
一方日本の廃棄物の総量はおよそ5億トンですから、仮にレジ袋を全部無くしたしたところで0.06%しか寄与しません。
環境省のHPでは60万トンという数字を使っていますが、これは誇大です。
つまりレジ袋を仮に全部やめたところで、原油の使用量も廃棄物量も、0.1%以下しか寄与しないということです。
環境省のHPでは、レジ袋が「容器包装全体の量では、容積で家庭ごみの6割を超えています。」と書かれていますが、常識的にありえない数字です。
第一、現在の家庭ごみ収集の際に、各家庭は袋(多くはポリ袋)に包んで出すことが義務づけられており、ポリ袋が一定の容積をとることは避けられません。
これはレジ袋とは違う次元の問題です。
それでも原油の0.08%、廃棄物の0.06%でも、減らせられれば良いじゃないかという主張はあると思います。
処が、そう単純にはいきません。
それには二つの前提条件があるからです。
①レジ袋をやめて、何も使わずに商品を持ち帰る。
②レジ袋が有効利用されずに、全量ゴミとして廃棄されている。
レジ袋を使わなくなると、多くの場合買い物袋を使うことになると思われます。
そうなると、買い物袋(多分合成繊維製)を製造するのに使われる原油の量、やがて捨てられる買い物袋の廃棄物量が問題となり、その分レジ袋をやめた効果が減殺されます。
次に使い終わったレジ袋は、ただ捨てられているのでしょうか。
これは自治体によっても条件は異なるでしょうが、私が住んでいる自治体では、分別(不燃)ゴミはレジ袋に入れて出して良いことになっています。
我が家の例では、レジ袋は大きなものは分別ゴミの袋として、小さなものは生ゴミの袋として使用しており、全量活用しています。
もしレジ袋が無くなれば、市販のポリ袋を購入して使うことになり、我が家のような家庭の場合は、原油の節減にも廃棄物の減量にも全く役立ちません。
レジ袋を無くす、あるいは減らそうとする場合の効果は
(レジ袋の影響)―(置き換えた品物の影響)=本当(正味)の効果
で判断しなくてはなりません。
企業の原価低減の計算でもそうですが、こうした置き換えをする場合は、プラス要因とマイナス要因を算出して比較しないと、本当の効果は判定できません。
費用が減るはずだったのが、やってみたら却って増えてしまったという経験は、多くの方がお持ちでしょう。マイナス要因を考慮しないと、そういう事も起こりえます。
これだけははっきりしているのは、次の点です。
①レジ袋を有料化(現在のテストケースでは5円/枚)することにより、仮に半分に減ったとして
(305億枚÷0.5)X5円/枚=762.5億円
ざっと760億円が販売店の収益増加となり、その分は全額消費者が負担することになる。
②レジ袋を半分にすることによる、買い物袋の売上げ増加。これも販売店の収益増加となり、やはり全額消費者の負担となる。
つまりレジ袋キャンペーンは、消費者側に一方的負担を求め、企業側は腹が痛まないばかりか収益増加が見込める実にオイシイお話になっています。
レジ袋有料化が、環境問題をネタにして金を儲けるという、一部の環境ビジネスに利用されているのでなければ良いのですが・・・。
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