「密告社会」になるのはゴメンだね
新聞報道によれば、警察庁は事件に関する情報を知った第三者が匿名で犯罪情報を提供した際に、その程度に応じて情報料(謝礼)を渡す制度の導入を検討しており、今秋にも試行する予定とのことです。
米国で生まれたクライムストッパーズ(CS)制度を下敷きにしているようです。
情報提供者と警察の間に民間組織を仲介させ、気楽に通報してもらうシステムを想定しています。
早くいえば「密告」に報酬を支払うという制度ですね。
取り敢えずは、売春や人身売買に限定するとのことですが、将来的には対象範囲が拡大する可能性が高いと思われます。
治安の悪化は困りますが、密告社会はもっとイヤです。
以前から何となくイヤな感じをしていたのが、最近目に付く犯人通報に対する懸賞金です。
凶悪事件にあわれた被害者の家族が、一日も早く犯人を見つけて欲しい、事件を風化させたくないというお気持ちは良く分かります。しかし情報提供に謝礼を払うというのは、正しい方法なのでしょうか。
警察は懸賞金により事件が解決した例として、松山市でおきたホステス殺人事件を盛んに宣伝していますが、この時の情報提供者は懸賞金目当てで通報したわけではありません。
事実を曲げて効果を強調するところに、何か特別の意図を感じてしまいます。
我が国では伝統的に、警察に情報を提供したり証言したり、捜査に協力したりする場合にも、無償で行うという美風があります。
そのせいか日本の警察は、もちろん不祥事はありますが、他国と比べるとクリーンだと言えるでしょう。
情報提供や捜査協力に金が絡むようになれば、必ずそこに利権が生まれ警察は腐敗します。
警察庁が駐車禁止の民間委託を始めた際にも、イヤな予感がしておりました。この制度は見方によれば、違反者を見つけ摘発すれば、民間人でも報酬が得られるという制度といえます。
私は車の運転をしないので、日中街を歩いて移動することが多いのですが、ほぼ毎日10件程度の交通違反を目撃しています。携帯カメラも持っていますので、証拠写真の撮影が可能なケースもあります。
もし仮に、こうした交通違反への民間通報制度があれば、膨大な違反摘発が実現できるし、恐らくは交通事故も減るのは間違いないでしょう。
飲酒運転なども、密告制度ができれば、違反摘発は容易になります。
でもそんな社会になる事を、皆さんは望みますか?
実は情報提供者に対する報酬支払いは、我が国では昔から行われています。
主に公安関係ですね。
良く知れているように、左翼政党や反政府組織、労組などにスパイを送り込み、日常的に情報収集を行っていますが、勿論これらに対しては報酬を支払っています。
捜査費用の名目で支出されるこれらの費用は、当然ながら領収書は不要であり、明細も公開されません。この費用の多くが、実は不正な裏金や私的な流用に使われていて、全国の警察で問題になったことはまだ記憶に新しいところです。
私は警察庁が企図している匿名通報制度の本命は、公安、治安関係の情報提供ではなかろうかと推定しています。
犯罪を減らすという名の下に、かつての東ヨーロッパのような密告社会、相互監視社会になることだけは、真っ平ゴメンです。
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» 兵庫県警の58歳警部、ひき逃げで逮捕…飲酒運転か [総合情報ニュース徒然草]
追突事故を起こした尼崎の警察の警部が飲酒運転の疑いがあるとされる今日の記事より。
(引用記事は、下部に掲載)
最近、耳にすることがある警察官の飲酒運転だが、今日の記事も飲酒運転の疑いがあるという警察警部についての記事。
この警部については、まだ飲酒運転の「疑い」があるのみだが、追突された被害者が警察に連絡すると口にした途端逃げたことから、その可能性は強いのではないかと思う。
ただ、もし飲酒運転の疑いが晴れたとしても、事故現場から逃げ、ひき逃げをおかしたことは変わ...... [続きを読む]
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