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2007/02/18

他人事ではない、映画「それでもボクはやってない」

Soredemo男性であれば、いつでも誰でも痴漢の被疑者になり得ます。
以前会社にいた同僚が通勤電車内で痴漢の疑いをかけられ、随分と悩んでいたことがあって、痴漢の冤罪事件について考えさせられました。
それと、私は若い頃ある民事事件に係わり、証人として法廷に立った経験があるので、裁判制度に強い関心を持っています。

周防正行監督が11年ぶりにメガフォンをとった作品は、痴漢の冤罪事件を題材にして、日本の刑事裁判の実態を鋭く描く意欲作となりました。

ストーリーは、主人公のフリーターが、満員電車で女子中学生から痴漢の疑いをかけられます。駅員室に連れて行かれた青年は、身に覚えのない痴漢を頑強に否定しますが、間も無く警察がやってきてそのまま留置されます。
あくまで否定し続ける青年は長期間勾留され、やがて起訴されて裁判を受けることになります。
ようやく彼が痴漢をしていなかったと証言してくれる女性が現れ、無罪を確信して判決を迎えるのですが・・・・・。

映画の中で語られている通り、日本の刑事裁判の99.9%は有罪判決です。又被告が無罪を主張した裁判でも、97%は有罪判決が出されています。
つまり刑事事件で起訴されれば、先ず有罪になってしまうというのが、我が国の刑事裁判の実情です。
日本においては「疑わしきは罰せず」とは絵空事で、原則は「疑わしきは罰する」なのです。

この理由も映画の中で語られているように、有罪になれば検察や警察の顔が立つ。無罪なら被告が喜ぶ。裁判官としてはどっちを採るかといえば、もちろん前者です。
一審で無罪判決を出しても、上級審で覆されるケースが多く、そうなると裁判官自身の査定に係わります。
もう一つ、裁判官の能力が処理件数で評価される結果、早く判決を出そうとする傾向があります。
あれやこれやで、有罪判決を出すのが無難という結論になるわけです。

我が国の過去の冤罪事件で、最も大きなものは「松川事件」でしょう。
事件の経過は省きますが、一審では被告の中の5名が死刑、5名が無期懲役という判決でした。
最終的に、被告たちが無罪となる決定的な証拠を検察が隠していたことがバレて、最高裁で差し戻しとなり、14年の歳月を経て全員の無罪が確定した事件です。
この事件の最高裁では、確か1票の差で差し戻しとなったと記憶しています。もしあと1人の裁判官が有罪と判断していたら、彼らは死刑になっていた可能性が大きいわけで、そう考えると慄然とします。
それと当時、中央公論や文藝春秋といった総合雑誌が、弁護団側の意見を積極的に掲載していたことも、大いに影響したと思われます。
今では全く期待できないですけどね。

この他、留置所での非人間的な取り扱い、罪を認めれば直ちに釈放される一方、否認していると微罪でも数ヶ月間勾留されてしまう現在の制度についても、リアルに描かれています。

日本の刑事裁判のあり方は、以前から問題とされてきましたが、なかなか大きな世論にならなかった。被告に対する非人間的な取り扱いについても、悪い事をしたんだから当然という空気がありました。
しかし、私たち誰でもがその被告席に立たされる可能性があると考えると、決して今のままで良いとは言えません。
そうした中でこの映画が公開され、沢山の人々が刑事裁判の実情を知ることは、とても意義のあることです。

映画の出来ですが、ネットで見ても評価が分かれているようで、テーマを重視して観た人は評価が高く、映画そのものを評価した人は点数が辛い。
概ね妥当な所だと思います。

出演者では主人公の友人役の山本耕史が爽やかな演技で好演。留置房のオカマ役の本田博太郎の怪演に存在感があり、事件の判決を下す裁判官役の小日向文世にリアリティがありました。
他に痴漢被害者の女子中学生役の柳生みゆが可憐。

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コメント

こんばんは。
記事の内容と直接関係が無く恐縮なのですが、明日鹿児島県志布志市の選挙法違反に関する判決が出されます。被告全員が無罪を主張し、警察のでっち上げではないかと言われているこの事件。明日は有給を取り、傍聴希望者の列に並ぶ予定です。

投稿: | 2007/02/23 00:01

コメント頂いた鹿児島県志布志市の選挙法違反事件は、存じあげております。
以前にTVの報道で「踏み字」事件について知り、随分とひどい取調べだと思っていましたら、先日のこの件に関しては勝訴が確定したそうで、本当に良かったですね。
全員無罪の判決が出されえるよう、お祈りします。

投稿: home-9 | 2007/02/23 05:28

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