柳家喬太郎独演会「前座噺特集その2」
何だか久しぶりに寄席・落語のエントリーを書く気がします。
2月2日横浜にぎわい座での柳家喬太郎独演会は、きっと前回が好評だったのでしょう、2回目の前座噺特集という趣向です。
前座噺というのは、落語家に入門して最初に教わるネタで、登場人物が少なく短いものが多い。
落語の基本のキですが、これをしっかりと身に付けるかどうか、その後の芸に影響します。だから上手い落語家は、前座噺をさせてもやはり上手い。下手な人は下手。
その典型は、三代目三遊亭金馬で、この人の前座噺は今でも教科書になるような芸でした。
喬太郎クラスの真打ですと、普段の寄席でこうしたネタをかけることは先ず無いし、独演会でもうやらない。いわば今回のような企画は、喬太郎ファンにとっては貴重な機会となるものです。
前回と同様に、喬太郎は本物の前座とゲストを間に挟んで、開口一番、仲入り前、トリの3席で伺いました。
ゲストは前回と同じで、柳亭左龍で「百川」。
これはなかなかの収穫でした。人物描写がしっかりとしていて、特に奉公人に百兵衛が良く出来ていました。
落ち着いた高座で楷書体の「百川」、結構でした。
喬太郎の独演会のゲストは、色物以外は殆どが一門の噺家です。きっと一門思いなんでしょうね。
喬太郎の1席目は「寿限無」。
例によって長いマクラからネタへ。ちょっと崩した「寿限無」にするかなと想像していましたが、予想に反して正統派の「寿限無」でした。
喬太郎の特長は、登場人物の性格描写が優れているところです。
こうして演じると、「寿限無」も面白く聴けるんだなと再認識しました。
2席目は「子ほめ」。
典型的な前座噺で、10回のうち8回は前座がやるネタです。
いつも面白くない「子ほめ」を聴いていると、次第にこの噺の面白さを忘れてしまっていたようです。
普段お世辞を言ったことがない人間が、急に愛想を良くすることで起きる笑いという本筋の可笑しさを、これまた再認識させてくれた喬太郎の高座です。
3席目は「松竹梅」
結婚式のご祝儀で、やりなれない事をして失敗するというストーリーですが、他に「高砂や」があります。
その「高砂や」に比べて「松竹梅」は笑いが取りにくいせいか、あまり高座にかかりません。
そういう意味では、結構難しい噺と言えると思いますが、喬太郎は折り目正しく演じて、観客の笑いを誘っていました。
松さん竹さん梅さん3人の人物の描写も優れていて、今まで聴いた中で最高の「松竹梅」でした。
今回初めて分かったのですが、前座噺というのは、町内の若い衆が隠居宅を訪ね、何かを教わるが失敗するという共通パターンを持っているんですね。
喬太郎は終演予定時間を大幅に超える熱演で、客を堪能させました。
3席たっぷり、決して手を抜かない姿勢は高く評価されます。
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