「反捕鯨」運動の狂気
過激な「反捕鯨」運動は、まさしく常軌を逸しているとしか思えません。
例えばカナダ人でシー・シェパード号の船長ポール・ワトソン氏のHPには、「忌まわしい帝国主義的日本の海賊捕鯨船の、法外でとてつもないおろかな行為から、私たちはできるだけ多くのクジラを守り、保護しなければならない」と書かれているそうです。
このワトソン船長を支援しているオーストラリア人「ブルー・タング」醸造所の所有者ジョン・シングルトン氏は、約2300万円の資金を提供し、更に「クジラを安全にするビール」が売れた場合、1ケースにつき1ドルを提供すると報じられています。
彼らが決して例外的な存在ではりません。
オーストラリアのあるテレビ番組の出演者2人が、オーストラリアにいる日本大使に連絡を取り、「調査目的」で日本人を2、3人殺していいかどうかを問い合わせするという企画を立てたそうです。
当然、日本大使館は断ったのでしょう。
そこでこの2人は、ゴム製のもりを手にシドニーの街中に出て、日本の観光客を捜し、もりで捕まえていいかどうかと聞いて歩いたとのこと。
こうなると、いささか悪ふざけの度を越しています。
これらの行為が中国や韓国で行われていたら、今頃日本は蜂の巣をつついたような騒ぎになっていたでしょうね。
こうした報道について、民族主義系サイトでもあまり問題にされていないようです。
オーストラリアでは、イアン・キャンベル環境大臣が日本の調査捕鯨に関して「これは科学(調査)ではない。商業捕鯨だ。恥知らずの茶番だ。」と語っており、日本の捕鯨には強い反感がうかがえます。
商業捕鯨の再開に向け、国際捕鯨委員会(IWC)での議論の正常化を促すため都内で開かれた国際会合が2月15日、地域の文化に根ざした捕鯨を守るべきだとの提言などを盛り込んだ議長報告をまとめて閉幕しました。
併せて商業捕鯨賛成国と反捕鯨国の対話を促すためのIWCへの提言を採択しています。
いずれも今年5月に行われるIWC年次総会で提案される予定です。
ただ今回の会合には反捕鯨国の大半が欠席していますので、提案が受け入れるかどうかは、不透明です。
クジラに限らず、海洋資源の保護は重要な課題であり、国際的な協力は不可欠です。
しかし「反捕鯨」国の主張は、どうも感情論が先に立っている印象が強い。
資源保護より、クジラを食べることへの嫌悪感、反感が感じられます。
捕獲推進派は、かつて食糧として捕鯨をしている国々が多く、捕獲反対派は、かつて鯨油を燃料や機械油の供給源としていた国が多い。燃料としてクジラは必要としなくなったからという理屈なのでしょう。
反捕鯨国には、牛肉を食糧としている国が多いのも特徴です。
「クジラを殺すのはかわいそう」という声がありますが、それなら牛は可愛そうでは無いのでしょうか。
「知能の高いクジラを食べるのは残酷」という意見もありますが、それなら知能の低い動物なら殺しても良いのでしょうか。
どうも反捕鯨というのは、米国や豪州などが、自国の牛肉を輸出するのに好都合な主張をしているように見受けられます。
海外に旅すると、食文化の多様さに驚かされます。
こんなものを食べるのかという驚き、こんなものを食べてはいけないという驚き、それぞれの国の固有の食文化や、あるいは宗教的な忌避に基きます。
それを他国の人間があれこれ指図すべきではないし、宗教的な信念であれば信者が守れば良いことで、他人に押し付けることではありません。
もしインドが天下を取って、世界中に牛肉を食べることを禁止したら、おかしいでしょう。
食べるもの決めるのに、多数決は馴染まない。
「牛肉帝国主義」にも、困ったもんです。
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ご無沙汰しています。
かのオリビア・ニュートン・ジョンが半捕鯨だったかイルカだったか定かではありませんが、
来日コンサートを拒否したことがありました。
分からないこともないですが、それはその国の食生活を否定し、ひいては文化までも否定することにもつながることにもなり、
強いショックを受けたことがあります。
それにしてもHome-9さんの徹底したリサーチにはいつも頭を下がる思いです。
小生の拙いブログが恥ずかしい。
投稿: dejavue | 2007/02/16 16:48
dejavue様
コメント有難うございます。
真の国際化というのは、地球規模での環境保護に協力し合いながら、お互いに多様な価値観を認め合うことではないかと思います。
それが昨今グローバリゼーションの名の下に、単一の価値観を絶対視し、世界中を右にならえさせる傾向が強まっています。
この反捕鯨についても同じ事が言えます。
私は反捕鯨の主張を理解しているつもりです。
同様にその人たちは、クジラを食べる人も理解して欲しい、そう主張したいと思います。
投稿: home-9 | 2007/02/17 09:12