松岡大臣の自殺と「日本ダービー」
昨日5月28日に松岡利勝農水大臣が自殺しました。
現職大臣の自殺は戦後初めてですが、現職国会議員となると7人目です。私の住む選挙区からも、1998年に新井将敬議員が自殺しています。
日本の自殺率は年間人口1万人当たり2.4人ですから、議員の自殺率は高いのでしょうか。
松岡氏の場合、疑惑が相次いでいた所に、官製談合をしていた緑資源機構からの多額の献金問題が追い打ちをかけました。
熊本県での捜査が始まった場合は、もう逃げられないと言われていましたから、決定的に追い詰められてしまったものと思われます。
私はもう一つ、自殺を決意するに至る契機として、27日に行われた日本ダービーがあったのではと推測しています。
皇太子が始めてダービーを観戦されるという事に加え、安倍総理夫妻も加わることになりました。ここの所支持率が急落した安倍首相にとり、かっこうの宣伝舞台としたかったのでしょう。
競馬は農水省の管轄ですから、担当大臣としては当然エスコートしなくてはいけない。
しかし松岡氏が、現在そうした晴れがましい舞台に登場するわけにはいかない。そこで2日前にドタキャンをしています。
松岡大臣として大いに面目を失ったであろうことは、想像に難くない。
一方で予想が的中してキャピキャピと喜ぶ安倍総理夫妻、もう一方は自死を胸に故郷に戻り墓参りを済ませた松岡大臣、人生の明暗がくっきりと分かれた瞬間です。
江戸時代に活躍した瓢水という俳人がいました。親交のあった淡淡という俳人の弟子が妓楼に通いだし、気の進まぬ太夫を大金積んで無理に身請けしようとした。
このとき瓢水が、その弟子をたしなめた句が有名な、「手にとるなやはり野に置けれんげ草」です。
今でも時折使われますね。小心であるが抜け目なく世渡りが上手で取り立てられ、トップに座った途端に能力のない事が明らかになったりすると、こう言われてしまう。
農水族議員として政策通でありキャリアを積んでいたにも拘らず、絶えず金にまつわる噂で大臣の椅子を逃してきた松岡氏。
そのまま野に置けば良かったのに、安倍首相が無理に手に取ったばかりに、悲劇的な結末を迎えてしまいました。
ひょっとしたら安倍首相自身も、「やはり野に置け」なのかも知れません。
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松岡大臣は典型的な族議員ですよね。
農家の息子として生まれ、大学の農学部を卒業して農林水産省に就職し、力を蓄えて官僚としてのコネを利用して議員に当選。
当選後は業界の利益のために奔走する。
その見返りとして派閥の領袖並の集金力を誇り、政治家として閣僚まで上り詰める。
まるで絵に描いたような古い自民党議員の典型!
このような人種を小泉流に言うと「抵抗勢力」と言うのでしょうね。
小泉純一郎がぶっ壊し損ねた古い自民党の古い抵抗勢力が持つ実務経験に眼が眩んで閣内に取り込んだ安倍総理。
死者に鞭打つつもりは毛頭ありませんが、
「やはり野に置けレンゲソウ」
ではなく、
野にも置いてはいけないレンゲソウ?
投稿: タケチャンマン | 2007/05/29 11:34
先ほどのコメントで、
「政治という野に置いてはいけないレンゲソウ」と書くべきところ「政治という」が抜けてしまいました。
慙愧に耐えません。
ところで松岡大臣の訃報に接した安倍総理が
「慙愧に耐えません」
とコメントしました。
「痛恨の極み」とか
「遺憾」とか
言う言葉を使わず慙愧という言葉を使ったのは本心なのでしょうか?
もし本心なら、その意味するところは?
投稿: タケチャンマン | 2007/05/29 13:59
タケチャンマン様
立て続けのコメント有難うございます。
安倍総理の「慙愧に耐えません」のコメントの件は、早速新しい記事にさせて頂きました。
安倍総理は、松岡氏に対して初めは任命権で間違え、疑惑の発覚後は辞任時期を見誤りました。
そういう意味では、「慙愧に耐えません」は字義通りなのでしょう。
投稿: home-9 | 2007/05/29 18:57
home9さん
“安倍総理は何を「恥じた」のか”で「慙愧に堪えない」との安倍の発言を問題にしていますが、それにも増して閣僚の誰だったかがいった「道半ばにして」との発言が気になります。
今回の自殺で松岡が批判の多かった(世間では喉元過ぎているようですから過去形にしました)赤坂の議員宿舎の住人だったことが判明しました。
あの御仁、一連の答弁から目が国民に向けられていたとは思えませんし、議員宿舎に入居するぐらいですから国民の批判など意に介さない神経の持ち主だったと思います。
そうなるとこの自殺っていうのはなんだったのか私ら庶民には想像もつかないことですが、とにかく国民に対して申し訳ないなどという気持ちはさらさらなかったのではないかということだけは確かなように思います。
そうすると「道半ば」っていうのは、農林族の利益を守れなかったということでしょうか?
もう一つ気になるのが喪主の松岡妻の「太く短くいい人生だった」とのコメントです。
「太く短い人生」っていうのは、全うな人物の弔辞にはふさわしいものではありません。
松岡の身近にいて彼が全うな人間でないってことを一番知っているからああいうコメントついついでてしまったのでしょうか?
投稿: 柴田晴廣 | 2007/05/30 18:47
柴田晴廣様
こちらへのコメント有難うございます。
私は、ある閣僚が漏らした「これで死人に口無しだな。」という発言が気になりました。
奥様の「太く短い」の言葉も、どこか故人を突き放した印象を受けます。
常にダーティーな金の噂と共に、派手な女性関係に多額な費用が必要だったとされる人生、安倍首相の「慙愧に堪えない」発言もある意味、的を得たものかも知れません。
投稿: home-9 | 2007/05/30 21:49
松岡農水相が死んだので、検察の追及もそれこそ『道半ば』で終わったわけで、この疑獄の(自民党もしくは政府にたいする)被害を最小限にとどめるためには、彼の自殺もある一定の効果はあったのでしょう。『死人に口なし』、『死人に鞭を打つわけはいかない』なんて、皆異口同音言いますが、そのおかげで熱さが喉元過ぎるの結構早かったりしてね。正直言って、首相も実は心の中で『ホッと』してるんじゃないですかね?
投稿: stayus | 2007/06/03 12:43
stayus様
コメント有難うございます。
松岡大臣の自殺に対するコメントで、ある閣僚の「死人に口なしだな」と言ったのがとても印象的でした。
安倍政権としては、最も良い形で事件が終息できたのでしょう。
何より、総理自身が捜査の終息宣言を出したことが、それを示しています。
投稿: home-9 | 2007/06/03 17:39