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2007/06/05

「年金照合1年以内宣言」の大風呂敷

Katayama安倍総理は、未確認の年金記録5000万件全てを1年以内に照合すると公約しました。その方針に基き、丹羽雄哉・自民党総務会長は「新たなソフトを開発する。1年以内に照合を行う」とし、片山さつき広報局長は「すぐにシステムを開発して全部通知する」と言明しています。
そんなに簡単に出来る事ならとっくにやっておくべきだったし、簡単に行かないから今日まで放置してきたのでしょう。
問題を甘く見過ぎているというのが、私の感想です。

過去に年金の納付記録は紙の台帳や磁気テープなどで保管されていましたが、1988年の完全オンライン化に伴い、コンピューターに入力しています。その後も、厚生年金の台帳と国民年金の台帳の一部は、マイクロフィルムで保存されています。
現状での年金記録は、次のように分類されると思われます。
第1G-データが台帳(マイクロフィルム)から正確に入力されているもの。
第2G-データが入力されていない又は誤って入力されているもので、台帳が保存されているもの。
第3G-上記の内、台帳が破棄されているもの。

この中で、第1Gは確かに片山さつき議員のいう通り、システムさえ開発してしまえば、比較的短期間に名寄せは可能です。
次の第2Gですが、これが問題です。
マイクロフィルムというのは、当時企業でも膨大な資料を保存するツールとして使っていましたので、恐らく社会保険庁の装置も似たようなものでしょう。
簡単に説明すれば、資料を写真に写し微小なフィルムに保存するというもので、専用の装置により再生されます。
完全なアナログ情報ですから、検索すると言っても、現在のデジタル情報に慣れた人間からすると、気の遠くなるような作業です。

私自身、特許の検索でマイクロフィルムを使っていたので、大変さが分かります。
マイクロフィルムという名称から、コンピューターでの検察システムを連想するかも知れませんが、全く別物なのです。
イメージとしては、写真をアルバムに納めたものと思えば良いでしょう。
どこに仕舞い込んだか分からなくなった写真を、膨大なアルバムから一つ一つ探す作業を連想して貰うと分かり易い。

もう一つ、現在のコンピューターのように、一度に沢山の人がアクセスすることが出来ません。
フィルムが何本も複製していないのが普通ですから、ある人がそのフィルムを検索している時は、別の人は使えません。
つまり人海戦術が役に立たない作業です。

では、そうした作業がどの程度発生するのかですが、社会保険庁が東京で行った調査の例で、3月15日から月末までの間に、オンラインでは記録が見つからなかった358件について、東京都内分のマイクロフィルムに保存されている台帳での照会を求めたところ、17%にあたる61件で実際に記録が見つかったと報告されています。
つまり相当数のデータが入力されずに、台帳の中に眠っているということが、推定されるわけです。

又この例からすると、残りの83%は見つからなかったという結果ですが、これが台帳に載っていないのか、それとも見落としたのかが分からない。
アナログのデータは、基本的に目視での確認ですから、人為ミスが避けられない。避けようとすれば二重三重のチェックが必要です。

年金記録の照合を完璧にやろうとすれば、どうしても時間と人手が掛かるのは避けられません。もし1年という期限を無理に間に合わせようとすれば、それは確実に不完全なものになるでしょう。
政府は、多少時間は掛かっても今度こそ完全な作業を行う道を選ぶべきでした。

年金問題は、安倍政権だけに責任があるわけではありません。
しかし1年で完全に照合を終わらせるという公約が失敗すれば、それは安倍首相の責任です。
支持率の急落という事態に焦り、安倍総理は誤った選択をしたと思います。

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コメント

 home-9さんも特許検索を仕事としていましたか。
 確かにPATOLISができる以前の紙公報時代の検索は大変でした。
 特許庁が過去の出願をデータベース化するにあたってもかなりの年月を要していましたから、一年でできるわけはない。
 一年も経てば有耶無耶にできる。
 そうした腹積もりなのでしょうね。
 この公約みんなで忘れないようにしなければいけませんね。
 home-9さん一年後にもう一度この記事の続きお願いします。

投稿: 柴田晴廣 | 2007/06/05 19:11

柴田晴廣様
重ねてのコメント有難うございます。
前芝小学校の「びく」を背負った二宮金次郎像、見ました。全国でも珍しいのでしょうね。
「所変われば・・・」の典型ですね。

特許の検索は、専門部署ではなかったのですが、仕事の関係で随分とやらされました。
デジタル化された時代の検索が、余りに簡易なものですから、照合など大した作業ではないと高をくくっている向きもあるでしょうが、膨大なアナログ情報の検索は想像を絶するほど大変です。
実態を良く分かっていないトップが思いつきで決めてしまうと、大体碌な結果になりません。
1年後にもう一度検証したいと思います。

投稿: home-9 | 2007/06/05 22:52

home-9さん
 仰るとおり実態を知らないトップの思い付きでしょう。
 特許公報については、データベース化されているからこそ容易な検索が可能ですが、データベース化されていないものの検索は容易な欲しい情報がつかめるものではありません。
 私は常々検索ロボットなど万能ではないと自分のblogなどでも書いていますが、これもインターネット自体がデータベース化されたものではないからです。
 一年後の検証期待しております。
 それと、前芝小学校の金次郎像、以前私が撮ったものもあります。あとで送付します。使えるようでしたら使ってください。像そのものの著作権はきれていると思いますし、仮に存続していても著作権法46条1号の規定により写真をUPする行為については著作権の効力は及びません。

投稿: 柴田晴廣 | 2007/06/05 23:24

柴田晴廣様
コメント有難うございます。
ご指摘の通り、ネットの検索も趣味の範囲なら大して問題にならないでしょうが、これが仕事や研究に使うとしたら欠点があります。
モノゴト簡便過ぎると、今度は問題が見えにくくなるという新たな問題が発生してくるようですね。

前芝小学校の金次郎像の件、わざわざ恐縮です。

投稿: home-9 | 2007/06/06 07:01

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