暴力団員の公営住宅からの排除は疑問
6月1日国土交通省と警察庁が、全国の自治体が管理する公営住宅から暴力団員を排除することを目的とした指針をまとめ、各都道府県と警察本部に通達を出しました。
指針には警察の情報提供により暴力団員の入居を事前に防止したり、入居済み団員の退去を促す際には警察官が立ち会うとの内容が織り込まれています。公営住宅の暴力団締め出しで、国が指針を作成するのは初めてです。
今回の通達が、今年4月に東京都町田市の都営アパートで起きた、元暴力団員による立てこもり発砲事件を受けたものであるのは明らかです。
一見、暴力団の封じ込めに有効と思われるかも知れませんが、公営住宅を追われた組員は民間の住宅へ移るだけで、こうした「民間への移し変え」では根本的な解決にはなりません。
また今回の指針が実行されたとしても、先日の立てこもり事件のように、過去に暴力団を脱会した人物には適用されないでしょうから、ああした事件は防げない。
先日の立てこもり事件や長崎市長銃撃事件などの、一連の銃を使用した犯罪が多発している根本原因は、警察の暴力団に対する取締り、特に銃の規制に真剣に取り組んでこなかったことにあります。
銃所持が組員周辺にまで拡がってしまった責任は、警察にあります。
例えば、警察庁の「2006年の暴力団情勢」では、「対立抗争事件数が初めてゼロ。暴力団等による銃器発砲事件数も最小になっている」と記載されていますが、どう見ても実態とはかけ離れたものです。
拳銃の押収件数が、この10年間に3分の1に減少していますが、銃がどんどん拡散しているのに、なぜ押収件数が激減しているのでしょうか。
また、拳銃だけ差し出させ所持人の身柄を押さえない、いわゆる「首なし拳銃」摘発が行われている点も問題です。
警察が捜査体制を抜本的に見直していかない限り、組員の住居を公営から民間に移したところで、住民の不安は解消されません。
暴力団員を排除するための理由ですが、組員であるからとして入居は拒めない。そこで今回は「組員の違法な収入は把握が困難なので、入居を拒める」としています。
かなり強引な理由づけですね。
もし「収入の把握が困難」なら入居できないとなると、組員だけでなく他の入居者にも影響がでます。公平を期すためには、公営住宅に住む全ての入居者の収入を洗い出す必要があるでしょう。
これからは仮に公営住宅の入居基準をクリアーしていても、「あなたの収入が把握できない」と拒否されるケースも出てくることになります。
犯罪を起こしそうな人間を住宅から追い出すのではなく、犯罪そのものを防ぐのが警察の役割だと思います。
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