柳家小三治独演会@横浜にぎわい座
中学時代の親友に斉藤誠という生徒がいて、これが天才落語少年だった。
中学生なのに、学校で独演会をやる。会場の柔道練習場を満席にし、教師たちも聴きに来ていた。
子供がやるネタだと、普通は「寿限無」だの「子ほめ」といった前座噺になるが、斉藤は違っていた。
志ん生の「火焔太鼓」と文楽の「船徳」が得意ネタで、体操のマットの上に制服でチョコンと座って演じていた。
斉藤は当時、よく「朝太という前座がいるが、あれは上手いぞ」と言っていた。後の古今亭志ん朝である。
昭和30年当時、人気ラジオ番組に「しろうと寄席」というのがあり、斉藤はそこに出演した。落語の審査員が、八代目桂文楽という番組である。
予選で100人に1人程度しか出られない狭き門だったから、中学生が出演できただけでもスゴイ。
残念ながら本選では鐘2つ、それでも名人・文楽からお褒めの言葉と激励を受け、本人は満足していた。
世の中上には上がいるもので、その番組で常に合格し常連になっていた高校生がいた。
若き日の柳家小三治である。
・・・ってな具合に、小三治のマクラも行かないものだろうか。
小三治の独演会に行って毎回感じるし、6月5日横浜にぎわい座での会でも全く同じ感想を持ったが、あの長たらしいマクラはハッキリ言って退屈。
なかにはあのマクラを楽しみに来た人もいるのだろうが、当日も1席目の30分をゆうに越えるマクラに、明らかに客席全体はダレていた。せめて半分にカット出来ないものだろうか。
本題に入る前の辛抱と思って黙って聴いているが、客は別に修行に来ているわけではないので、良い加減にして欲しい。
せっかく本題の出来が良くても、あれでは相殺されてしまう。
いきなり小言から入ってしまったが、人気の独演会は補助椅子も出る大入り満員。
開口一番は柳家禽太夫「元犬」
しっかりした口調で、芸も悪くない。だけどツマラナイ。
芸が下手なら稽古すれば良いのだが、こういう芸人が、ある意味一番始末が悪い。
何が足りないのかといえば、愛嬌と華だろうか。
ギャンブルが趣味の様だが、もっと別の道楽に金を使った方が良いのではないだろうか。
柳家小三治「湯屋番」
しばしば高座にかかるネタだが、前半を切らずに演じるのは珍しく、軽いネタではあるがこうした独演会でないとなかなか聴けない、
小三治のとぼけた味と、若旦那の好色ぶりを際立たせた演出で楽しめた。
番台に上がってからの動作も大仰で、大サービスという印象の高座だった。
仲入り後
柳家小三治「茶の湯」
こちらはマクラ抜きで、いきなり本題へ。こっちの方が良い。
登場人物を全体に戯画化して、かなり楽しい「茶の湯」となっていた。
特にマズイお茶を口に入れた時の、表情が良い。
ただ大店を退き隠居となった主人に、風格が欠けていたのが気になった。
くどい様だが、あの冗漫なマクラだけは何とかして欲しい。
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