国民に牙を向けだした自衛隊
6月6日、陸上自衛隊の情報保全隊が、イラク派遣に反対する市民活動などの調査・情報収集を行っていたことを示す内部文書が明らかになりました。
この情報保全隊というのは、ここの所相次ぐ幹部自衛官による機密情報漏洩を防ぐために、2003年に発足したもので、部隊の秘密や施設を守る事を目的として、情報収集活動を行う組織です。
確かに最高機密であるイージス艦のデータが外部に持ち出されたり、中国で買春を繰り返していた自衛官が中国側に情報を流したり、とんでもない事件が繰り返されています。
先日明らかとなった北朝鮮への2児拉致事件でも、この2児の父親の高大基が北朝鮮の工作員であり、日常的に自衛隊幹部に金品を渡し、国防の秘密情報を受け取っていたことは、関係者の証言ではっきりしています。
こうした不祥事を防ぐために自らの組織の調査を行い規律を正すのではない、外部の市民団体の活動を監視していたのですから、正に論外です。
防衛省の守屋武昌次官は6日の記者会見で、「派遣に批判的な方の動きは情報収集してきた。」と述べていますうが、これは事実と違います。
イラク戦争に反対したり、自衛隊派遣を批判したりするデモや集会は勿論、イラク現地からの報告を書いたフリーライター、イラクに派遣される隊員へのインタビューを行った新聞記者、イラクの子供たちの生活を撮った写真展に至るまでが、監視の対象とされています。
自衛隊の隊友会での代議士(当時)の発言がイラク派遣を誹謗するとされ、「反自衛隊活動」に分類されています。しかしこの議員の発言は、「イラク派遣には反対だが、命令に従う自衛隊に問題はない。」というものです。
今回の情報保全隊の記録は、単にイラクへの自衛隊派遣に反対する人にとどまらず、その周辺の関係者までが監視の対象にされていることが分かります。
情報保全隊の調査は、イラク戦争とは関係のない領域にも及んでいます。
例示すると、
・年金改悪反対
・消費税増税反対
・米軍基地反対
・宗教者の平和運動
・イスラム団体の動向
・医療費負担の見直し
・国民春闘
・小林多喜二生誕百年祭
など、幅広い分野が調査の対象となっています。
久間防衛相は6日に「3週間ぐらいで破棄する文書だから」と答えていますが、これも言い逃れでしょう。
この文書の中で使われている監視というのは、一定期間継続的に行うもので、少なくともイラク戦争の開戦以後、今日まで監視は続けられたと想定されます。
また久間防衛相は、デモや集会の写真を撮ったことで、「特定の誰かを狙い撃ちしたものではない。マスコミの取材の場合はよくて、自衛隊ならだめだという法律の根拠はない」と答弁していますが、これも詭弁です。
一般的な写真なら、逆に自衛隊が出かけて行ってわざわざ撮影する必要はありません。
参加者の一人一人の顔写真を撮影し、個人情報として蓄積していることは明白でしょう。
今回の文書の中で監視対象とされたのは、41都道府県の289団体・個人にも及んでいます。
映画監督の山田洋次氏やジャーナリストの高野孟氏などの著名人も、個人として監視の対象となっています。
武装組織である自衛隊が、自分個人や、自分が関係している団体を監視していると聞けば、誰だって良い気分にはなれません。
監視していること自体が、無言の圧力になります。
今回の資料で明らかなように、最初はイラク戦争に反対したり、自衛隊のイラク派遣を批判した人がターゲットになりますが、やがてその対象は次々と拡がり、気がつけば国民生活全般が監視の対象になっていくという事を示唆しています。
決してこれは、他人事ではありません。
自衛隊は自らが起こした不祥事を逆手に取って、国民に牙を向け始めました。
現在安倍政権が進めている改憲、特に9条改正の先取りとして注視すべきと考えます。
今度は私たち国民が、自衛隊を監視しなくてはならない番です。
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「手前生国を発しましては自衛隊でござんす・・・・」
寅さんも天国で「それをいッちゃ~おしめ~よ」
恐ろしい世の中になりそうです。「オイこら?チョッと来い」が始まりそうです。
投稿: ヒキノ | 2007/06/08 14:59
ヒキノ様
コメント有難うございます。
軍隊の役割は、外敵と戦う事と同時に国内の治安を守るというのが主要な任務となります。
従来は自衛隊の役割として専守防衛があったわけですが、今回の動きは既に軍隊としての活動を始めたという証拠です。
戦前の憲兵が復活しないよう、監視してゆかねばならないと思います。
投稿: home-9 | 2007/06/08 18:26