「コムスン」だけが悪いのか
連日新聞やTVのニュースでコムスン問題がトップで扱われ、その不法行為が非難されており、「世間の怒り」も今やコムスンに向けられているかの様だ。
私の意見はチョット違っていて、これは私の考えが誤っているのか、マスコミや「世間」が間違っているのか、どうも良く分からない。
先ずコムスンの不正であるが、これは樋口社長及び親会社のグッドウィル・グループの折口会長自身が認めている通り事実であるし、その点での釈明の余地はない。
しかし、私たちが毎月介護保険料を納入して(強制徴収されて)いる相手は日本政府であり、コムスンではない。私たち国民は、介護保険料を納めるという義務を果たす代りに、将来介護が必要となった時に、低額で所定の介護サービスを受ける権利があるわけで、政府側から見れば介護サービスを行う義務がある。
いうなれば介護保険の契約当事者は国民と政府間であり、民間事業者は第三者であろう。
もし介護保険料をきちんと払っているのに、所定の介護サービスが受けられなければ、それは現在大きな問題となっている「年金保険」詐欺と一緒である。
ただ介護サービスを実施するにあたり、政府自身がやるのではなく、政府(具体的には厚生労働省)が指定した民間事業者が代りに実施する。その業者の一つがコムスンだ。
我々利用者からすれば、同一のサービスが受けられるなら別にコムスンでなくて一向構わない。ナニスンでも良い。要は必要なサービスを継続してくれれば、それで良いわけだ。
今回コムスンが介護報酬不正請求や事業所指定の不正取得を行ってきたことが明らかになり、厚労省より、2008年度から2011年12月までの間、介護サービス事業所の新規及び更新指定不許可処分を受けた。
しかしこれは、厚労省とコムスンの間の問題である。
問題は、6万人ともいわれるコムスンの利用者である。この方たちに迷惑を及ぼさぬよう、厚労省の責任において別の業者を紹介すれば済むことだった。
処が、政府は何も対策を講ずることなく、このままでは居宅介護を必要とする人に大きな影響が出ることが必至となった。
そこで厚労省は、事業の継続を希望しているコムスン側と話し合い、同一グループ内の他の企業にそっくり介護事業を譲渡する方向で調整した。
事業譲渡に関して、コムスン側は厚労省の了承を得たと主張し、厚労省は否定しているが、これは恐らくコムスンがいう通りだろう。アウンの呼吸でOKサインを出していたが、世論の反発に恐れをなし、厚労省が逃げの一手を打ったものと推定される。
第一、コムスンの不正は昨日今日始まったことではなく、2000年の介護保険制度発足以来、ずっと続いていた。
この7年間、厚労省は見て見ぬ振りをし、事実上黙認してきた。
それは、介護サービス事業がそれほど儲かる商売ではないからだ。
介護保険制度のスタート当時、民間からの参入を促すべく、厚労省は相当オイシイ話をしてきた。
これなら儲かるだろうと飛びついてきた企業がいくつかあり、その一つがコムスンであった。
運用開始後、支出が当所の予想をはるかに上回ることが判明し、政府は次々と介護サービスの条件を切り下げた。
その結果、介護は民間の事業としては採算が成り立たなくなってきている。多くの企業は、採算を度外視して事業を続けているのが実態である。
厚労省としては撤退されると困るから、騙し騙し、多少の不正には目をつむってきたというのが真相だろう。
いうなれば今回の不正は、厚労省と介護サービスのトップ企業であるコムスンとの二人三脚で進めてきた。だから7年間も問題にならなかったと考える。
今回のコムスン問題のウラには、政府が描いた介護保険制度そのものが成り立たなくなってきつつあるという現実がある。
いくらコムスンを叩いたところで、何も問題は解決しないと私は考える。
これは間違っているだろうか。
昨日6月8日、グッドウィルとコムスンのトップが、一連の不正に対して謝罪の会見を行った。企業として当然のことである。
しかし介護サービスについて国民が迷惑を被ったとすれば、先ず最大の当事者である政府、厚生労働省のトップが国民に謝罪すべきであろう。
厚労省が「正義ヅラ」するのは、見当違いも甚だしい。
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訪問介護最大手コムスンの数々の処分逃れ問題を受け、ようやく2007年6月8日に記者会見を開いた親会社グッドウィル・グループの折口雅博会長が、その後もテレビ出演を次々果たし、「言い訳」を繰り返している。単なる事務的な管理問題で「故意」「悪意」はない、とした上で...... [続きを読む]
始めまして、いつも、ブログを楽しみにしています。
ご指摘の通り、指定業者は甘い餌につられて、事業を始めたものの、条件は段段と悪くなっていくが、事業は始めてしまうと、簡単に撤退する事は出来ないものです。それで、今回のような不祥事が起きたのだと思います。介護で儲けようとするのは間違っていると言う人もいますが、儲からなければ介護を事業とする会社はやっていけません。本当の悪は、やはり厚生労働省ですね。
投稿: さみ~い | 2007/06/09 14:34
さみ~い様
コメント有難うございます。
今回のコムスン騒動で、私たち国民の立場からすれば最も重要なのは、介護保険制度が果たして今のままで良いのかという点にあります。
保険料は国が徴収し、具体的な介護サービス業務は民間任せという構図が、成り立たなくなっているのではないでしょうか。
これを機に、もっと根本的な所を議論すべきと考えます。
投稿: home-9 | 2007/06/09 23:12