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2007/09/01

「妊婦たらい回し死産」被害者は誰?

8月29日に、奈良県で38歳の妊婦の症状が悪化して救急車が呼ばれましたが、奈良県内の11病院に受け入れを拒否され、約3時間後に死産という結果になってしまいました。
病院の調べでは、この女性は妊娠6~7ヶ月だったそうです。
大変不幸な事故ではありますが、マスコミの報道が受け入れを拒否した医療機関に対する非難の声ばかり目立っていて、何が根本的な問題であったかが、なおざりにされていると感じています。
妊婦の方が被害者、受け入れを拒んだ医療機関が加害者、そう単純に割り切って良い問題なのでしょうか。

この女性が妊娠6~7ヶ月であったにも拘らず、一度も産婦人科に受診をしておらず、従って健診も受けていなかったという点です。母子手帳も無かったわけですから、医療機関として見れば、母体の状況が全く判断できない。
これは妊娠あるいは出産の経験を持つ女性からすれば、信じ難いことですね。

経産婦の方ならご存知ですが、私たち男性や妊娠を経験していない方のために、煩雑になりますが妊産婦の定期健診についてまとめてみます。

.妊婦定期健診の受診間隔

23週まで

4週間に1度 

24週から35週まで

2週間に1度

36週から

1週間に1度

予定日を超えたとき

1週間に2度

.外来での妊婦健診時の検査 

初診時

(1)子宮癌検査、(2)クラミジア検査、(3)超音波検査

妊娠8週頃

(1)貧血検査、(2)生化学検査、(3)尿一般検査、(4)血液型検査

(5)抗体スクリーニング、(6)梅毒検査

(7)B型肝炎検査(HBs抗原検査)

(8)C型肝炎検査(HCV抗原検査)

(9)エイズ検査(HIV抗原検査)

(10)トキソプラズマ抗体、(11)風疹抗体検査

(12)成人T細胞白血病検査(ATLA抗体検査)

妊娠20週頃

(1)貧血検査、(2)心電図検査

妊娠34週頃

(1)膣分泌物培養検査(膣内雑菌、カンジダ、B群溶連菌)

(2)クラミジア検査

妊娠36週頃

(1)貧血検査

予定日前後

(1)ノンストレステスト(胎児の元気さ、予備能力、胎盤機能状況)

かつては出産の際に、産婦が死亡するケースが少なくなかったのですが、最近は正常に出産するのが当たり前の様になりました。
それは、こうした経過の観察と検査体制がしっかり出来上がったからで、出産の危険性そのものが無くなったわけではありません。
それでも稀に事故は起きています。
今回の奈良県の女性の場合は、病院での「妊娠の確認」をしておらず、「かかりつけ医」がいなかった。そのため「かかりつけ医の要請に基づく病院間の転送」ということができなかったわけです。母子健康手帳を持っていなかったことも、対応が遅れた原因の一つになったでしょう。

最近、妊娠しても妊婦検診に行かない人が増えていて、陣痛が始まってから、始めて病院に訪れる、いわゆる「駆け込み出産」が問題になっています。
以前は不法滞在の外国人が多かったのが、ここ最近は日本人が増えてきているそうです。
マスコミは、こうした妊娠・出産のリスクや、母体の保護を軽視するような風潮こそ、問題にすべきではないでしょうか。
「代理出産」を無責任に美化する報道姿勢にも、通ずる所があります。

妊娠しても受診しない理由の一つに、出産費用があると思います。
お産は病気ではないということで健康保険の適用外となっていますが、少子化対策がさけばれている今日、無料出産制度の導入を検討すべきではないでしょうか。

もう一つの背景として、医療過誤に対する過剰な非難と、警察及び検察の姿勢があげられます。
当ブログでも何回かとりあげてきましたが、医療行為は人間が行う以上、ミスは避けられません。
いかなる名医といえども、最初の頃は試行錯誤で失敗もし、経験を積んで上達してきたのです。
重大な過失があったならともかく、医療ミスで医師が逮捕、起訴されるケースが増えれば、医療機関や医師たちは自己防衛にために、危険を伴う治療を避け、難しい手術が必要な患者の受け入れを拒む傾向が強まります。
医師が、医療過誤を問われそうな診療そのものを回避する。
現に、全国の多くの病院で、小児科や産婦人科が医師不足のため廃止に至っています。
今回の事故のケースのような、赤ちゃんの状態も分からない、どんな感染症を持っているのかも分からないとなれば、医療機関は受け入れに消極的になります。

今回の事故を契機に、改めて緊急医療体制を見直すことはもちろん必要でしょう。
同時に、こうした事故をどうしたら未然に防げるかという、より基本的な点を掘り下げていく事が重要です。

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コメント

毎回ブログを楽しみにしています。さて、テレビ等を見ると、病院が一方的に悪いというのがマスコミの論調ですが、ブログを拝見して、女性のほうにも落ち度があると思いました。もし、引き受けて医療事故になってしまったらと思うと、簡単に引き受けたくないですね。でも、見殺しには出来ない。お医者さんも大変ですね。

投稿: さみ~い | 2007/09/04 14:49

さみ~い様
コメント有難うございます。
マスコミの報道は間違っています。一番問題なのは、妊娠して6-7ヶ月経っているのに、一度も受診もしていない、必要な検査もしていないことにあります。この女性は一体、新たな生命の誕生を迎えようとしていた赤ちゃんのことを、どう考えていたのでしょうか。
もっとマスコミは、その点を問題にすべきです。
同時に、そうした方が救急治療を受けると言う現実がありますから、受け入れ体制の確立を図るにはどうすべきか、これは政治の問題として考えなくてはならないでしょう。
死産だということで、医療機関にばかり非難の矛先を向けるのは間違いです。

投稿: home-9 | 2007/09/04 22:05

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