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2007/11/30

防衛汚職事件の核心をそらす「おねだり妻」主役説

Akiyama_naoki守屋容疑者らが逮捕された防衛省接待汚職事件について、最近気になることがあります。それは一部マスコミが書きたてている「おねだり妻」、つまり守屋幸子容疑者が収賄を主導したかのような論調です。確かに彼女に対する山田洋行の接待は度を越しているとは思いますが、所詮は虎の威を借るキツネであり、彼女のおねだりが事件を引き起したという見方はあまりに皮相的です。
今回の汚職事件に関する政府と防衛省の姿勢を見ていくと、ある時期から守屋前次官らの収賄の事実は認め、接待汚職は組織的なものではなく、守屋個人の問題でるという形で処理しようという意志が固まりました。
つまり守屋切りです。
そして個人の特異性を強調する道具として、「おねだり妻」が利用されているのではないでしょうか。あれは女房が悪いのであって、守屋も気の毒だというわけです。
そんな事はありません。

今回の防衛省汚職事件の核心は、決してこの点にあるわけでは無い。
山田洋行の水増し請求では、装備品によっては50%も価格が上乗せされていたという事実が明らかになっています。
今どき、5割も高い物を買うバカがどこにあるか。自分の腹が痛まないから、平気でこういう事ができる。
こうした売価が通っているのは、防衛省が納入業者の言い値で購入しているという何よりの証拠です。
価格決定権が販売業者側にあり、50億円だと言われれば、ああそうかと買ってくれる、これが防衛装備品購入の実態なのでしょう。
他の省庁と異なり、購入品の多くが随意契約に基くもので、つまり特定の納入業者が指定されます。
一度指定を受ければ、定期的に製品が納入できるわけですから、これほどウマイ商売はありません。
そこで何とか指定をして貰おうと、幹部に接待攻勢をかけるわけです。

かくして軍需品メーカーや商社は大いに儲けて、その利益の一部を防衛省幹部の天下りの受け入れ、幹部たちへの接待、防衛族国会議員への政治献金に還元する。献金を受けた議員は、「国を守る」という大義名分の下で、出来るだけ多額な防衛予算を獲得する。
総額およそ5兆円という膨大な金額の予算、つまり税金が毎年使われていく。損をしているのは国民だけです。
政・官・業の人たちは皆ハッピーになってメデタシメデタシ、これが防衛汚職の構造です。

決して守屋容疑者だけが特別なのではありません。他の幹部に比べ少々やり過ぎたという所でしょうか。
接待側にしても、山田洋行だけということは有り得ません。ライバル企業だって、負けず劣らず接待攻勢はかけていたでしょう。そうしなければ、ライバル企業の営業担当はクビになりますよ。
それでも山田洋行の御家騒動と、それに続く日本ミライズとの民事裁判が起きなければ、守屋容疑者らへの過剰接待や贈収賄が明るみに出ることは無かった筈です。
そういう意味では、守屋は運が悪かったとも言えるでしょう。

山田洋行の裏金1億円が、毒ガス弾処理事業への協力費として、「日米平和・文化交流協会」常勤理事である秋山直紀氏が関係している「安全保障研究所」関連団体に支出されていたと、本日報じられています。
政官業と、それをつなぐフィクサーの主役たちが出揃いつつあります。

2007/11/29

「女は乗せない戦車隊」じゃなかったんかい!

Moriya_sachiko♪腰の軍刀にすがりつき
連れて行かんせノモンハン
連れて行くのはやすけれど
女は乗せない戦車隊♪
と唄われた日本軍の伝統は今いずこ、守屋容疑者の妻は、どうやら自衛隊の上に乗っていたようです。
11月28日守屋武昌前防衛次官と共に、収賄の身分なき共犯の疑いで逮捕された妻の守屋幸子容疑者は、防衛省内で「女次官」と呼ばれていて、「防衛省の天皇」といわれた夫に劣らぬ存在だったそうですな。

夫婦といえども別人格であって、亭主が偉い=女房も偉い、という等式は成り立ちません。世の中見渡しても、どちらかは立派だが、もう片方はワヤという家庭などザラです。
処が、夫が立身出世して偉くなると、周囲がその奥さんにまでヘイコラするようになり、妻の方も段々自分まで偉くなったと勘違いしてくる、まあここまでは世間によくある話。
これが高じてくると、夫の組織の人事にまで口を出すようになる。いわゆる病膏肓に入るというヤツですな。
まさか自衛隊の装備品の選定にまで、前次官の女房が決めていたわけではないでしょう。
元々防衛庁の職員であった守屋幸子が、防衛人事に影響力を持つようになった。だから「女次官」の異名を取ったという事だと思います。

この背景として浮かんでくるのが、防衛省幹部の妻らでつくる親睦団体「美鳩会」の存在です。
守屋の妻は副会長も務めていましたが、実質的にはこの組織を取り仕切っていました。
防衛省幹部の証言によると、「幸子容疑者は美鳩会で聞いたことを前次官に報告していたので、出席者はすごく神経を使って接していた」と明かしています。
守屋の部下の妻たちは、夫の出世のためと、さぞかし幸子容疑者に気を遣っていたでしょう。
民間企業でも役員の妻たちによる親睦会というのがあり、社長夫人が右を向くと全員が右を向く。盆暮れの付け届けは勿論、旅行に行けばお土産、誕生日といえばお祝いに伺うという具合に、その気遣いは大変なものだそうです。
かくして嫉妬と羨望が渦巻く女の世界が、そのまま夫たちの勢力争いにまで影響してくるわけです。

省内に影響力を持った妻を、軍需商社が放っておくはずが無い。将を射んと欲すれば先ず馬より、幸子容疑者に接待攻勢をかけた。
寝物語(見たわけではないが)にでも、「山田洋行の宮崎さんて、良く気が利く人ね。」と一言いって貰えば、それだけで十分ソロバンが合うというもの。
「美鳩会」の会合か何かで高級な店で飲食し、店を出るときに幸子容疑者が「今日の、山田洋行の宮崎さんにツケといてね。」と言えば、出席していた妻たちは帰宅後この事を夫に伝える。
そうすると、装備品の選定会議で、誰云うともなく山田洋行から購入することが決まるという仕組みです。

幹部から命令や指示があったかどうか問題とされますが、日本の組織では、幹部がいちいち指示しないと動かないようなら、その組織は失格です。
優秀な組織ほど、幹部の意向を忖度して部下は自発的に動くものなのです。命令ぜずに部下を動かす者こそ、優秀な幹部といえます。
最近よく、戦時中の出来事について、軍幹部の正式命令があったか無かったかが問題になりますが、私はあれはナンセンスだと思っています。
正式に命令を出していなければ幹部に罪が無いのであれば、オウム真理教の麻原は無罪だろうし、部下の不祥事で社長が引責辞任する必要がなくなる。
組織の幹部の責任というものは、それだけ重いものなのです。

だいたい男の仕事に女房が口出ししてくると、碌なことはない。
だから我が家では、私のことに女房には一切口出しさせないし、もしあれこれ言ってきても、私が一言いえば女房はピタッと黙ってしまう。
「スマン、俺が悪かった」と。

防衛利権と沖縄利権の絡みで、旧橋本派と旧森派との争いに端を発した守屋次官の辞任問題が端緒になり、山田洋行と日本ミライズの内ゲバに、久間元防衛相と守屋前次官がそれぞれのバックについて、遂には双方による前代未聞の暴露合戦となった今回の事件。
検察がどこまで、防衛利権の政官業の癒着構造の解明に踏み込めるか、大いに注目されます。

2007/11/28

「悪役スター」を求めるブロガーたち

Sakaide香川県坂出市で起きた祖母と孫の姉妹の行方不明事件は、遺体発見という最悪の結末を迎えてしまった。事件の全容は未だ明らかになってはいないが、幼い子ども達までが犠牲になったのは、やりきれない気持ちだ。
今回の事件、ブロガーなど少なからぬネット言論人も、違う意味で最悪の結果となったのではあるないか。人気ブログを含む多くのブログなどで、「犯人はオヤジ」とか「真犯人はあの男」といった見出しで、父親を犯人と名指ししていたのはご承知の通り。
ネットだけではない。マスコミもまたニュースショーなどで「苦悩する父」などのタイトルにかこつけ、実は父親が怪しいといわんばかりの映像を流していたのも、周知の事実である。
それが今日になったら掌を反したように、「父悲痛」などと報道しているのだから、開いた口が塞がらない。

光市母子殺害事件の裁判でもそうだが、世間から注目を浴びる事件が起きると、急に「正義の味方」になる人が増え、特定の人物や集団を標的にして、袋叩きにするという傾向が続いている。
法を守るべき弁護士らしき人物でさえ、TVの電波を使って特定の弁護士への懲戒請求署名を呼びかけたりするのだから、始末が悪い。
付和雷同もここに極まれリという所だが、ネットの匿名性がこれに輪をかけている。
でも気を付けなければいけないのは、実際には「匿名」は保証されてはいないということだ。一定の費用さえ払えば、情報発信者の実名を調べてくれる会社もあるようだから、ご同輩にはくれぐれも注意が肝要です。

近頃、ブログがつまらなくなったと言う声をしばしば耳にする。
毎回ショウもない事を書き綴っている本人がこう言うのもナンだが、確かにつまらなくなったという印象は隠せない。
かつては一世を風靡したような人気ブログがすっかり質を落としていたり、ひどいときは開店休業状態になっているものもある。
天下国家を論じていたのが小ネタに転じていたり、世の中の諸悪の根源は全てシナとコリアにありと主張し続けていたのが、一時の勢いを失ってきたり・・・。
私見であるが、どうも民族系ブログが最近元気が無いように見える。やはり米国と北朝鮮が仲良くなってきた辺りで、少し調子が狂ってきたのだろうか。それとも防衛省の不正が次々明るみに出てきたのが、戦闘意欲をそいでしまったのかしらん。

ブログがつまらなくなってきた理由の一つに、「悪役スター」の不在があるのではないだろうか。
総理大臣だって、トリックスター気味の小泉元首相や、突っ込みドコロ満載だった安倍前首相から福田首相に替わって、攻撃目標が小さくなった気がする。
「悪役」が似合う民主党小沢一郎代表でさえ、近頃は中途半端にイイヒトぶっている。
石原都知事も年老いたせいか暴言が減ってきてるし、ブッシュ大統領の任期も残り少ない。
亀田一家は静かになったし、朝青龍はモンゴルから未だ帰国しない。
「正義の味方」ネット言論人としては、悪役スター不足で今一つ力が入らない。
そこに、パッと見「悪役」らしき人物の映像がメディアから流れてきた。これだ!と、思って飛びついたのだろう。

今回の香川県坂出市の事件の犯人名指し騒動の根源は、ネット言論人たちの悪役スター渇望にあるのはないだろうか。

2007/11/27

劇団大阪「円生と志ん生」

Enshochirashi1_jpg大阪のアマチュア劇団「劇団大阪」が、井上ひさし作の「円生と志ん生」を谷町劇場で上演、11月25日の千秋楽の舞台を観劇。
以前当ブログで紹介した天才落語少年であった斎藤誠が、親の反対で果たせなかった落語家の夢をおよそ50年ぶりに、しかもファンだった志ん生役を演ずるということで、これは是非観に行かねばならぬと思い立った。

円生とは六代目三遊亭圓生、志ん生とは五代目古今亭志ん生のことで、共に昭和の名人として今でも落語ファンに根強い人気がある噺家である。
昭和20年5月、連日の空襲で寄席どころの騒ぎではない東京の落語家・志ん生と圓生の二人が、飯と酒と女に不自由しないという言葉につられて、2ヶ月の約束で軍の慰問で満州に渡る。
時は戦争末期、帰国どころか終戦間際にソ連軍が侵入してきて、頼りにしていた関東軍はあっという間に潰走。残された満州開拓団などの民間人は、役に立ちそうな男は捕まって皆シベリア送り、女・子供はソ連軍の殺戮、略奪、暴行にさらされる。
地獄のような生活を味わいながらの二人の珍道中を、虚実ないまぜに涙と笑いで描いた芝居である。
しかし二人は、悲惨さえも笑いにして、最後は昭和22年に無事日本への帰国を果たす。

現実には、志ん生が余りの辛さに、ウオッカのボトルを6本空け自殺を図るが、昔からの大酒飲みであったため、奇跡的に一命を取りとめたというエピソードが残されていることから、どれだけ悲惨な体験だったか分かろうというもの。
実際の二人は帰国後直ぐに高座に復帰し、大陸での経験で以前より一回り芸の幅を広げて人気も高まり、昭和の落語界を背負っていくことになる。

この芝居は、劇中に落語の小咄を演ずる場面あり、歌と踊りにミュージカルシーンあり、おまけに女優たちは一人4役5役を演じることが要求されるなど、極めて難易度が高い芝居である。
それだけに個々の役者の歌や踊りを含めた技術、演技力、ポテンシャルを要求される芝居でもある。余程の芸達者を揃えないと、観客に十分満足して貰えないのではなかろうか。
それにどちらかと言えば大きな舞台を必要とするので、今回のような小さな小屋(劇団の稽古場)に相応しい演目であったかどうか、疑問がある。
観客も少ない小さな舞台は、やはり小劇場向けの作品を選ぶべきではなかったと思う。

そうしたハンディがありながら、それなりに楽しめたのは、この劇団大阪のアンサンブルの力だろう。
和田幸子の演出は小劇場向けに上手く工夫されており、シンプルな舞台装置と相俟って舞台の転換が手際良かった。
劇中で使われる曲を作曲した仙波宏文のピアノ生演奏が、演出効果を高めていた。
出演者では、円生を演じた上田啓輔の演技力が抜きん出ていた。私は円生の高座や俳優としての円生を観ているが、容姿を含めて本人を彷彿とさせていたのは特筆される。ただ江戸弁の喋りと座布団の座り方は、志ん生役の斎藤誠に一日の長があった。
女優陣は揃って熱演で、難役に果敢に挑戦していた。
細かい点をあげれば、寄席の太鼓の音が良くなかった(太鼓自身の問題とか)、めくりの「中入り」は「仲入り」だろうし、飲み物を持つ時のカップの扱いなど、もう少し注意が必要だろう。

アマチュア劇団は、団員全員それぞれが仕事を持っているので、稽古の時間を確保するのも大変だと思う。しかも限られて人数で出演しながら裏方の仕事もしなくてはならない。
そうしたハンディを乗り越えて、敢えて今回のような大ネタに挑んだ姿勢には、頭が下がる。

なお「円生と志ん生」は、本家・こまつ座が現在上演中。
(文中敬称略)

2007/11/24

ヤクザの一分

Odu_kinosukeこう言うとお叱りを受けるかも知れないが、ヤクザは世の中にとって必要な存在だと私は思っています。ヤクザが社会的責務を自覚して行動してさえしていれば、周囲のカタギの人と共存できる筈です。
以前、銀座のバーのママから、こんな話を聞きました。

彼女が若い頃勤めていたクラブでは、客のツケはホステス持ちになっていた。客の支払いが滞納するとホステスの給料から差し引かれるというシステムだった。高級店になるとツケが月100万円という客もいて、彼女の客で1000万円ツケが溜まったケースがあった。
何度も催促したが埒が明かず、結局地元のヤクザに500万円で債権譲渡した。ヤクザが取り立てに行ったら即刻1000万円支払ってくれたそうだ。
彼女は債権の半額500万円を回収でき、ヤクザは手数料として500万円懐に入れて、双方メデタシメデタシになった。
また、水商売をやっていると性質の悪い客がトラブルを起こして、他の客に迷惑を掛けることがある。そういう時にヤクザに頼むと、彼らは直ちにトラブルを解決してくれ、他の客も嫌な思いをしなくて済む。
ミカジメ料は払っているが、必要経費だと思っている。

飲み屋のツケとなると裁判で取立ては難しいし、かと言ってホステスや店側が全額かぶるのも辛い。
酔客のトラブルにしても、事件でも起きなければいちいち警察を呼ぶわけにもいかない。警官から事情を訊かれたりすれば、お客も嫌な思いをすることになります。
こんな事を引き受けてくれるのはヤクザだけだから、大いに助かるという事なのでしょう。
警察は民事不介入が原則ですから、上のケースはヤクザが民事警察(但し有料)の役割を果たしたということになります。カタギに迷惑は掛けていない。
そんなヤバイ所に近付かなければ良いという意見もあるでしょうが、品行方正ばかりとは限らないのが世の常でもあります。

ヤクザの歴史を紐解いてみると、「博徒」と「的屋」(香具師)に行き着きます。
博徒は文字通り博打打ちで、起源は平安時代に遡るのだそうです。
また、的屋(香具師)の起源は、「古事記」に出てくる火之加具土神(ほのかぐつちのかみ)という説もあるようですから、いずれにしろ古代から存在しているのは確かでしょう。
江戸時代には寺社の境内で賭博を開帳し、収入を得ていました。今でもギャンブルの世界で「テラ銭」という言葉を使いますが、元々は寺で得た金ですから「寺銭」が語源です。
彼らは又、寺社の境内で縁起物を売り手数料を得ていましたし、祭礼の時は会場整理から露天商の取りまとめまで仕切っていました。
そう考えると、江戸時代のヤクザは神社や仏教寺院の経営に貢献していたわけで、日本の伝統的宗教を陰から支えていたことになりますね。

近代において、ヤクザが社会に貢献した例の一つは、戦争直後の新宿の焼け跡闇市でしょう。
終戦から3日目の新聞に、こんな広告が出たそうです。
「転換工場並びに企業家に急告! 平和産業の転換は勿論、その出来上がり製品は当方自発の”適正価格”で大量に引き受けに応ず・・ 新宿マーケット 関東尾津組」
中心人物だった尾津喜之助は、「光は新宿から」というスローガンを掲げて、終戦の8月20日(日にちには異説あり)には、新宿駅周辺の焼け跡にマーケットが立ち並びました。
また、当時無力となっていた警察の代りに新宿の治安を引き受けました。
もちろん不法占拠ですから、東京が復興すると共に小津組も新宿を追われることになりますが、終戦直後の混乱の時期に、「市」を立ち上げ運営できたのは彼らの力に拠るものです。
その後新宿が、東京の商業と文化の中心地として発展したのは、ご承知の通りです。

しかし最近のヤクザは、何たるテイタラクであろうか。
銀行強盗だの偽札作りだの、単なる犯罪集団と化してしまいました。
11月8日に佐賀県武雄市の病院で、入院患者が何者かに射殺される事件が起きました。明らかに暴力団の抗争による人違い殺人と見られていますが、1週間経っても犯人が名乗り出てこない。人間として一片の良心が残っているのなら、直ちに出頭すべきです。
ヤクザの一分、矜持はどこに行ったのか。
こういう世の中に何の役にも立たない、反社会的な存在に成り下がったヤクザ連中には未来はありません。

2007/11/22

舛添要一厚労相の「化けの皮」

Masuzoe_yoichi今年6月に当時の安倍首相が、年金記録5千万件全てを1年以内に照合するとの公約を発表し、実現を見ないままサッサと辞めてしまったのは記憶に新しい。これを受けて、片山さつき広報局長(当時)も「すぐにシステムを開発して全部通知する」と言明していた。

8月に舛添要一氏が厚労相に就任した際に、「最後の1人、最後の1円まで確実にやる」「政権公約として工程表を発表しており、これにのっとってやることは内閣が代わろうが変わらない」と公約し、来年3月までの統合完了を約束していた。
舛添要一と片山さつき、さすが元夫婦で息がピッタリだ。
処が、舛添要一厚労相は21日夕方の記者会見で、この問題で次のように述べている。
「場合によっては数%、何としても(氏名などが)見つからないというのは出てくる可能性もある。最後の1円までやるというのは、ある意味で選挙のスローガン。そういう意気込みでやるということだ。国民に報告し理解をいただくほかはない。」
あの時はああ言ってしまったが、実は選挙向けであり、完全な調査など出来ないよということで、実にふざけた発言だ。

私は6月に当ブログで、“「年金照合1年以内宣言」の大風呂敷”というタイトルの記事を載せ、この公約の実現は絶対に不可能だと指摘した。
デジタル化されたデータは検索が容易だが、アナログのデータを調べるのは気の遠くなるような作業になる。
誤ってインプットされたデータの修正するためには、膨大な原本(マイクロフィルムなどに収納)のデータと一つ一つつき合わせていかねばならない。
1年やそこらで全ての調査を完了するなどいう約束は、元々無理があった。

選挙目当てに出来もしないことを公約し、後は国民の関心が薄れるのをひたすら待ち、最終的には誤魔化そうとした魂胆がミエミエだ。
舛添要一という男は、大言壮語のパフォーマンスは得意だが、実行力はサッパリ駄目という典型的なタイプと見える。
今年8月に舛添要一大臣は、年金保険料の着服問題で「盗人には牢屋に入ってもらう」と言明したが、これも不発に終わっている。
地方自治体の職員による着服で、刑事告発が行われなかったケースはそれぞれ事情があり、大半は本人か家族が着服した金を弁済している。検察に刑事告発しても起訴猶予となるか、仮に有罪になっても執行猶予が付くかで、いずれにしろ牢屋には入らない。
そんな事情を知りながら、「牢屋に入れる」発言をしていたのだろう。

舛添要一厚労省に言いたい。
口先だけの大臣はもう要らない。
問われるのは実行力だ。

いっそ防衛省を防衛庁に降格したら

Boueisho防衛産業・商社による呆れるほどの供応とワイロ攻勢、その見返りに便宜を計らってきた防衛省幹部ら、更にその利権に群がってきた防衛族議員たち。
日々明らかになりつつある防衛省の実態は、目を覆うばかりです。
ここまできたら、防衛省は一から出直すしかないでしょう。
その証として、防衛省の防衛庁への降格を検討したらどうでしょうか。
今年1月に省に移行してから間もない防衛省ですが、もはや独立した省として運営する資格に欠けると判断せざるを得ません。

いや、多くの自衛隊員は真剣に任務に励んでいるではないかという反論もあるでしょう。
しかし、組織はトップにより左右されます。いくら従業員が真面目に仕事していても、トップが不正を行っていれば、それだけで企業は倒産に追い込まれることもあります。
組織のトップや幹部の役割が大切なのは、官庁だろうと民間だろうと変わりありません。

組織が利権を断ち切り、職員が法律や倫理規定を遵守するようになって信頼を取り戻し、国民の多数が組織を元に戻しても良いと判断すれば、再び防衛省に昇格すれば良いだけのことです。出直し、再チャレンジして貰えば良いのです。
省庁と国民がある程度の緊張関係を保つことが、不正を防止する上で有効だと考えます。

防衛省がケジメをつける意味でも、組織の降格は一つの選択肢だろうと思われます。

2007/11/20

【ミシュラン騒動】アテにならないグルメ本

Mishuran2年ほど前に妻と二人で久々に銀座に出る機会があり、たまには昼飯をハリコムかという事になって、銀座でも有数の有名寿司店に入りました。
先ず店内に入った瞬間に、シマッタと思いました。それほど店内の空気が澱んでいるのです。午後1時を回っていましたので、昼時の雑踏が一区切りついていたのでしょうが、一口にいえば店員が揃ってダレテいるのです。
入店した以上は仕方なく、昼のメニュウから「ちらし寿司」を注文しました。値段は確か4000円位だったと記憶しています。カウンターの向こうに3-4名の寿司職人が、いかにも手持ち無沙汰な様子で、ただボーっと立っていました。
店員のしつけからいけば、寿司チェーン店の方がよほど上です。
少しすると注文の「ちらし寿司」が出てきましたが、味がやたら甘ったるいだけで、ただ不味いというしかありません。
店内は、客が私たち夫婦ともう一人だけで、妻と「これじゃあ客は来ないよな」と話していました。
ネットでこの店の口コミを見ると、私と同じような感想が載っていましたので、やはりそうかと思いました。

その店の名は、「銀座寿司幸本店」です。
世界でもっとも権威のあるレストランガイドとされている「ミシュランガイド東京2008」に掲載される“星つきレストラン”150軒が19日発表されましたが、その中にその「銀座寿司幸本店」が入っていたのは驚きです。
昼飯の、しかも「ちらし寿司」を食っただけでトヤカク言うなという声もあるかも知れませんが、どんな時間帯でもどんな料理でも、それなりに満足させるのが一流店の価値ではないでしょうか。
料理はともかく、店の雰囲気や店員のマナーなどは、時間帯に関係無いはずです。

世の中に、グルメ本ほどアテにならないものはありません。
20代の頃、会社の同僚と、当時最も権威のあったグルメ本に掲載されている有名店を食べ歩きしようと相談がまとまり、1軒ずつチャレンジしたのですが、余りに書いてある事と現実が違っていたので、数軒で取りやめました。
以来、こうしたグルメ本は一切信用しないことにしています。
理由は簡単で、取材にくると店側が特別のもてなしをするのです。有名人が推薦する店には絶対行くなという教訓があるのと一緒です。

ミシュランの場倍、欧州人3人と日本人2人の覆面調査員が昨年5月から1年半かけて調査したとのことですが、ミシュランのこうした動きは、事前に業界内部では知れ渡っていたでしょう。
いくら覆面調査といっても、単なる客か、それとも店を調査に訪れたのかは、店側は直ぐに様子で分かります。
特定の上客だけにもてなしが良いという店が、選ばれやすいのだと思われます。
結局は、その5名の調査員の主観で判断した格付けです。
料理が美味いか不味いかや、店の良し悪しに対する評価というのは、個人差が大き過ぎるのでしょう。

グルメ本で私が唯一参考になると思っているのが、「ZAGAT」(ザガットサーベイ)です。
こちらは特定の人物が選考するのはなく、多くの利用者の口コミを集計していますので、あまり大きく外れることはありません。高級店から庶民的な店まで網羅しているので便利です。
それでも最終的には自分の目で見て、自分の味覚で判定するしかないわけで、権威に踊らされて嫌な思いをするのは避けたいものです。

防衛疑惑の鍵を握る「安保議員協」

山田洋行から守屋前次官への過剰接待に端を発した防衛疑惑は、武器購入から沖縄基地移転まで拡がり、とどまる所を知りません。
未だ事件の全容は明らかになっていませんが、現時点で今回の事件から得られた教訓は、「国を守る」だの「国防」だのといった美名の下で、政財官が金まみれの癒着を行ってきたという事実です。事件に関連して名前が上がっている議員たちは、ただ今「専守防衛」でおおわらわです。

防衛産業から防衛省幹部や防衛族議員への接待に見返りがあったかどうかが問われていますが、見返りがあるのは当たり前です。
第一、見返りが期待できなくて、会社の金で数千万円もの接待費を使ったら、それこそ背任横領になってしまう。見返りのない接待など有り得ません。

11月15日に行われた守屋前防衛次官に対する証人喚問で、額賀、久間の二人の元防衛相(長官)の名前が出ましたが、私はむしろ秋山直紀氏の名前が登場した方が驚きました。
秋山直紀氏といえば、社団法人「日米平和・文化交流協会」の常勤理事(秋山氏以外は全員非常勤)であり、以前から防衛産業の黒幕として噂された人物です。
同協会は、主に安全保障議員協議会(安保議員協)に参加している国会議員たちと、防衛関連企業の幹部らが名を連ね、山田洋行元専務の宮崎元伸容疑者も昨年12月まで理事を務めていました。
果たせるかな、東京地検特捜部は早速「日米平和・文化交流協会」の捜査に着手しています。

この「日米平和・文化交流協会」は外務省所管の団体ですが、実は外務省は2005年4~5月に同協会に対する立ち入り検査を行い、同年9月に外相名で、
〈1〉防衛問題に関心が深い国会議員らでつくる任意団体「安全保障議員協議会」と組織が混然一体となっている
〈2〉常勤の職員がおらず法人としての実体がない
――などとして、改善を命じています。

日本の防衛政策は「安保議員協」で立案されているのが実態なのでしょう。そうした防衛族の資金を支えているのが防衛産業、防衛商社であり、彼らのスポンサーになっているわけです。
橋渡しを行っているのが「日米平和・文化交流協会」で、それを取り仕切っているのが秋山直紀常勤理事という構図になっていると思われます。

そうなると注目される政界ルートへの捜査は、いずれにしろ「安保議員協」の中心議員がターゲットになると思われます。そろそろ、首を洗って待っているセンセイもいるのでしょう。
今後の捜査のキーワードは、「安全保障議員協議会」、「日米平和・文化交流協会」そして「秋山直紀」の3点セットと私は見ていますが、果たしてどうなるでしょうか。

ご参考までに「安保議員協」の役員の一覧は、下記の通りです。
因みに設立時から継続しているメンバーは、瓦会長のほか自民党の久間章生元防衛相、額賀福志郎財務相の両議員と、公明党の赤松正雄、佐藤茂樹両衆院議員です。今年2月の会合で額賀氏が事務総長から副会長となり、後任の事務総長に佐藤茂樹氏が就任しています。
Anzenhosho

2007/11/18

思い出の落語家8「芝浜」の三代目桂三木助

Mikisuke三木助の「芝浜」か、「芝浜」の三木助かと称された三代目桂三木助、三木助を襲名して売れ出してから10年余りの58歳でこの世を去った。もう少し長生きしていれば、間違いなく名人に列せられただろう。あまりに活躍期間が短過ぎたのが惜しまれる。三木助のナマの高座を観た人も、もう数は限られていると思われる。

明治生まれの三木助だが、売れ出したのは戦後で50歳を過ぎた頃からだった。一時は落語家を辞めた時期もあったくらい、若い頃はさっぱり売れなかったようだ。
その理由だが、私の想像では次のことがあげられる。
一つは、芸風が地味な上に声が細く、全体に陰気な印象を与えたのではないだろうか。噺家である以上声は大事で、美声でなくても良いが、張りのある良く通る声の持ち主が有利だ。
三木助の場合、音域が狭いという欠点があった。
二つ目は、芸人としては不器用な部類に属する噺家だった。マクラで面白いことを言えるわけではないし、若い頃は客席の笑いを取れなかったのだろう。

若い頃から人気が出る噺家というのは、例外なく器用な人が多い。マクラも面白いし、5-6分の短い時間でも観客を楽しませる術を知っている落語家が、人気が高くなる。だが年齢が高くなってもサッパリ上手くならないのが多いのも、このタイプだ。
当代の円歌、円蔵あたりがそれに該当する。
処が、後年名人上手と言われている人は、どちらかというと不器用で、じっくり聞くと始めて味が出るタイプが多い。上手い落語家に大器晩成型が多いのはそのためだ。その典型が三代目桂三木助だろう。

三木助が人気が出だしたのは、戦後のNHKラジオ番組「とんち」教室に出演するようになってからだ。ただ同じ出演者だった六代目春風亭柳橋と違うのは、人気が出た時期にレギュラーを降りたことだ。その後NHK専属にはなったが、落語一筋であった。
滑稽噺も得意で、「へっつい幽霊」では若い頃のバクチ修行のお陰で、サイコロの振り方がプロ級だった。
「蛇含草」では餅の食い方が上手く、その仕草だけで観客を笑わせていた。

しかし何といっても三木助の本領は人情噺、極めつけは「芝浜」だ。昭和29年に三木助はこのネタで芸術祭奨励賞を受賞したが、これは落語家の初の受賞だった。
私は、今でも三木助の「芝浜」を越える高座に出会っていない。
何が良いのかというと、全編に溢れる詩情だと思う。
先ず冒頭の夜明け前から日の出の芝の浜の描写が良い。人っ子一人いない早朝の浜辺、道成寺の鐘の音、打ち寄せる波、潮水で顔を洗い、一服していると財布を見つける、まるで静かな波の音が聞こえてくるような感じがする。
それと最終場面での、当時の商家の大晦日の描写が優れている。掛取りに来る人のために火をおこしておく、ソバ屋が忙しいだろうからと奉公人に出前の空容器を届けさせる、こうした描写により、主人公がこの3年間で商売に成功し、人間的にも成長したことを示している。
「芝浜」のようなネタは、こうした細部の描写が肝要なのだ。

もう一つあげるとすれば、「ざこ八」だろう。
元々が、三代目三木助が大阪の二代目三木助から教わり、東京に持ってきたネタだから当然ではあるが、これまた三木助を越える演者が出現していない。
10年ぶりに江戸に戻った鶴吉と、大店だった「ざこ八」がつぶれるに至った経過を語る枡屋新兵衛との会話が実に小気味良い。
新兵衛に「お前さんがつぶしたんだ」と言われ激高するが、諄々と説かれて納得し後悔する鶴吉。この二人の火の出るようなぶつかり合いが活きて、今は病気で乞食同然となった「ざこ八」の娘お絹と所帯を持つという鶴吉の決心が、始めて説得力を持つのである。
とても良い噺なのに、三木助の死後、高座に掛かる機会が少ないのは、難しいせいだろうか。

こうした心理描写は、落語家になりながら若い頃バクチで身を持ち崩し、一時は踊りの師匠に転向するまでに至った三木助の、苦難の人生経験が生かされているのだろう。

他に「崇徳院」や一連の左甚五郎ものなど、今に至るまで他の追随を許さない三代目桂三木助。
早くこの芸を追い越す噺家の出現を、見てみたいものだ。

2007/11/17

「書くカラオケ」

Kashima_shigeru岩波書店のPR誌「図書」11月号に、フランス文学者・鹿島茂教授(私は氏の書く「性書」類の愛読者)が「いきなり『書く人』」と題する一文を寄せている。少し長くなるが一部を引用する。
【引用始め】
昔は、「書く人」というのは、その前段階においては、必ず「読む人」であった。本を読んで、他人の言葉を我がことのように感じるという「同化」の過程がまず存在したのである。
ついで、どうも自分の感じることは他人と違うのではないかと思い定めた人が現れ、その未だに表現されていない何かを表出するために机に向かった。こうした場合、表出の前提として自他の「比較」がまずあった。自分と他人を比べて類似と差異を見極め、その谷間に自己の独自性を発見するという回路がごく一般的であった。
(中略)
「書く人」は「読む人」の段階を経ないでいきなり「書く人」になろうとするのである。
では、なぜいきなり「書く人」になりたがるかといえば、それは生まれた時から自分は他人と違っていると思い込んでいるからである。なにゆえに、こうした天上天下唯我独尊タイプの人が増加したのであろうか?
(中略)
このタイプの人には自他の比較がない。自分は初めからユニークだと思って比較なんてする必要がないし、本を読んで自己同一化を図るなんてこともない。
(中略)
かくして、日本は「読む人」が皆無で、「書く人」ばかりのカラオケ社会とあいなったのである。
【引用終わり】

ウ~~ン、読んでいて自分のことを言われているようで、実に耳が痛い。
このブログを開設した当時、ブログは「書くカラオケ」という記事を書いたが、奇しくも鹿島氏と同じ結論となっていたわけだ。
原稿を書く段階で、一応テーマに関する事実関係の確認と、出来れば自分の主張と反対の意見にも眼を通す努力はしているつもりだが、「自己同一化」などとは程遠い。

若い人の活字離れが問題視されることが多いが、最近の調査ではむしろ年齢が高くなるほど本を読まなくなるという傾向が現れている。
自分では、平均よりは少し多く本を読んでいると思っているが、それでも読書家とは到底いえない。
サラリーマン現役時代、社内でも読書家を自他共に認める社員と一緒に出張したことがあるが、この人は1ヶ月に段ボール1箱の分量の本を読んでいた。それも半分は専門書だ。
英顎、ドイツ語、フランス語など外国語で書かれた本も混ざっていて、とにかく半端じゃない。
この人が書く報告書は見事に「自己同一化」が行われており、感心するしかなかった。
でもオレじゃあ無理だなとも思った。

私もアレコレ言える立場ではないが、世の中には「唯我独尊」タイプのサイトが氾濫しており、それも人気ブログランキングの上位にいるブログほど、その傾向が強いというのは困った現象ではある。

こちらも、日々世の中の役にも立たない駄文を書き連ねていることには、反省するばかりだが、反省はするが決して改めようとしないのだから、我ながら始末が悪い。
かくして又明日から、埒(らち)もないことを書き綴る日々を送るのだろう。

2007/11/16

病院が「社会的弱者」になった

Hospital入院費を払わない人を7年間も入院させ、退院の時は自宅まで送り届けたのに引取りを拒否され、挙句のはてに「置き去り」と非難されたんじゃ、病院もやってられないですね。
それなら治療費を払えない患者は、最初から診療拒否すれば良いのでしょうか。
マスコミも自らの報道が、どういう結果を招くかを良く考える必要があります。

私は医療機関で仕事をしたことがありませんが、自身や家族を含めて何回か入院の経験があり、病院には随分とお世話になってきました。
入院患者の世界というのも、社会の縮図でもあります。立派な人もいますが、病院や職員、周囲の患者に迷惑をかける困った患者も少なくありません。
最近になって、「院内暴力」ということが問題視されているようですが、以前からそうした行為はありました。

もう20年ほど前になると思いますが、日曜日に近所の病院職員から電話があり、手が空いていたら至急来て貰えないかという依頼でした。経緯は次の通りです。
この病院の男性患者の中に、当たり屋がいたんです。
当たり屋というのは、わざと自動車などに近付き、交通事故を起こさせ、損害金・賠償金などを要求してくる人間で、最終的には法外な保険金を詐取する保険金詐欺になります。
この病院には外科があり、事情を知らない医師がその当たり屋を診察し、入院させてしまったわけです。
当たり屋の男というのは大体ヤクザに近いですから、入院してもルールは守らず、病院の職員や看護婦に暴言をはくなど、問題患者になっていました。処が、担当医の前に出ると途端に卑屈な態度を取り、急に大人しくなるものですから、強制退院にまでは出来なかったのです。

日曜日にその当たり屋が、暴言をとがめた看護婦に暴力をふるうという事が起きました。
病院は早速その男を会議室に移し、退院を勧告したわけです。当たり屋としては、ここで退院させられたら飯の食い上げですから、言を左右にして抵抗するわけです。
休日ということで男性職員が少なく、事態によって再び暴力沙汰になる可能性があります。
私に、急いで病院に来て、近くで黙って立っていて欲しいと言うのです。
「オレは用心棒か」と思いながら、知り合いの職員からの依頼だし、ナマの当たり屋を見るのも向学のためだと思い、取り敢えず病院に駆けつけました。

会議室の窓越しで見ていると、椅子に座った中年の男を二人の病院職員がなにか説明し、男が反論している様子が窺えました。その当たり屋は、身長は低いですが、一見してヤクザ風の男でした。
廊下に立っている私のことが少し気になるようで、チラチラこちらを見ていましたが、やがて職員の説得に応じ、間もなく退院してゆきました。
何事も無かったので、そのまま私もお役ゴメンとなりました。

後日談ですが、私に電話した職員によると、その当たり屋は私を見て、「なんで刑事を呼んだんだ」と言ったそうです。
処が、事情を知らない別の職員は私を、「当たり屋が仲間のヤクザを呼んだ」と勘違いしたとか。
当たり屋からは刑事と間違われ、職員からはヤクザと間違われる、オレってよっぽど目付きが悪いんだなと苦笑するしかありません。
いずれにしろ、多少お役には立ったようで感謝されました。

この病院によると、看護士が暴力を振るわれそうになったりする例は、結構あるのだそうです。
入院中の母親が亡くなったのに、一度も見舞いに来なかった息子の暴力団員が、数ヶ月経ってから病院を訪れ、医療ミスがあったので慰謝料をよこせと要求されたこともあったとか。
救急指定の病院になっていますが、救急車で運びこまれる患者の中には、保険証は勿論、現金も身分証明も持たず、治療が終わるといつの間にかドロンしてしまう者も少なくないそうです。
治療費や入院費の未払いも増えており、そうかと言って診療を拒否するわけにもいかず、病院の経営を圧迫する結果となっているという問題が起きています。
救急患者のたらい回しはマスコミを賑わせますが、医療費を払わない患者は非難されない、これは片手落ちです。

今や医療機関が社会的弱者になってきた、そう言えるのではないでしょうか。

2007/11/14

全盲患者を置き去りにしたのは、誰?

Toyokawa今年9月21日、新金岡豊川総合病院に入院していた全盲の男性患者が、この病院の職員によって男性の自宅付近の公園に置き去りにしたという事件がありました。
堺市保健所は医療法に基づき、従業員の監督を怠ったとして病院院長を行政指導し、西成署も保護責任者遺棄の疑いがあるとみて、捜査を進めています。
この事件、マスコミは病院が患者を置き去りにしたという報道をしていますが、果たしてそう断言して良いのでしょうか。
事件の全貌が明らかになっていないので、新聞各紙の報道からの判断となりますが、もう少し事件の中味を検証したいと思います。

病院側の説明によれば、この患者は次のような状況だったとのことです。
①およそ7年前に入院していたが、病状が安定してきたため、退院を勧めていた。
②入院費185万円が未払いだった。
③入院中他の患者とトラブルを起こし、大声を上げることがあった。

先ず、入院を続けるか、退院して治療すべきかは、病院の判断になります。
そうは言っても病院側は、本人及び家族の状況をある程度考慮はしてくれますが、それも無期限ということにはならない。
病院が入院を継続する必要がないと判断し、入院許可も出ていたのですから、この患者を退院させた点については病院の過失は無いと思われます。

病院に入院したことがある方ならご存知の通り、入院にあたり誓約書を提出させられます。
入院費を払わなかったり、他の患者に迷惑をかけた場合は、強制退院させられることになります。
この患者の場合、入院費を払っていないので、病院側が退院させたとしても非難は出来ないでしょう。
もし入院費を払わなくても入院が続けられるなら、全国の病院はみな倒産してしまいます。

退院になった場合、病院の玄関を出たら、その後は自分で帰宅することになります。
この患者の場合、全盲であったということで、職員が自宅まで送ってくれたのでしょう。
処が、そこに住んでいた前妻が男性の引取りを拒否したため、近くの公園に放置したとの報道です。
他に家族がいたのかどうか、報道でははっきりしませんが、家族が引き取りを拒否したのであれば、この男性を置き去りにしたのは、家族の責任ではないでしょうか。

報道によれば、この男性は入院中に生活保護を打ち切られています。
病名は明らかにされていませんが、推測ですが糖尿病ではないかと思われます。全盲で持病があり63歳という年齢から、なぜ生活保護が打ち切られたのか、その理由が分からない。
恐らく生保打ち切りを機に、入院費の未払いも生じたのでしょう。
病院からは退院を迫られ、家族からは引取りを拒否されるとしたら、気持ちが荒れて他の患者とのトラブルも起こすのは、当然起こり得ることです。
こうした状況に置かれていた男性の生活保護を打ち切った地方自治体の責任は、無いのでしょうか。

公園に置き去りにした病院職員、それ自体が非難を受けるのは当然としても、そこに至った責任は一体誰にあるのでしょうか。
本人なのか、家族なのか、病院なのか、それとも地方自治体なのか。
現段階で、一方的に病院だけに責任を帰すことは出来ません。

2007/11/13

♪自衛隊に入ろう♪

Moriya_takemasa連日、山田洋行からの接待漬けが報道されている防衛省の守屋武昌前事務次官ですが、今度は部下との間で多額の金の貸し借りがあったことが判明しました。
1997年ごろ、守屋氏の部下だった河村延樹防衛政策課長に、投資目的で二千数百万円の現金を渡していました。その際河村課長は、「元本を保証する」と明記した借用証を作り、守屋氏に渡していたそうです。
処が、その投資が失敗し多額の損失を出してしまった。
そこで河村課長は自宅マンションを売るなどして、2002年8月に守屋氏に1100万円の小切手を元本分として渡したということです。

守屋前次官の「側近中の側近」だったと言われるこの課長は、要するに「村上ファンド」ならぬ「河村ファンド」を立ち上げていたんですね。「防衛ファンド」かな。無許可で。
しかも損失補てんまでしていたんですから、プロの手口です。

河村課長はインタビューで、「次官と投資の話をしていて『おまえやってんのか』『乗りますか』と投資することになった。お互い若いころだ。友人間ではよくあることでしょう」と語っています。
ありませんね、私たちサラリーマンの世界では、聞いたことがない。
それとも年間5兆円を使っている防衛省にとっては、ん千万円などいう金額は、ゴミみたいなのかね。

一方、昨日の防衛省の増田次官では、河村課長らの行為は「現時点の判断としては倫理規程で問題が生じるとは思っていない」と語っています。
しかし、これはおかしい。
投資資金として金を預り、運用していたと本人が認めているのだったら、明らかに違法でしょう。
未だこの期に及んで、身内をかばう防衛省の姿勢には、疑問を感じます。

守屋氏が渡したとされる金、河村課長が返したとされる金、いずれにしても胡散臭い金でしょう。
普通に考えれば、マネーロンダリングか、裏金あたりですか。
やがて出所が明らかになるでしょうが、どちらにせよ元はといえば、私たちの税金から出たものであろうことは、容易に推測できます。

  自衛隊じゃ人材求めています
  年齢 学歴 問いません
  祖国のためならどこまでも
  素直な人を求めます

  自衛隊に入ろう 入ろう 入ろう
  自衛隊に入ればこの世は天国
  男の中の男はみんな
  自衛隊に入って花と散る

  いつまでもつづけよう
  どんなに海が汚れても
  永遠(とわ)に栄えあれこのきずな
  日米安全保障条約

上の歌詞は、「自衛隊に入ろう」という歌の一部です。
この歌はフォーク歌手・高田渡が1968年に歌ったもので(作詞も本人)、当時自衛隊のPRソングと間違えた人もいましたが、どういうわけか放送禁止歌に指定されてしまいました。
守屋武昌前事務次官にとっては、きっと「この世の天国」だったでしょうね。
でも最後は司直の手にかかって、「花と散る」ことになるでしょう。
その日が一日も早く来ることを、心よりお祈り申し上げます。

東京でも子どもが産めなくなる!

Ebara_hospital救急車で妊婦が搬送されても、受け容れてくれる病院がないということが社会問題となっていますが、出産を取り巻く危険な状況はそうした「飛び込み出産」だけではありません。
地方にくらべると比較的産科施設が充実していると思われている東京でも、安心して子どもを産めなくなるという危機が進行しています。

都立だった荏原病院を、東京都が公社化したのは昨年4月でした。
その際、東京都は「都立の時と同じ医療サービスを行う」「診療科目もこれまで通り」という約束をしました。その舌の根も乾かぬ今年4月から、いままで産科で扱っていた分娩を半分に減らすと発表しました。
更に、10月1日より産科を休止し、約100名の妊婦は他の病院に移されました。
東京都は代替案として、院内に助産婦を置く事にしたのですが、そこで分娩できるのは経産婦で、しかも持病が無い人に限っているので、利用できる人は限られています。

大田区を例にとると、区内の年間分娩件数はおよそ5500件で、この内2割近くの約1000件が荏原病院で分娩しましたので、これから出産を控えている妊婦は大きな影響を受けることになります。
東京都は当初約束したように、公社化した病院の医療サービスの維持を守らねばなりません。

これは何も荏原病院に限ったわけではありません。
以下は、東京都内の公立病院や大学付属病院で、ここ最近分娩を休止ないしは制限した病院の一覧です。

【分娩休止】
 東京逓信病院/H19.1月
 都立豊島病院/H18.9月  
 国立病院機構災害医療センター/H18.10月 
 都立荏原病院/H19.10月  
 駿河台日本大学病院/H19.3月
 東十条病院/H19.10月(全科休診)
【分娩制限】
 都立墨東病院/H18.11月 外来制限
 東京医科大学八王子医療センター/H18
 公立阿伎留医療センター/H19.1月
(註:公立がその後公社化した医療機関があるが、そのまま表示した。)

こうした傾向の根本にあるのは、産婦人科医不足です。
産婦人科学会によると、産婦人科をめぐる状況は、次の通りです。
・産婦人科医師がゼロになった病院数(2003年~2004年:厚生労働省HPより)
1186病院中 117病院(9.9%)
・産婦人科医師定員不足の病院数(2003年~2004年:厚生労働省HPより)
31.8%
・日本産科婦人科学会員の年齢分布(2003年~2004年:厚生労働省HPより)
50歳以上が52%を占め、40歳以下は減少し、70歳以上が増加している

全国的にもここ数年で産婦人科が廃止(休止)となった病院は1割に達し、およそ3分の1の病院が産婦人科の医師不足であり、若い医師がなかなか産婦人科医にならないため、高齢化が進んでいることを示しています。
なぜ産婦人科医が避けられるのかその原因ですが、他の科に比べ激務の割に収入が少ないという理由のほかに、医療訴訟の3割が産婦人科医に集中しているという実態があります。
その中でも特に問題とされているのは、2004年に起きた福島県立大野病院での医療事故での、担当医の逮捕と起訴です。

この件は、以前当ブログでも記事にしましたが、
(http://home-9.cocolog-nifty.com/blog/2006/03/post_59c3.html)
福島県立大野病院の産婦人科医である加藤克彦医師が、帝王切開中の大量出血により患者が死亡した医療事故(2004年12月17日死亡)に関して、業務上過失致死罪および、異状死の届出義務違反(医師法違反)で逮捕、起訴された事件で、現在裁判が行われています。
この事件の妊婦の方は癒着胎盤という症例ですが、1万件に数件という珍しいケースで、通常一人の医師が一生に一度出会うかどうかという症例です。
癒着胎盤という症例の難しさは、分娩が終わった後でしか分からない、つまり事前に検査で分かっていて準備するわけにはいきません。
医療ミスには違いないですが、様々な要因が重なって起きたミスであり、医師を逮捕して起訴するという警察や検察のやり方は、不当であると思います。
またこの事件により、いっそう産婦人科医を志望する医師が減ったとされており、安心して子どもを産めるという環境に、暗い影を落としてしまいました。

少子化を克服し、出生率を上げるうえで、安心して子どもを産み育てる環境整備は不可欠です。
今見て来た通り、病院での産婦人科の廃止や、分娩の休止・制限は、全て医療行政にかかわる構造的な要因が大きいと思われます。
厚労省は現在、年金問題を最大の課題としていますが、分娩・出産をめぐる問題はそれに劣らず重要課題です。
緊急措置と、抜本的な解決の方策とを切り分けて、それぞれスピードを上げて取り組むことが迫られています。

2007/11/11

石川さゆり音楽会@青山劇場

Ishikawa_sayuri11月10日青山劇場での「石川さゆり音楽会」へ。
歌謡曲(演歌キライなので)歌手のコンサートというのは半世紀ぶり。では前回はというと、1950年代に見た日劇の「笠置シズ子ショー」というのだからスゴイ。知らない方もいるだろうが、ブギの女王として一世を風靡した歌手だ。ボクにとっての戦後は、笠置シズ子の「東京ブギ」と、オカッパルの「東京の花売娘」だ。
コンサートのサブタイトルは、「歌手生活35周年記念リサイタル」とある。デビュー年齢+35才ということは? などという、野暮な詮索はよそう。
「石川さゆり音楽会」は10回目だそうだから、恐らく節目節目に開催してきたのだろう。

最近になって、歌謡曲歌手では石川さゆりと五木ひろしは観ておこうかなと思い立ち、チケットを購入した。
歌手というのは年齢を重ねるに従って、時には声が落ちていくが、歌唱力は向上するものだろう。人生経験を積めば、歌は上手くなる筈だ。
処が、現役の歌謡曲歌手の中でそう言えるのは、石川さゆりと五木ひろしくらいではないだろうか。
なかには、デビュー当時が一番上手かったと思える歌手もいる。
それと日本の歌手の多くは、声が落ちると共に歌唱力も落ちていくが、あれはナゼだろうか。

石川さゆりという歌手の良さは、一口に言うと「様子がいい」ことだろう。
舞台での立ち姿、歌っているときの表情や指先がキレイである。いくつになっても可愛く見えて、あの辺が熱烈なファンのオバサマたちには、堪らないのだろう。

なにせ他の歌謡曲歌手のコンサートを見ていないので、比較のしようが無いが、全体の印象としては充実した舞台だったと思う。
先ず感心したのは、幕開けの「津軽海峡冬景色」からエンディングの「天城越え」まで、前座やゲスト一切無しで、一人で歌い切ったことだ。
途中20分間の休憩を挟み、とにかく3時間近く歌いまくるという感じで、サービス精神が旺盛である。

舞台は大きく分けて3部構成になっており、第一部は石川さゆりオリジナルの歌で日本列島を縦断するというもの、第二部が歌芝居で「飢餓海峡」を一人で演じ、第三部は民謡やアップテンポの曲、ジャズ風の曲、他の歌手の持ち歌も入れて、最後はしっとりとした曲で締めるという構成だった。
「飢餓海峡」の一人芝居、熱演で演技力も確かだったし、感動させられた。石川さゆりの演じた八重は、哀しく愛しい。ちあきなおみもそうだったが、上手い歌い手というのは、演技も上手い。

難を言えば、伴奏の音量が大き過ぎて、歌唱とかぶると、肝心の石川さゆりの歌の歌詞が聞き取りづらかった。
後半アコースティックギターとベースの伴奏だけで歌う場面があったが、あの位の音が丁度良い。
情感が持ち味な歌手なので、音量には神経を払うべきだ。

2007/11/10

全ては「国を守る」タメ。文句アッカ!

Miyazaki_motonobu11月8日防衛省御用達の軍需商社・山田洋行社の元専務、宮崎元伸容疑者が逮捕されたが、その後の取調べで出るわ出るわの不正の数々、どうも事態は守屋前次官の接待だけにとどまるものではないようだ。
ことによると山田洋行が防衛省(庁)を丸抱えしていたのではないかと、疑わせる程だ。

その一つに、海自の哨戒ヘリコプターの装備品「チャフ・フレア射出装置」の納入に係わる、山田洋行の過大請求の問題がある。
米国のメーカー「BAEシステムズ」製の装置24セットを、山田洋行が8億1千万円で契約していたが、その内の1億9千万円が過大請求だったいうものだ。
何と2割以上ハネテいたのである。
山田洋行の売上げは340億円(05年度)で、その大半が防衛庁関連とされているが、2割もマージンを取っていれば、防衛庁幹部を接待漬けにしても、十分お釣りがくる。

過大請求がなぜバレタのかというと、余りに価格が高過ぎたために、防衛庁の職員がメーカーのBAE社に問い合わせしたことに端を発する。
経緯は次の通りである。
01/12/02 駐米の防衛庁職員が、BAEに価格問い合わせ
01/12/04 BAEより、その様な見積りはしていないと回答
02/02/05 BAEより、自社は見積りに関与していないと連絡
02/03/11 山田洋行が1億9千万円の減額を申し出
02/03/25 駐米の防衛庁職員が、BAE社で調査
02/05/中旬 日本から防衛庁職員を米国に派遣、BAE社と面談
こうした経過を経て、山田洋行側が過大請求の事実を認めたにも拘らず、何の処分も受けずに終わっている。
この事は、当時の防衛庁内部でも、疑問の声が上がっていた。

Asahi.comによれば、その理由として、山田洋行が派遣された防衛庁職員と面談したBAE担当者に代り、同社の知人を身代わりに立てて、自社に都合が良いような説明をさせていたというものだ。
もしこれが事実とすれば、この件は山田洋行と防衛庁幹部との合作であり、両者は共犯だったとしか考えられない。

防衛庁側は、前記の経緯が示している通り、駐米職員を通じてBAEに接触し、既に過大請求の疑いが濃厚であることを把握していた。
その確認のために、わざわざ日本から別の職員を出張させ、BAEを訪問させたものだ。
BAEから見れば防衛庁は大事なお客さま、社内や工場を案内して自社の技術をPRしたであろうし、会社の幹部への紹介と挨拶は当然行っている。
打ち合わせには担当者は勿論、上司が同席した筈だ。
官庁の海外出張は特に形式を重んじるため、こうした対応は欠かせない。

もし、山田洋行側がBAE社員の身代わりをたてようとするならば、架空の事務所や従業員たちを仕立てなければならず、それもBAEの内情に詳しい人物を揃える必要がある。
既に駐米の防衛庁職員がコンタクトしていたので、その内容と齟齬が生じてはいけない。
そうした様々な事を考えると、「身代わり」説は有り得ない話ということになる。

唯一、上手くいく可能性があるとすれば、現地サイドは山田洋行側が全てセットし、必要な資料や面談者の名刺コピーも全て山田側が用意し、恐らくは出張報告書まで準備してくれていたのだろう。
防衛庁の担当者は毎日、昼は観光、夜は接待、何もせずに帰国し、筋書通りの報告をする。
後は前次官殿が庁内をうまく収めて、山田洋行側は見積り訂正だけで全て終結。
「身代わり」説が事実とすれば、シナリオは恐らくこれしかないであろうし、防衛庁と山田洋行の出来レースという結論になる。

関係者は誰も損しない。
山田洋行は収益を伸ばし、防衛省幹部は接待漬け、与野党の防衛族議員には政治献金が増える。
みんなが、イイ思いができる。
国民の皆様、全ては「国を守る」ためです。
ナンカ文句あっか!

2007/11/08

詐欺のキーワード

Falls金属製のブレスレットを身につけると血液がサラサラになるとして、全国で8千人以上に1本数十万円で売りつけ、24億5千万円を稼いでいた男らが詐欺罪で捕まりました。
騙す方も騙すほうなら、騙されるほうも騙されるほうです。
ブレスレットで人間の血液がサラサラになるわけが無い。
血液がドロドロだのサラサラだのというのは、ほんの4年ほど前から急に言われだし、主にTV番組などで宣伝されてきたもので、医学的な根拠もアイマイです。
それと血液がドロドロという事と高脂血症とは無関係だし、血管が詰まりやすいという事とも関係ありません。
この製品に限らず、「血液サラサラ」という表現を見たら、先ず眉にツバをつけてみた方が良いでしょう。

これだけ科学の発達した世の中で、しかも多くの人が高校に進んでいる日本で、こうしたエセ科学の詐欺に引っ掛かるのはどうしてなのでしょうか。
2001年の文科省が行ったある調査では、日本人成人の科学技術への理解度が日欧米17カ国中13番目、科学技術への興味と関心は最下位という結果が出ています。
つまり中途半端な知識はあるが、科学に対する正しい知識を持っている人は少ないということが窺えます。
ここら辺りに、詐欺師が巧みにつけ込む余地があるのでしょう。

最近よく聞く言葉に、「マイナスイオン」というのがあります。この効果をうたっているメーカーのHPを見ても、どうも根拠がよく理解できません。
必ずといってよいほど書かれているのが、滝の近くで測ると「マイナスイオン」が多く、またそういう場所では人間の心が癒されるという説明です。
滝というのは繁華街のど真ん中にあるわけがなく、山間部や川の上流にあります。そした場所で静かに滝の音を聞いていれば、誰でも心が癒されるのは当然ですね。
それと人工的に作り上げた「マイナスイオン」なるものが、人間をリラックスさせるかというのは全く別物です。

「マイナスイオン」というのは定義がはっきりしていなく、どうも負の大気イオンを指すようです。
そうなると、大気汚染物質であるNOxやSOxだって負の大気イオンです。こんなものを発生していたら、大変なことになります。
「マイナスイオン」製品に出会ったら、メーカーの人にどういう物質のイオンなのか訊いてみてください。まず答えは返ってこないでしょう。
傑作だったのは、店頭で「マイナスイオン水」というのを見つけた時、成分分析表を確かめたら、Na+、Ca++、K+、など全て正のイオン(プラスイオン)が表示されていました。実際には「プラスイオン水」だったわけで、明らかな不当表示です。
「マイナスイオン」製品の大半は、こんなものでしょう。
因みに2006年に、東京都はマイナスイオン商品を科学的根拠が薄弱として、業者に対し資料提出要求及び景品表示法を守るよう指導を行っています。

「臭いを分解」「有害物質を分解」というのも要注意です。
実際に試験したら、確かに分解はしてくれるものの、分解されて生成した物質がはるかに人体に有害だったというレポートもあります。

最近、こんな表現を聞かれたことはありませんか。
・アルカリ性食品:健康に良い 酸性食品:身体に悪い
・マイナスイオン:心を癒す プラスイオン:イライラさせる
これらは全て医学的に根拠のないもので、風評に属するものです。
何も効果がなかったというなら未だ幸いで、却って健康を損ねたりしたら大変です。
今から30年ほど前に、「βカロチンががん予防に有効」と宣伝されたことがあります。覚えておられる方もいると思いますが、最近パッタリ聞かなくなりましたね。
実は1980年代に、肺がんリスクの人を対象に投与実験を行ったところ、βカロチンを服用した人の方がガン発生率、死亡率ともに高くなってしまい、実験そのものが中止になったということがありました。

健康に良い、身体に良い、病気に罹らない、回復が早い、心が癒されるなど、オイシイ表現にぶつかったら、先ずなぜそうなるのかを考え、自分で調べてみることが大事でしょう。
くれぐれも、詐欺の謳い文句に引っ掛からないように、注意が肝心です。

2007/11/06

「恥を忘れた一郎は」

【小沢る】本当は辞めたくないのに辞めるフリをして駄々をこねること。又はその有りさま。

辞表を出したり引っ込めたり、「歌を忘れたカナリナ」ならぬ「恥を忘れた一郎」。
人間ああはなりたく無いものだ。

2007/11/05

「未熟」だった小沢一郎

Ozawa3日のエントリー「小沢一郎の『オウンゴール』」で、小沢代表の辞任を予測した時に、周囲には「まさか」の声があったが、やはり予想通りの展開になった。
連立政権の提案が民主党役員会で拒否された段階から、辞任は予定行動だったろうし、小沢氏の過去の言動からすれば、辞任以外の選択肢はないと思った。

4日の辞任記者会見で民主党内の「未熟さ」を指摘したが、小沢氏の提案に反対したこと自体が、かれからすれば「未熟」なのだ。
自分の考えだけが正しく、それに同調できない人間は全てダメという烙印を押される。
「天上天下唯我独尊」、世界で我一人が正しい、これこそが小沢イデオロギーの真髄といえる。

かつて小沢氏は、「オレは自民党の幹事長をやって、権力も何もかも手に入れたし、どんなものかも分かった。だからもう欲しいものはない。オレにとって、あとはこのお国がどうなるかということだけなんだ」と語っていた。
その「お国の形」の一つが、政権交代が可能な二大政党制であったことは、彼のその後の政治行動を見れば明らかだろう。
衆院の小選挙区制と政党助成金制度を作り上げ、思った通りの二大政党制に近付いた。

しかし、そうして出来上がった民主党は、自民党と大同小異の政策を持った政党になった。
安倍内閣のような特異な右翼政権の時は、未だ対立軸がはっきりしていたが、自民党が本来の保守に回帰すると、民主党との基本的な政策の違いは無くなってきた。
両党の差異を例えていえば、横浜から品川までJRで行くか京急で行くかの違い、梅田から三宮まで阪急で行くか阪神で行くかの違い、その程度だ。
よくよく考えたら自民党と民主党は同じじゃないか、それなら連立を組んで同じ線路に乗ろうや、そう結論を出してもさして不思議ではない。

小沢一郎氏の誤算は、自らのこうした思い込みが、国民の意志、特に民主党に投票した人の意向とはかけ離れていたことだ。
周囲が見えなくなるのだ。
今回の結果は、自民党の一人勝ちとなった。
幹部の「ピンチがチャンスにかわった」という感想が、率直に物語っている。
小沢代表は、老獪な自民党の手の上で踊り、勝手に退場したことになる。

未熟だったのは、誰よりも小沢氏自身であることを明白にした、今回の大連立騒動だった。

2007/11/03

小沢一郎の「オウンゴール」

Ozawa今回の大連立騒動で、民主党の政権奪取は遠のいた。民主党という政党は、一皮むけば自民党と同じであることが白日の下に晒された。これからはいくら野党ポーズをとっても、国民から信用されない。

今回の連立劇で、テロ特措法の新法は、成立の見通しが高まった。理由は次の通り。
①福田首相との党首会談で、小沢代表が主張している自衛隊海外派兵の恒久化と引き換えに、新法に賛成するとの提案がされた由。民主党としては、引き続き新法に反対するだろうが、既に足元を見られているので、力が入らないだろう。
②党首会談の決裂という形を作ったので、政府としては仮に参院で否決されても、衆院で再可決するという大義名分ができた。
③その場合、今までなら参院で福田総理への不信任案を可決し、解散に追い込むと言う民主党の筋書があった。しかし、今となっては総選挙を行なっても、民主党が勝利する確率が低くなったので、こうした強攻策は取りにくい。

福田首相の求心力も、一時的には低下するかも知れないが、海上給油新法が成立できれば、建て直しは可能だろう。
一方小沢代表の方は、国民の信用と党内の信頼が急速に低下するので、いずれ代表の座を降りることになると思われる。

小沢一郎という男、過去を振り返ってみれば、ここぞという時に必ず今回のような「オウンゴール」を繰り出し、自民党を助けてきた。
うがった見方をすれば、元はと言えば危機に陥っていた自民党を、外から助けるために自民党を飛び出したのではなかろうか。
小沢一郎が、実は自民党の秘密兵器だと考えれば、彼の行動は説明がつく。

2007/11/02

ヤッパリ出た「自民・民主連立政権」

Ozawa今日10月2日行われた自民・民主党首会談で、福田首相より小沢代表に、自民・民主両党の連立政権が打診されました。これに対して民主党は役員会議を開き、今回は拒否するとの回答を行いました。
自民・民主の連立を意外と思われる向きもあるでしょうが、当ブログでは以前から両党の基本的な政策の違いは無いし、「大自民党」の中の二つの派閥として位置づけてきましたので、何の違和感もありません。
日本の政治は、戦後から現在に至るまで、政党の名前は時々で変わってきましたが、実質は自民党の独裁政権が続いてきたというのが、当ブログの一貫した見解です。
いや自民党と民主党は対立しているではないかと言う見方もあるでしょうが、それはあくまで現象です。
政治を見るときに大事なのは、現象ではなく、何が本質かという事だと思います。

前回の両党党首会談では、恐らく次に二つのことが合意されたと想定されます。
一つは、防衛省の守屋武昌前次官のスキャンダルを、この辺で適当に収束しておこうという合意です。
元々山田洋行が防衛省(防衛庁)に食い込んだのは、むしろ現在の民主党実力者の力に与っていました。これ以上大きな政治問題にすると、民主党も返り血を浴びることになる。だからそろそろこの辺りで手を打とうというものです。
二つめは、自衛隊の海外派兵について、恒久的な法案を作るという合意です。
自民党内では、小泉内閣当時からそうした意見が出ていましたし、民主党からすれば、予てより小沢氏の持論でもありました。
こうした基本合意に上に立ち、今回の連立政権の提案が行われたので、小沢代表としても直ちに拒否することなく、一旦は党内に持ちかえり役員会議にかけたものです。
実質的な連立協議は、既に始まっていたと思われます。

当面は、政府提案と民主党提案の案件を、それぞれ可決しあってゆくという様な方法で、実質的な協力関係が進んでいくのでしょう。
取り敢えず今回の連立政権構想は不調に終わりそうですが、今後折りに触れこの件は蒸し返され、やがては実現してゆくのではないでしょうか。その際、政界再編を伴うこともあるでしょうが、結果としては「大自民党」政権が維持されるものと思われます。

挙国一致の大政翼賛会だけは真っ平ですが、政界の行く先は不安要素が一杯です。

2007/11/01

不正やめますか?終身雇用に戻しますか?

Nichiasu先月このブログに「食品偽装は止まらない」というタイトルで記事を書きましたが、予想した通りその後も不正が次々発覚しています。
創業〇〇年というような老舗や、高級料亭の系列にある企業が不正を行っていたのですから、後は推して知るべしでしょう。
現在までに明るみに出ているのは、氷山の一角であることだけは断言できます。
一昨日には大手建材メーカーのニチアス社の不燃材について、認定試験で不正が行われていたと報じられましたが、これから食品以外の分野でも、次々と不正行為が明るみになるでしょう。

不正の発覚の大半は、内部告発がきっかけです。
これも以前、税務調査官の方から聞いた話ですが、脱税の発覚は9割がタレコミで、それも女性からだそうです。
世の女性が特に正義感が強いというわけではないでしょう。想像するに、脱税した男性から冷たくされて、腹いせに税務署に、オオソレナガラと訴えたものと思われます。
脱税している方に、ご注意申し上げます。身の回りの女性に、特に親切にして上げて下さい。

企業と言うのは、多かれ少なかれ、何らかの不正を行っており、世の中にオープンにしたくない事を抱えているものです。
それは企業活動に係わることもあるだろうし、社長など経営者個人に係わる問題もあるでしょう。
不正が明るみに出れば、企業は打撃を受けるし、場合によっては倒産さえ起こります。
一昔前まで、内部告発が少なかったのは、多くの企業が終身雇用制をしいていて、企業と従業員が一種の運命共同体だったからに他なりません。

処がここ10年くらいで、新自由主義経済の名の下に、雇用形態は大きく変化してきました。
今まで企業に貢献した人でも、これからは不要と判断されれば、容赦なく首を切られる。中高年になったら、自分の見の振り方は自分で決めなくてはいけない、そういう風潮になってきたわけです。
正規社員が切られ、派遣従業員やパート、アルバイトに取って代りました。
最早、〔企業の繁栄=従業員の生活の安定〕という図式は、成り立たなくなってきました。
企業は自ら、終身雇用制という「口止め料」を払うことを止めてしまった。

この段階で賢い経営者なら、外部に漏れたらまずい不正が行われていないか、法令遵守が実行されているか総点検し、もし問題があれば直ちに改善するという方策をとっていたでしょう。
処が、日本の経営者の大半は、そこまで思い至らなかった。
社内体制は従来のまま、不正はそのまま続けられました。
毎日のように報道されている企業の不正発覚は、そのツケが回ってきたものです。

経営者は、二者択一が求められています。
不正をやめますか?
終身雇用制に戻しますか?

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