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2007/11/13

東京でも子どもが産めなくなる!

Ebara_hospital救急車で妊婦が搬送されても、受け容れてくれる病院がないということが社会問題となっていますが、出産を取り巻く危険な状況はそうした「飛び込み出産」だけではありません。
地方にくらべると比較的産科施設が充実していると思われている東京でも、安心して子どもを産めなくなるという危機が進行しています。

都立だった荏原病院を、東京都が公社化したのは昨年4月でした。
その際、東京都は「都立の時と同じ医療サービスを行う」「診療科目もこれまで通り」という約束をしました。その舌の根も乾かぬ今年4月から、いままで産科で扱っていた分娩を半分に減らすと発表しました。
更に、10月1日より産科を休止し、約100名の妊婦は他の病院に移されました。
東京都は代替案として、院内に助産婦を置く事にしたのですが、そこで分娩できるのは経産婦で、しかも持病が無い人に限っているので、利用できる人は限られています。

大田区を例にとると、区内の年間分娩件数はおよそ5500件で、この内2割近くの約1000件が荏原病院で分娩しましたので、これから出産を控えている妊婦は大きな影響を受けることになります。
東京都は当初約束したように、公社化した病院の医療サービスの維持を守らねばなりません。

これは何も荏原病院に限ったわけではありません。
以下は、東京都内の公立病院や大学付属病院で、ここ最近分娩を休止ないしは制限した病院の一覧です。

【分娩休止】
 東京逓信病院/H19.1月
 都立豊島病院/H18.9月  
 国立病院機構災害医療センター/H18.10月 
 都立荏原病院/H19.10月  
 駿河台日本大学病院/H19.3月
 東十条病院/H19.10月(全科休診)
【分娩制限】
 都立墨東病院/H18.11月 外来制限
 東京医科大学八王子医療センター/H18
 公立阿伎留医療センター/H19.1月
(註:公立がその後公社化した医療機関があるが、そのまま表示した。)

こうした傾向の根本にあるのは、産婦人科医不足です。
産婦人科学会によると、産婦人科をめぐる状況は、次の通りです。
・産婦人科医師がゼロになった病院数(2003年~2004年:厚生労働省HPより)
1186病院中 117病院(9.9%)
・産婦人科医師定員不足の病院数(2003年~2004年:厚生労働省HPより)
31.8%
・日本産科婦人科学会員の年齢分布(2003年~2004年:厚生労働省HPより)
50歳以上が52%を占め、40歳以下は減少し、70歳以上が増加している

全国的にもここ数年で産婦人科が廃止(休止)となった病院は1割に達し、およそ3分の1の病院が産婦人科の医師不足であり、若い医師がなかなか産婦人科医にならないため、高齢化が進んでいることを示しています。
なぜ産婦人科医が避けられるのかその原因ですが、他の科に比べ激務の割に収入が少ないという理由のほかに、医療訴訟の3割が産婦人科医に集中しているという実態があります。
その中でも特に問題とされているのは、2004年に起きた福島県立大野病院での医療事故での、担当医の逮捕と起訴です。

この件は、以前当ブログでも記事にしましたが、
(http://home-9.cocolog-nifty.com/blog/2006/03/post_59c3.html)
福島県立大野病院の産婦人科医である加藤克彦医師が、帝王切開中の大量出血により患者が死亡した医療事故(2004年12月17日死亡)に関して、業務上過失致死罪および、異状死の届出義務違反(医師法違反)で逮捕、起訴された事件で、現在裁判が行われています。
この事件の妊婦の方は癒着胎盤という症例ですが、1万件に数件という珍しいケースで、通常一人の医師が一生に一度出会うかどうかという症例です。
癒着胎盤という症例の難しさは、分娩が終わった後でしか分からない、つまり事前に検査で分かっていて準備するわけにはいきません。
医療ミスには違いないですが、様々な要因が重なって起きたミスであり、医師を逮捕して起訴するという警察や検察のやり方は、不当であると思います。
またこの事件により、いっそう産婦人科医を志望する医師が減ったとされており、安心して子どもを産めるという環境に、暗い影を落としてしまいました。

少子化を克服し、出生率を上げるうえで、安心して子どもを産み育てる環境整備は不可欠です。
今見て来た通り、病院での産婦人科の廃止や、分娩の休止・制限は、全て医療行政にかかわる構造的な要因が大きいと思われます。
厚労省は現在、年金問題を最大の課題としていますが、分娩・出産をめぐる問題はそれに劣らず重要課題です。
緊急措置と、抜本的な解決の方策とを切り分けて、それぞれスピードを上げて取り組むことが迫られています。

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