「正当防衛」は正当な判断
静岡県島田市の山中で今年9月、掛川市の会社員の男(38)が刺殺された事件で、殺人容疑で書類送検された静岡市葵区の16歳の少女について、静岡地検は12月26日「正当防衛が成立し罪にならない」として家裁不送致としました。これは不起訴処分と同等です。
事件は9月4日午前1時ごろ、静岡市葵区の安倍川べりを自転車で走っていた少女を男がワゴン車で連れ去り、結束バンドで後ろ手に縛って監禁した上、刃物で刺して軽傷を負わせました。
これに対し午後1時ごろ、島田市の路上に止まった車内で、少女が包丁で男の腹部など十カ所近くを刺し、男が死亡したものです。
少女は「男から逃げ出すため、やむを得なかった」と供述していました。
恐らくこの男は少女をワイセツ目的で車で拉致・監禁したもので、少女自身も殺害される可能性があったと思われます。
少女が危害から免れるためには、その男を刃物で刺すしか方法が無かっただろうし、正当防衛の判断は当然です。
殺人事件としての構成要素を充たしている件で、正当防衛が認められたのは極めて稀ですし、それだけに今回の検察の判断は画期的なものといえます。
電車内での犯罪や暴力に対して、マスコミはよく「見て見ぬふり」などと無責任なことを書き立てますが、乗客が制止しようとしたが抵抗を受け、加害者を負傷させたり最悪の場倍死亡させたりしたらどうなるのでしょうか。
制止した側の正当防衛を広くとらえて貰わないと、実際にはなかなか手出しができないのではないでしょうか。
もう一つ問題を提起したいのは、「民間逮捕」です。
刑事訴訟法では次のように定めています。
【第213条 現行犯人は、何人でも、逮補状なくしてこれを逮捕することができる。】
【第214条 検察官、検察事務官及び司法警察職員以外の者は、現行犯人を逮捕したときは、直ちにこれを地方検察庁若しくは区検察庁の検察官又は司法警察職員に引き渡さなければならない。】
現行犯の場合は、誰でもがその場で犯人を逮捕できるのですが、逮捕から官憲に引き渡すまでの間、抵抗を受けたり暴力を受けたりする可能性が極めて高い。
その間はいわば警察官の代わりをしているのですから、警官並の権限を付与できないでしょうか。
それと逮捕した側が不孝にも負傷あるいは死亡させられた場合の補償制度も、確立する必要があるでしょう。
こうした「正義の味方」側への法的整備が行った上でなければ、「見て見ぬふり」の非難はできません。
今回の静岡地検の判断は、「被害者が抵抗する権利」を従来より幅広くとらえたもので、大いに評価できます。
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» 静岡男性死亡・少女の正当防衛成立 [時評親爺]
26日付エキサイトニュース・毎日配信及び27日付IZAニュースが伝えているが、「静岡県島田市の山中で9月、車内に監禁され、逃げるために男性会社員=当時(38)=を刺殺したとして殺人容疑で書類送検された少女(16)について、静岡地検は26日、『正当防衛が成立し、罪にならない』として家裁送致しない処分にした」らしい。事件詳細はこちらの11月1日付IZAニュースにあるが、この時に「殺人の疑いで少女を静岡地検に書類送検」とあることは、身柄拘束はなかった(=在宅)かと推察する(参考:刑事訴訟法第246条)。
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